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“杳子は深い谷底に一人で坐っていた。”神経を病む女子大生〈杳子〉との、山中での異様な出会いに始まる、孤独で斬新な愛の世界……。現代の青春を浮彫りにする芥川賞受賞作「杳子」。都会に住まう若い夫婦の日常の周辺にひろがる深淵を巧緻な筆に描く「妻隠」。卓抜な感性と濃密な筆致で生の深い感覚に分け入り、現代文学の新地平を切り拓いた著者の代表作二編を収録する。
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Posted by ブクログ
筆致に圧倒された。 だれかと関係を持つ、ともに生活を送る。 まったくの孤独ではないはずなのに、閉塞的なその関係によってより孤独が深まっていくような、そんな苦しさと寂しさと、やるせなさのようなもの。自分の中で上手く言語化できなかった感覚が、描かれていたような気がした。
“内向の世代”としてどんどん深化していった中期以降の古井由吉とは内容を異にする初期の大名作。 当時より観察力・透明な筆致は完成しているが、何より表題の『杳子』のひたむきな表現に心が動く。 他作を同様にお薦めは出来ないが、本書に関しては戦後の必読書と言いたい。
ひたすら陰鬱な作品で,メランコリーが全体を支配しているのが特徴。70年代「内向の世代」の代表作で,ある種の純文学の王道だろう。 今にも落ちそうな危うさで,といっても落ちたからといって何事も起こりそうもない,といった徒労。閉ざされた世界における不安は,現代でも十分通じるところがある。 「病的」とい...続きを読むうのを書こうとすると大抵は意欲作扱いされると思うのだが,本書はそれを普通にこなしてしまった。更に,本作が問うのはごく一般的な「存在の境界線」であり,読者の平衡感覚すら奪ってしまう。果たしてどこからがメタ視点なのだろう。
Twitterでちらほらと見かけて手に取りました。芥川賞受賞作の「杳子」には圧倒されました。底が見えない深い文章、体の内側から世界がはみ出していく感覚、そしてまた世界が体の内側へ収斂していく感覚、絶妙な均衡を保って静止している世界に佇んでいる自分……少しでも身動ぎすれば、崩れて行くように思われる世界...続きを読む。上手く言葉が見付からないのですが「杳子」はこれまで読んできたどの本にも感じたことの無い不思議な感覚を味わいました。感情と言うよりも、肉体を通して世界を感じている作品のように思えました。とにかく凄いとしか言いようない作品。併録の「妻隠」は何処か懐かしさを感じるような色合いがありますが(登場する老婆や景色に)この作品は登場人物が発する匂いが帯のように漂っていて、只管それが拡散されて密度が高まっていくように感じられました。初めて古井由吉は読みましたが、他にも読んでみたくなりました。
『ピース又吉がむさぼり読む新潮文庫20冊』からピックアップした一冊。 閉ざされた世界での男女の恋愛というものは、かくも重くて暗いものなのか。そもそも恋愛とは実は明るいものではないのかもしれない。そんなことを考えながら読み終えたとき、又吉が帯の惹句に書いている「脳が揺れ…めまいを感じ」たという症状にワ...続きを読むタシも見舞われた。
初めて古井由吉さんの小説を読みました。普段、小説は一気に読んでしまうことが多いのですが、あまりに内容が重くて途中でしんどくなってしまって、日にちをかけて読破しました。 『杳子』 心の健康って何だろう?って考えさせられる内容でした。 杳子は神経を病んでいて、異常といえる思考を持っているんだと思います...続きを読む。けれど文章を読んでいると、だんだんそういう考え方もわからなくもないと思えてきてしまう自分がいました。普段生活していて考えることはないけど、考えてみると実は世界の実体は誰にも理解できません。だからこそ見え方は人それぞれで、誰かの思考が間違っていると言い切ることはできないのではないかと感じました。 病気が直ったという杳子の姉と健康だという杳子の彼、自分の癖に慣れてしまって自分ではわかっていない彼らは、他人から見たらどうなのでしょうか。自分では健康だと思っている人も、他人からみたら異常だと思われているのかもしれません。同じ人に対する意見も人それぞれ異なり、正解はわからないのだと思います。 『妻隠』 『杳子』で衝撃を受けた後読むと、だいぶ読みやすく感じました。不安定さを孕む夫婦の物語でした。 夫の顔が知らない人に見えたり、逆もあったりと、こちらの物語でも見え方の多様性を感じました。
「杳子」 大学生の時にしばらくお付き合いをしていた女性は小柄で可愛らしく、真面目で読書家、友達思いのキュートな人だった。 彼女が北海道へ一人旅に出かけた時に、私は多分何かに嫉妬したのだろう。 彼女が私より旅行を選んだような気がした。 その頃から私は自分の中にあるウジウジとした女々しい思いを彼女に少し...続きを読むずつ吐き出すようになっていたと思う。 私は彼女の本質を知らなかっただろう。そして自分の女々しい思いをぶつけることが彼女の心から私を遠ざけるのだという事を知らなかった。 この作品の「杳子」は心を病んでいるのだけれど、自分が病んでいる事を知っている。そして彼女を取り巻く世の中と人々は彼女を救い出すことができない。 動けなくなった山の「底」で杳子は彼女を救える男に出会い、助けを求める。 男は杳子を救えるのは自分の他いないと知る。 男と杳子は2人だけの空間を作りその中で抱き合いながら生きていくことになるのだろう。 「妻隠(つまごみ)」 妻隠とは一体どういう意味なのだろうか。 辞書を引いても作品を読み終えてもわからない。 多分会社の組合運動に加わっていた男性が、その時の疲れからだろうか体調を崩して1週間近くの休みを取る。 その間会社勤めの身では見ることのなかった日常が目の前に広がる。 果たして自分と妻はどこにいるのか? 自分を包む現実の世界で自分達はどの様に見られ、どの様に生きているのか? 今の自分達の生き方は世の中を構成する真っ当な生き方なのか、疑問が沸く。 気になる事: 妻隠の中に「独壇場」という表現が有る。 本来なら独擅場で独壇場はその誤用だとされていたけれど、今では作家も使うほど正しい言葉として認識されているのだろうか?
「杳子」が小川洋子さんのラジオで紹介されていて、気になって読んだ。1971年の芥川賞受賞作品。掴みどころがなく何とも言えない気分になるが、美しい文章だと思った。小川洋子さんが、「繰り返し読むことで発見がある」と評されている。他の古井由吉作品も読んでみたいと思った。
杳子--おそらく統合失調症である女との交際を実に細かく描写している。登場人物は二人以外にほとんどいないのに、描写の細密さによって最後まで読ませてしまう。これはすごい作品だ。 妻隠--正直、よく分からなかった。
閉塞された男女の世界を、 透明人間になって傍から見聞きして書いたような偏執的な描写。 冷徹で枯れていて、思考や目線の端々が几帳面の域を超えている。 その文体から映し出される登場人物は、 そのままそっくり具現化されたようで、 深淵は多層化され、 滑らかで湿り気のある混沌と、 儚げで印象的な齣撮りの時...続きを読む間の中に、 絶えずその性質を留まらせている。 庇護欲でなく同族であることの共通理解が、 男女を一風変わった関係で成立させ、 それがどの抽斗から出てきた恋愛なのか分からなくとも、一応箪笥には収まっているように見せる。 踠いているような、 真っ直ぐ進んでいるような、 その歩き方を絶えず指先まで意識しながらいるような、そんな話でした。 杳子面倒臭いけど、多分可愛い。 話が一筋縄でいかないのを身悶えしながら、 読み進めたが、結局、どうなったんですね?(白目) 読み疲れするし、 の割には感情を揺さぶられるでもない。 理解が追いつかないながらも、 本能的感覚で、 ただその凄さをぼんやり感じる事はできる。 妻隠のほうが読み易い。 思考の並びや、妻の描写に、 ハッとさせられる所が多々あった。 DQNの中で妻がオンナになるとことか、 その後何食わぬ顔で帰って来るとこ、 それに夫が何も示さないとこ、 桃に関心が無さそうに適当に摘むとこが、 わりと印象に残った。 なにか冷たいのか、 冷たい中に熱があるのか、 判然としないなかに、 嫌にまとわりつく読み味が、 読後にはサラッと流れていくようだった。 本格小説といった印象だが、 果たして本格とは一体何をもってして本格とするのか。 古井由吉をもう少し読み込めば、 分かるようになるかもしれない。 #読書 #読書録 #読書
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