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「わたしにはおっ母さんがいなかった」
明治四十二年、上州からっ風の吹く小さな村で生まれた母テイは、米寿を過ぎてから絞り出すように語り始めた――生後一か月で実母と引き離され、養女に出された辛い日々を。そして故郷をいろどった四季おりおりの行事や、懐かしい人びとを。
新緑の茶摘み、赤いタスキの早乙女の田植え、家じゅうで取り組むおカイコ様。
お盆様にお月見、栗の山分け、コウシン様のおよばれのご馳走。
初風呂と鮒の甘露煮で迎えるお正月様。
農閑期の冨山のクスリ売りと寒紅売り、哀愁のごぜ唄。
春には雛祭りの哀しみがあり、遊郭での花見には華やかさがあった。
語る母、聴き取る娘。母と娘が描きあげた、100年をけなげに生きた少女の物語は、色鮮やかな歳時記ともなった。
2010年に刊行以後、さまざまな新聞・雑誌に書評が掲載され、NHK「ラジオ深夜便」での、著者の「母を語る」も評判となった。多くの感動と共感を読んだ物語の待望の文庫化。新たに、足利高等女学校の制服姿のテイや家族写真、また新渡戸稲造校長の女子経済専門学校での写真などを掲載。解説は中島京子。
Posted by ブクログ 2020年07月21日
明治42(1909)年生まれの女性・テイの生涯。明治になって40年以上が経つにも関わらず、今から100年前の農村部には良くも悪くも江戸時代の匂いを感じる。農家としての歳時記は、いろいろな神様への感謝と、過酷な労働の繰り返しだ。農家へ嫁いだテイの母が、婚家と馴染めずに生んだ子を手放してから、テイには生...続きを読む
Posted by ブクログ 2016年09月02日
明治42年8月10日生まれの寺崎テイは、平成21年(2009年)に100歳になった。この本は寺崎テイの生まれ故郷である北関東の田舎(高松)の風景や人々の暮らし、昭和初期の東京の様子をまとめたもの。ひとりの女の子の物語である本書が、なぜこんなに驚きに満ち
懐かしく、また切なく心を打つのか。
土地柄こそ...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年03月23日
自分の母の生涯をここまで聞き取り、記すことができたことにまず驚いた。
さらに北関東の民俗学的な価値にまで及ぶ食生活、地域行事、田畑の耕作、「家」の風習や慣習…
ただ、自分だけの力や思いだけではどうにもならない、女性にとって決して生きやすい時代ではない中で、強い信念のもと勉学に邁進する姿は、田舎の様々...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年05月16日
ノンフィクションは納得できて好きだ。
100年前の筑波村高松の生活はとても魅力的だった。
主人公テイの幼少での立場は、必ずしも幸せとは言えないものの、制約あるなかで充実した日々を過ごせたのではないだろうか。
自分が羨ましいと感じたのは、お正月とかお花見とかコウシン様とかの行事だ。
昔の人達が当たり前...続きを読む
Posted by ブクログ 2019年08月05日
著者の明治生まれの実母・テイが米寿を過ぎて語り始めた話を聞書きした女の一代記。
養女に出され労働力として働かされた辛い幼少期からのおよそ100年間を、1人の少女の目線で当時の農家の生活や四季折々の涎の出そうな手の込んだ伝統食や風景が鮮やかに描かれた歳時記。
これ、実録版「おしん」ですよ。
かつ文...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年06月22日
創作じゃなくて実話で、かつ電気もないガスもない日本の田舎で生きていた人の暮らしがよくわかる話でした。
朝ドラみたいだ。
食べ物の描写は解説の方も書いていた通りとても美味しそうに表現していて、出てくる人物たちもみんな個性的。おばあさんとおっかさんが好きだけど、嫁っていうものを、このおっかさんはきっぱ...続きを読む
Posted by ブクログ 2016年09月01日
100年以上前に生まれた、母を知らぬ一人の女の子が歳を重ね、ふとしたひょうしに過去を口に出したことから始まるこの本は、なんというか、原色のクレヨンで描かれたような色鮮やかさである。
とても強い色でいきいきと、100年前とは思えない鮮やかさの世界で、女の子は生きていたのかと驚く。
ハレとケとい...続きを読む
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