杳子・妻隠

杳子・妻隠

572円 (税込)

2pt

“杳子は深い谷底に一人で坐っていた。”神経を病む女子大生〈杳子〉との、山中での異様な出会いに始まる、孤独で斬新な愛の世界……。現代の青春を浮彫りにする芥川賞受賞作「杳子」。都会に住まう若い夫婦の日常の周辺にひろがる深淵を巧緻な筆に描く「妻隠」。卓抜な感性と濃密な筆致で生の深い感覚に分け入り、現代文学の新地平を切り拓いた著者の代表作二編を収録する。

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杳子・妻隠 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    筆致に圧倒された。
    だれかと関係を持つ、ともに生活を送る。
    まったくの孤独ではないはずなのに、閉塞的なその関係によってより孤独が深まっていくような、そんな苦しさと寂しさと、やるせなさのようなもの。自分の中で上手く言語化できなかった感覚が、描かれていたような気がした。

    0
    2023年10月27日

    Posted by ブクログ


    “内向の世代”としてどんどん深化していった中期以降の古井由吉とは内容を異にする初期の大名作。
    当時より観察力・透明な筆致は完成しているが、何より表題の『杳子』のひたむきな表現に心が動く。
    他作を同様にお薦めは出来ないが、本書に関しては戦後の必読書と言いたい。

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    2022年10月06日

    Posted by ブクログ

    ひたすら陰鬱な作品で,メランコリーが全体を支配しているのが特徴。70年代「内向の世代」の代表作で,ある種の純文学の王道だろう。

    今にも落ちそうな危うさで,といっても落ちたからといって何事も起こりそうもない,といった徒労。閉ざされた世界における不安は,現代でも十分通じるところがある。

    「病的」とい

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    2021年07月20日

    Posted by ブクログ

    Twitterでちらほらと見かけて手に取りました。芥川賞受賞作の「杳子」には圧倒されました。底が見えない深い文章、体の内側から世界がはみ出していく感覚、そしてまた世界が体の内側へ収斂していく感覚、絶妙な均衡を保って静止している世界に佇んでいる自分……少しでも身動ぎすれば、崩れて行くように思われる世界

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    2020年04月14日

    Posted by ブクログ

    『ピース又吉がむさぼり読む新潮文庫20冊』からピックアップした一冊。
    閉ざされた世界での男女の恋愛というものは、かくも重くて暗いものなのか。そもそも恋愛とは実は明るいものではないのかもしれない。そんなことを考えながら読み終えたとき、又吉が帯の惹句に書いている「脳が揺れ…めまいを感じ」たという症状にワ

    0
    2018年11月18日

    Posted by ブクログ

    初めて古井由吉さんの小説を読みました。普段、小説は一気に読んでしまうことが多いのですが、あまりに内容が重くて途中でしんどくなってしまって、日にちをかけて読破しました。

    『杳子』
    心の健康って何だろう?って考えさせられる内容でした。
    杳子は神経を病んでいて、異常といえる思考を持っているんだと思います

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    2015年08月16日

    Posted by ブクログ

    「杳子」
    大学生の時にしばらくお付き合いをしていた女性は小柄で可愛らしく、真面目で読書家、友達思いのキュートな人だった。
    彼女が北海道へ一人旅に出かけた時に、私は多分何かに嫉妬したのだろう。
    彼女が私より旅行を選んだような気がした。
    その頃から私は自分の中にあるウジウジとした女々しい思いを彼女に少し

    0
    2022年09月19日

    Posted by ブクログ

    「杳子」が小川洋子さんのラジオで紹介されていて、気になって読んだ。1971年の芥川賞受賞作品。掴みどころがなく何とも言えない気分になるが、美しい文章だと思った。小川洋子さんが、「繰り返し読むことで発見がある」と評されている。他の古井由吉作品も読んでみたいと思った。

    0
    2020年12月23日

    Posted by ブクログ

    杳子--おそらく統合失調症である女との交際を実に細かく描写している。登場人物は二人以外にほとんどいないのに、描写の細密さによって最後まで読ませてしまう。これはすごい作品だ。
    妻隠--正直、よく分からなかった。

    0
    2015年09月21日

    Posted by ブクログ

    閉塞された男女の世界を、
    透明人間になって傍から見聞きして書いたような偏執的な描写。
    冷徹で枯れていて、思考や目線の端々が几帳面の域を超えている。

    その文体から映し出される登場人物は、
    そのままそっくり具現化されたようで、
    深淵は多層化され、
    滑らかで湿り気のある混沌と、
    儚げで印象的な齣撮りの時

    0
    2023年06月14日

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