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731部隊の闇は戦後も続いていた。太平洋戦争中に生体解剖やペスト菌による非人道的な実験を行った細菌戦部隊。残虐な行為に手を染めながら、なぜ彼らは戦犯とならずに済んだのか。そこには隊長・石井四郎とGHQの驚くべき駆け引きがあった。戦後50余年を経て発見された石井の直筆ノート2冊から隠された真実を読み解く。国内外の圧倒的な取材から浮上した新しい戦後史。
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Posted by ブクログ
"うだるような暑さの今年の夏、終戦の時期に読んでみたいと思って手にした本。小説のように読者をぐいぐいと引っ張る内容で、一気に読んだ。第二次世界大戦・太平洋戦争時に満州にあった731部隊の闇の歴史をひもとく。細菌戦部隊である731部隊の部隊長石井四郎氏は戦犯とはなっていない。GHQ、アメリカ...続きを読むとの駆け引きがあったということを、丹念な取材を積み重ねてひもといていく。参考文献も読んでみたくなった。この部隊に関する書物で有名なのが「悪魔の飽食」。この本の登場人物も書籍を残している。その人たちの本も読みたくなる。 そして、一言だけ。戦争中には多くの人が亡くなった。戦争そのものがどういうものか、実際を知らない我々はこうした書物からその時代の空気を読み込むことしかできない。戦争という狂気が及ぼす影響の大きさを改めて感じることができた本だ。 歴史を感じつつ、私たちは未来を築いていく。それが、先人たちへの供養となると信じている。"
[真暗の気脈]太平洋戦争中に生体解剖をはじめとする非人道的な行為を行いながらも、戦犯とならなかった石井四郎を筆頭とする731部隊。その裏を探った著者は、石井部隊とGHQの間に繰り広げられた、明るみにされていない裏取引にたどり着く......。戦時・戦後に股がる日本の暗い闇に迫った作品です。著者は、ニ...続きを読むューズウィーク日本版のニューヨーク支局長を務められていた青木冨貴子。 石井直筆の2冊のノートを見つけ出す青木氏の取材力にまずは頭が下がります。既に敗戦から半世紀以上が経過し、その間に研究が進められていてもなお、ここまで新しい発見を目にすることができるとは。感嘆せざるを得ない情報量で副題のとおりに闇を暴いていきますので、戦後史に興味のある人にはぜひオススメしたい作品です。 731部隊に関わる人間とGHQの間のやり取りに関して言えば、いわゆる建て前(例えば国際正義や平和)と本音(例えば自国の安全保障)が切り結ぶ世界を、それを通してまざまざと見せつけられた思いがしました。また、石井自身の戦後の変貌ぶりも初めて知り、改めて占領期に起きた人心の転変という点に思いを致さずにはいられませんでした。 〜問題は、日本の敗戦後、「禁断の兵器」に取り憑かれた妖怪たちが退治されなく温存されたことである。細菌兵器のあらがいがたい誘惑が次には戦勝国の軍人たちに乗り移って行った。石井四郎は細菌戦に手を染めたからこそ、生き延びたことを知っていただろうか。〜 気持ちが明るくなる本ではないですが☆5つ
2005年の単行本も読みましたが、文庫本で出ていたのを昨年2月に購入→積読、今頃になっての再読です。 生半可な付け焼刃の研究でないことは読んですぐさま分かりますが、著者の執拗な追及はついに2冊の新資料の発見に至るまでとなり、いやが上にも読む者をして俄然ヒートアップさせます。 太平洋戦争中に中国で...続きを読む、生きたままの中国人を解剖したりして、細菌・化学兵器の開発のための実験をした731石井四郎細菌部隊については、私たちは、すでに平岡正明の『日本人は中国で何をしたか』(1972年)や森村誠一の『悪魔の飽食』(1981年)を先駆として、今では数十冊の関連文献を持っていますが、青木冨美子はそれにも飽き足らず長年にわたって追跡したといいます。 たとえ戦争だとしても、非人間的・非人道的な行為を遂行してきたことに対して、反省や批判にさらされることなく隠ぺいしてきたことの当然の結果ですが、戦後この731部隊で暗躍した内藤良一が中心となって設立した製薬会社㈱ミドリ十字は、後にあの例の悪辣・非道な薬害エイズ事件を起こすこととなります。このミドリ十字は幾度もの合併により、今は田辺三菱製薬と名前を変えています。 そして隠ぺいして来たのは何も日本だけでなく、この実験結果がほしくてたまらないアメリカもだったのであり、そのために明らかに戦犯で死刑は免れなかったはずの石井隊長を、どのように巧妙に助け生かしたか。 ヨーロッパ中を震え上がらせたV2 を作ったナチス・ドイツのフォン・ブラウンたちの研究の成果の上に、ジュピターやアポロなどの月ロケットが出来たのと同じように、この731の成果も、やがてベトナム戦争で枯葉剤などの細菌兵器へと受け継がれて行きます。 例によって、アメリカ側の新資料というのは、あの、どんな極秘機密文書でも50年経てば公開するという、輝かしい眩しいアメリカ民主主義のお約束に基づいたものだと思われます。本当に血に染まった腐ってどうしようもない国なのに、やる時にはやりますね。
731の存在を否定している人もいるけど、テレビで元731だった人たちの証言を聞いた。 人ってこんなに残酷なことができるのかって、背骨の芯までぞくっとした。
遠い昔、森村誠一の『悪魔の飽食』を読んだことがある。無知であったが故に、まさに震撼した。随分久しぶりに、その731部隊に関する著作を読んだ。不勉強な小生は青木冨貴子さんというフリーのジャーナリストを存じ上げなかった。この本も文庫になるまで知らなかった。本作で著者は、人体実験の話や満州でこの部隊が何を...続きを読む行ってきたかについては、ほとんど触れていない。むしろそれを周知の事実として(大前提として)、彼ら731部隊の医師達が戦後、戦犯容疑をいかに逃れることに成功したかをアメリカ公文書館の資料や石井四郎直筆のノートを駆使して読み解いていく。後に薬害エイズで批判を浴びたミドリ十字という製薬会社を創業した内藤良一に、自分を雇えと言いに行ったマッドサイエンティスト石井四郎。それを断る元部下の内藤。それぞれの戦後がある。生命科学の分野はひとたび間違えば、大量破壊兵器の生産工場と化す訳だ。決して歴史の彼方に追いやられた話ではなく現在もその危険性を孕んでいるのは言うまでもない。大作ではあるが、あっというまに読み終わるノンフィクション作品。
731部隊を追いかけたルポルタージュ。 冒頭は、著者が千葉県の加茂へ取材へ向かったところから始まる。 著者は執筆までに相当に取材を重ねてきた様で、千葉県での取材のほか、膨大な文献や当時のメモの解読、関係者インタビューまであらゆる手を施して当時の様子を読み解こうとしている。 本書は、実際に足を運び...続きを読む、目で見て、読み解いた結果を、1つ1つパズルを埋めていく様に文章に書き起こしていく、その膨大な作業の末に出来上がったものだとよくわかる。 どちらかというと論文テイストな構成のためか、本書にはドラマチックに誇張した展開はなく、文献や検証に基づいた内容が淡々と記されていく。 脚色や演出が極力排除されることで、手に汗握る展開こそないが、狂気じみた感覚がじわじわと押し寄せてくる怖さがあった。 ナチスドイツの親衛隊将校、アイヒマンと一見似ている様にも見えるが、それとはまた違う非凡さ、凡庸さの二面性を石井四郎にみることができると思う。 正直、これまでは731部隊やGHQ占領下の日本についての知識はゼロに等しかったが、本書の内容は歴史認識を深める意味で大変な良書だったと思う。 ただ、本文がめちゃくちゃ長いので根気は必要。
石井メモノートは必見
終戦間際から戦後に掛けての731部隊関係者の動向やアメリカ政府との免責交渉は興味深かった。 石井隊長の故郷の加茂人脈や京大閥、朝鮮戦争での米軍の細菌戦疑惑はもう少しち密に解き明かして欲しかった。
敵国人捕虜に生体解剖を行い、実験に供される人間を隠語で「丸太」と表現していた731部隊。人間を人間と思わず、言葉通り単なる実験材料として考えていたことを表すいい例だ。 その731部隊を指揮していたのが石井四郎。この本は戦後50年経ってから発見された石井直筆のノートを読み解き、彼の人間像に迫った...続きを読む本だ。 731部隊で行われていた実験がどうようなものなのか、という問題はそれほど書かれていない。それを期待して読み始めたので最初は拍子抜けしたが、読み進めるうちに戦中戦後の裏面史が浮かび上がって、目が離せなくなり、500ページを超える分厚い本なのに1日で読んでしまった。 主題は石井四郎がたどった人生だ。とくに終戦後、米国と交わされた密約によって、戦犯確実な石井がいかにそれを免れたのかが書かれている。 中国戦線において実戦で使用されたペスト菌については、とくに詳細なデータを持っていたようだ。培養などの実験は研究室でもできるが、実戦でしかわからないこと、例えば空中散布では効果がないことや、ネズミや蚤を用いた効率的な散布法、罹患してから死亡するまでの経過など、米国でも持っていないデータを石井は持っていた。 石井自身も裁判にかけられた場合、戦犯で死刑確実ということはわかっていた。だから部下にも「秘密は疑獄まで持って行け」と厳命していた。しかし戦後の冷戦下でソ連に731部隊のデータが渡ることを恐れたアメリカが、そのデータを寄こすことを条件に、部隊に属していた者たちを裁判にかけないことを約束した。 簡単にまとめてしまうとこんな感じだが、中身は濃い。石井に対する尋問はアメリカだけでなく同じ戦勝国のソ連も行ったが、アメリカの入れ知恵でソ連を欺き、結局アメリカ一国が一人占めした記述も興味深い。 石井は戦後GHQにより斡旋された売春宿の経営者となっていた。石井のデータは貴重だが、石井の人格に対して尊敬の念は全くないというアメリカの意思表れだ。 生き残った731部隊の医師たちは、罪を問われることなく戦後の医学界で出世していった。薬害エイズで有名になったミドリ十字も、石井の部下の一人が設立した会社だ。戦後しばらくして生活に窮するようになった石井が、ツテをたどって就職させてくれるように頼むが、無碍に断られている。元部下も石井のことが嫌いだったのだろう。 ただし、731部隊の非人道的な行動を石井個人の人格に帰してはいけない。731部隊には石井の郷里の人間が大勢配属されていた。それは前線への危険な任務へ郷里の人間を送りたくないという石井の配慮からだし、給料も良かったので、郷里の人間は石井のことを郷土の誇りと考えていた。非人道的な実験をしていなければ石井にも、面倒見のいいおじさん、という評判が待っていたかもしれない。 怖いの戦時下でもたらされる感情の麻痺だ。注射後に何時間で死ぬかとか、病変の変化を生体で観察するとか、倫理的に許されない行為も、それが常態化してしまえば感覚が麻痺してしまうはずだ。動物実験と同じように人体実験を考えていたのだろうし、そう思いこむうちに、脳が納得したのだと思う。 だから731部隊の狂気は石井個人の人格に帰するのではなく、集団ヒステリーとして考えることが大事だと思う。
主な特徴として「読み始めて6分で熟睡できる」 ということが挙げられる(- -; いや、内容がつまらない訳ではなく、 いつも小説ばかり読んでいる我には 固くて重い内容が難しすぎて...(^ ^; ただ、あまり読みやすい本ではない気がする。 そこここに「〜だったろう」「〜に違いない」みたいな 作者の...続きを読む主観が入り込んできて... 「ドキュメンタリー」として読むにはやや邪魔くさい(- -; 文体も「ルポ風味」になっているが、 テーマがテーマだし、事実だけを淡々と書いた方が 内用がスムーズに頭に入る気がする。 新しく「発見」された石井氏の残したノート二冊は、 確かに貴重な資料ではあろうし、晩年の石井氏の 「小市民っぷり」が意外で面白い(^ ^ が、タイトルの「731」にはそぐわない気も。 タイトルから「731部隊の悪行を詳らかにする」 ような内容を(勝手に)期待していたが... この内容だと「石井 四郎 - その知られざる素顔 -」 みたいな方がしっくりくる感じだ(^ ^;
日本陸軍細菌戦部隊長であった石井四郎を中心に、部隊の成り立ちと戦後の成り立ちに迫ったノンフィクション.特に、戦後、アメリカとの駆け引きにより戦犯に問われることなく生き延びていく様を見ていると、昔からアメリカというのはダブルスタンダードの国であったことが良く分かる. ただ、全体を通して何を目的とし...続きを読むたノンフィクションなのかが分かりにくい.事実をここまで掘り起こして時系列に整理した事のすごさは分かるが、そこで力尽きている. 巻末の解説で、佐藤優さんが「対象との距離感」という言葉で、これを表現しているが、私には、俯瞰し過ぎと感じられた. だから、☆3つ(興味あるテーマなら読むべし).
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731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く―(新潮文庫)
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青木冨貴子
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