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箱根の山は天下の嶮か、ケンカのケンか?──足刈にある二軒の老舗旅館、玉屋と若松屋は先祖代々の犬猿の仲だ。だが若松屋の娘、明日子と玉屋の若番頭、乙夫は反発しながらも内心惹かれあっていた。いがみあう旅館、勃発する跡継ぎ問題、親から紹介された見合い相手、旅館の経営不振と大事故、乗り込んでくる都会の大資本……二人の恋の行方と箱根の未来はどうなる?
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Posted by ブクログ
昭和がレトロになって久しい。 そんな話題にうってつけのエンターテインメントだ。 昭和を知っている人も知らない人もすごく楽しめる小説、わたしの今年一番のお薦め。 あの頃は、とにかく希望がいっぱいあった。 (今の北京みたいに、いや、昔のロンドンみたいに)東京が煤煙で汚れていても、明るかった、活気が...続きを読むあった。 そんな東京の避暑地、温泉地箱根に勃発した観光道路開発戦争。 それに加えて地元旅館の争い、お家騒動。 「箱根の山は天下の嶮じゃなくて、ケンカのケンだぜ」登場人物の独白。 自然のきれいな空気も硫黄でなくても濁りそうで、息苦しいような。 だけども他人の喧嘩はやじ馬にとって実に面白い。 そこを作者はうまーく捉えて、だーだだーっと読ませる。 青春物語もあり(しかも純情可憐な)なお、経営学方面、地質学も加わり、多彩に発展する。 陳腐に落ちず、飽きさせない。 昭和を知っている人はクスリと笑い、獅子文六の「先見の明」にハッとする。 知らない人は昭和ってこんなに明るかったのねとびっくりされればよろしい。 閑話休題 この小説は昭和36年(1961年)3月から10月まで朝日新聞に連載された由。 わたしちょうど花の19~20歳(笑) 堤と五島のケンカを下敷きにして面白おかしくと話題であったのに、娯楽小説などは「フン!」見向きもしなかった。半世紀も過ぎてやっとその気になったのはだいぶ損をした計算になる(笑) ものすごく笑った一節 東京でサラリーマンになる乙夫がスーツ(背広)をあつらえるのに 「ブラ下がりにしておけ」と親代わりが言う(そう言ってた、言ってた! 笑) わかるかな~~
とにかく箱根箱根箱根箱根…箱根の郷土史を読んでいるようでした。最初の、箱根を舞台にした2つの会社の騒動はその後のストーリーにはあまり関係なかったのでは⁇とはいえ、とにかく獅子文六さんが描く登場人物は色あせないんですよねぇ、イキイキしてます☆どっぷり箱根のお湯に…ではなくキャラに浸かりました☆
1950年代から60年代にかけて 神奈川県の箱根山周辺をめぐる観光開発競争が 西武、小田急、藤田観光の3グループ間で行われていた かつては互いの縄張りを侵さないように共存していたものだが 戦後、GHQの方針による自由経済の強化で 独占禁止の風潮が出てきたことをきっかけに、戦いの幕が開いたのだった 当...続きを読む初、作家の獅子文六は 「箱根山戦争」と呼ばれたそれをモデルに 企業小説のようなものを書こうとしていたらしいのだが 連載中、関係各所から不穏な空気が漂ってきたために(ホンマか) 急遽、路線変更して 大人たちの争いに巻き込まれながらも自分らしさを見失わない 若者たちのエバーグリーンな物語としたのだった 結果的にそれが正解で 序盤から中盤にかけぶつ切りの印象は否めないものの 池田勇人が「国民所得倍増計画」をぶち上げた時勢にも煽られてか たいへん景気のよい話となっている
初めての獅子文六。知り合いが絶賛していたので読んでみることにしました。 時代は私が物ごころ着き始めた頃の昭和35年。そのせいで「こんなだったよな~」と{そうだったのかしらん」が入り混じります。 冒頭は箱根開発をめぐる西郊(西武)と関急(東急)の2大勢力の争いでスタートします。箱根山戦争という名前が...続きを読む付けられたくらい有名な事件のようですが、私は初めて知りました。まあ、時代もですし、地方生活者にとって箱根そのものに馴染みが無いのです。地名なども判りやすく置き換えられている様ですが、そもそも土地鑑が無いのでついて行けない。という訳で、少々辟易しながら読み進めます。 途中から話は芦ノ湯(文中では足刈)の2軒の旅館間の争いに移ります。 元々、親戚関係だった2軒の確執。89才の元気な女将、忠義な番頭、家業そっちのけで趣味に生きる主人。登場人物もちょっと古風で多彩です。そしてその背景に描かれる高度成長期の日本。マイカーブーム、大衆レジャーランド、スモッグ、クーラーの無い夏場。元気で若々しい日本です。考えてみればちょっと今の中国に似ています。 そんな中で生まれる微笑ましい純情可憐な恋愛。ノスタルジックな昭和期の映画・テレビドラマの世界を思いながら、楽しく読みました。 全てが幸せな方向に向いたところでスパッと切り落としたようなエンディングが特徴的です。
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