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舞台はロンドンのサロンと阿片窟。美貌の青年モデル、ドリアンは快楽主義者ヘンリー卿の感化で背徳の生活を享楽するが、彼の重ねる罪悪はすべてその肖像に現われ、いつしか醜い姿に変り果て、慚愧と焦燥に耐えかねた彼は自分の肖像にナイフを突き刺す……。快楽主義を実践し、堕落と悪行の末に破滅する美青年とその画像との二重生活が奏でる耽美と異端の一大交響楽。
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Posted by ブクログ
ヘンリー卿は時空を越えて存在する完璧な存在。 実在しなくて本当によかった。 出会った作品の中で最高ではないが、人生で最も影響を受けた物語。いまだに呪縛は取れず何度読んでもワイルドの恥美的な世界にどっぷり浸かってしまう。
オスカーワイルド3冊目。また瘴気に当てられた…大筋のストーリーこそベーシックだと思いますが、とにかく会話と思考の逆説に次ぐ逆説。真理のようにも気取っているだけのようにもとられるけど、主要な登場人物3人こそワイルドの分身なのだろうと思います。
昨年の『禁色』、今年の『標本作家』ときて、ようやく『ドリアン・グレイの肖像』にたどり着きました。本に関しては、読むべき時におのずと手に取ることになるという(?)運命論者なので、来るべき時が来たという感じです。 学生時代に『サロメ』にはまった時に、なぜこちらを手に取らなかったのか。福田恆存が好きだと話...続きを読むし合える友人がいたのに、なぜこの本を手に取らなかったのか。もう彼と話し合えることがないのに、今更彼にぴったりな本達を読むことになっているなんて、なんと残酷なのだろうと思います。でも私たちにとって、美しいものは悲劇的であるということはあまりに自明なことなので、きっとこれで良かったのだと思う自分もいます。が、一番に語るべき人物が思い浮かぶのに、彼と話し合いたい本だけが溜まっていく。このあまりにも美しい言葉でなるこの本もまさにそんな一冊でした。 読みだした最初からあまりにも『禁色』であって驚いたのですが、意外と読み終わったときには、「悠一の方が魅力的だったな…?」でした笑。だからといってこの本の満足度が下がることはないのですが。むしろヘンリー卿の方が魅力的に映った。きっと諸々の悪事が明記されているわけでもなく、それに悪魔的に酔いしれるドリアンが見られたわけでもないからだろう。BL的な観点でいうと一瞬だけ出てきた、アラン・キャンベルにもとてつもなく惹かれてしまい、ドリアンとの「18か月」詳しく…ってなりました笑 さて本編で私を酔わせた場面たち 「芸術が映しだすものは、人生を観る人間であって、人生そのものではない…有用なものを造ることは、その製作者がそのものを讃美しないかぎりにおいて赦される。無用なものを創ることは、本人がそれを熱烈に讃美するかぎりにおいてのみ赦される。すべて芸術はまったく無用である」p.8, オスカー・ワイルド(序文全てが魅力的で既に★5の気分だった) 「影響はすべて不道徳なものだー科学的にいって不道徳なものだ…他人に影響を及ぼすというのは、自分の魂をその人間に与えることにほかならないから。いちど影響を蒙った人間は、自分にとって自然な考えかたもしなければ、自分にとって自然な情熱で燃え上がることもない。美徳にしても本物でなく、罪悪だってーもし、罪悪などというものがあるとしての話だがーそれだって借物にすぎない。その人間はだれか自分以外の人間が奏でる音楽のこだまとなり、自分のために書かれたものではなく役割を演じる俳優となる。人生の目的は自己を伸すことにある。自己の本性を完全に実現すること、それこそわれわれがこの世に生きている目的なのだ。…」p.32, ヘンリー卿 「薔薇のように紅い若さと、薔薇のように白い幼さをもったあなた」p.34, ヘンリー卿 「音楽なら、いまと同じように心をゆすぶられたことがあった。一度ならず、音楽はかれを悩ました。しかし、音楽は、明晰な思想の表現ではない。音楽が人間の心のなかに創りだすものは新たな世界ではなく、むしろ、もうひとつの混沌にすぎない。言葉!ただの言葉!…言葉は無形の事物に形態を附与し、ヴィオラやリュートの音にも劣らぬ甘美なしらべを奏でることができる。ただの言葉!いったい、言葉ほどなまなましいものがほかにあるだろうか」p.34~35, ドリアン 「美というものは天才の一つの型なのだーいや、それは説明を必要とせぬゆえに、天才よりも高次のものにちがいない。美は、陽光や春、あるいはひとが月と呼ぶあの銀色に輝く貝が、暗い水面に落す影のごとき、この世のすばらしき現実に属しているのだ。美にたいして問いを発することはできない。美には天与の主権があるのだ…」p.38, ヘンリー卿 「…きみは、ずっしりとした重たげな蓮の花を頭にかざし、アドリアンの屋形船の舳に座して、緑色に濁ったナイル河を見渡し、あるいは、ギリシアの森林の静かな池に身をのりだして、その静まりかえった銀色の水面に映る自分の顔のすばらしさに見惚れたのだ。そして、こういったものこそ、芸術の真にあるべき姿なのだ、それは無意識的で理想的、かつ超絶的でなければならない。」p.172, バジル 「ドリアンは、いったい自分とバジル・ホールウォードはほんとうに会ったことがあるのだろうか、会ったとすれば、ふたりはたがいに相手のことをどう思っていたのだろうかと考え始めるのだった」p.250 おやおや…夏の日のあの庭が思い浮かぶ… 「文明というものは、容易なことで出来あがるのではない。それを達成する道はただふたつだ。ひとつは教養を高めることであり、もうひとつは頽廃することだ」p.299, ヘンリー卿 「きみは像を彫るでもなし、絵を描くでもなし、きみという人物以外のなにものをも造りだなかったのだ!人生こそきみの芸術だった。きみはきみ自身を音楽に編曲したのだ。きみの一日一日がソネットなのだ」p.310, ヘンリー卿 番外編 「自然のみならず、芸術にもまた獣的な形状と醜怪な声音をもった怪物があるのだという考えに、一種異様な喜びを感じるのだった。ところが、暫くするうちに、かれはそれにも飽き、ときにはひとりで、場合によってはハリーと連れ立ってオペラ座の自分専用の桟敷に坐り、「タンホイザー」の楽曲に恍惚とした耳を傾けては、この大芸術作品の序曲のうちに、自分自身の魂の悲劇が表現されているのだと感じるのだった」p.199, ドリアン 割と最初の方から、ワーグナーの音楽が頭に流れていたのですが、『ローエングリン』という言葉からおやっと思い、『タンホイザー』が出て、ワイルドってワーグナー好きだったんだ!と調べて知りました。だよね、わかるよ笑。同じ方向性の世界だもの
こんなに有名な本を今までなぜ読まなかったのか、それが最大の謎。特に、これだけ素晴らしい本だというのに! 高校のときに選択科目で取っていた演劇で、The Importance of Being Earnestという劇で初めてワイルドを知り、その後、同じく高校時代にスティーブン・フライ主演のWildeと...続きを読むいう映画が流行っていたのが二回目のワイルド体験。その後も、何度も彼の名前は色々な場所で見かけていたというのに、なぜかこの本だけは読んだことがなく。 「美しい」ことと「若い」ということが決してイコールだとは思えないけれど、でも、「若くて美しい」ことに意味があるというのはわかる。そこまでは、同調できる。でもだからといって、ああまで固執するものなのでしょうか。個人的には、年を取ることは若いことと同じかそれ以上に意味があると思っているので、正直、グレイの執着心には寄り添うことはできず。彼があれほどまでに追い求めたかったものも、私にはヘンリー卿に影響されて素直に動いてしまった結果であって、グレイが真実、追い求めたかったものとは少し違うような気がします。そういった意味で、彼は3人(画家、ヘンリー卿、グレイ)の中では一番精神的に弱かったのではないかと。ちなみに、一番の小心者はヘンリー卿でしょう。もしも本当にグレイが、バジルとヘンリー卿の言う通りに「完璧」であったのだとしたら、その後、グレイはその「完璧」を保持しようとしただけであって、それはつまり、「完璧」から遠ざかる行為だったのではないかな、とか考えたりしました。もしも「完璧」ならば、保持せずともグレイが存在するだけで良いわけで……。ただしその場合、ではグレイが保持するためだけでなく、ただただ快楽を追求した場合も彼は「完璧」になってしまうので、結局この論も袋小路に入ってしまいますが。 彼の肖像に彼の「祈り」(と呼ぶべきか否か)が届いたことを目の当たりにするシーンは、本当に寒気がするくらい怖ろしかった。口元に浮かぶいやらしさ、というのが目に浮かぶというよりも、もっとダイレクトに体に響くようで、読んでいた場所は電車だったはずですが、あの瞬間、私は確実にグレイと共に屋根裏部屋にいたように思います。 グレイが真に憎悪の思いをぶつけるべきはヘンリー卿だったように思えるのですが、ヘンリー卿は別格だったのでしょうね。かわいそうなバジル。バジル、ヘンリー卿、グレイの三角関係でもあるこの小説、男色であることが罪悪であった時代だからこそ、表立って描かれていない箇所が、文章の間から匂い立つようです。 ヴィクトリア朝がそうなのか、ワイルドがそうなのか、なぜか女性に対しては手厳しく、女性は必ず批判・非難の対象になっているように思えます。そこだけは、現代的な見方をしてしまい、肩をすくめてワイルドと議論したい気持ちに駆られますが、まあ、過去のことと笑って流すしかないでしょう。 描かれている心理と描かれていない心理、丁寧に描かれた箇所と端折られた箇所、感情的な箇所とぞっとするほど冷静で客観的な箇所の対比とバランスが秀逸です。 次はこれを原文で読んでみたい。美しいんだろうな。
大変面白かったです。確かに唯美主義的な物語でもありましたが、別の側面から見ると、「人生の目的は自己を伸すことにある」という思想の下、悪徳の限りを尽くして徹底的に自己の快楽のみを追い求め続けるという破滅的な「自己」を背負った主人公がどのように生きていくのかを追った物語でもありました。 その結果がいわゆ...続きを読むる一般的な生き方をしていれば普通にはありえないような恐ろしい死であったとしても、各人が持つ交換不能の「自己」を存分に伸ばす生き方には、確かな魅力があります。しかし、それによって開示される「自己」が周囲の人々をことごとく不幸に巻き込むようなものであったとしたら? かなり面白いテーマだと思います。 「日常茶飯の世界では、悪人が罰せられることも、善人が酬いられることもない。成功は強者に与えられ、失敗は弱者に押しつけられる」、本当にそのとおり。きっとドリアンが日常茶飯の世界の住人であったならば、自らの良心にナイフを突き立てて死んでしまうことなどなく、周囲の弱者たちに不幸を振り撒きながら生き続けたことでしょう。しかし、言うまでもなくこのドリアンは空想の世界の住人、つまり小説の登場人物です。『ウィリアム・ウィルソン』よりもさらに手厳しく、良心と共に絶命してしまうという終幕は、この悪夢のように薄気味悪く美しい物語にいかにも相応しいと思います。
azuki七さんの影響。 何も考えずにこれを読んでいたら、青春賛美とかワイルドの同性愛趣味か、などど間違って読んでしまっていただろう。 年を取るということは、肉体が衰え苦しみが増えるのではない。ヘンリー卿が言いたかった青春賛美は、その時その時しかできないこと、感じられないものを楽しむことなのだと思う...続きを読む。 そして、世界はいつも自分からしか開けない。どのような美しい姿をしていても、自分のしたことは、自分が一番よく知っている。肖像画は良心と呼ばれるものかもしれないが、紛れもない自分自身に他ならない。彼は良心から自分を殺したのか。いや、彼は考えることをやめ、自分で自分を否定したのだ。
若さが人を狂わせると言うべきか、言葉巧みに相手を誘惑してしまう人が狂っていると言うべきか…ヘンリー卿が述べた青春を取り戻す方法は確かに納得させられるところがありました。ドリアンはきっと繊細ゆえにああなってしまったんでしょうね。
ドリアンが体裁とわがままで舞台女優を傷つけた時に、ドリアンの良心が本当は傷ついて、自分を堕落させることにつながったと思う。ヘンリー卿がけしかけたように見えて、彼はただ小気味のよい言葉を楽しんでいただけであまり深い意味はなく(実際ドリアンの悪行を信じていなかった)、ドリアンが素直で大した信念もなかった...続きを読むために影響を受けすぎたように見えた。若いときには悪いものの方に惹かれて、味方の方をつまらないものに思えたりすることがある。そうして後戻りできなくなって、振り返ると後悔が残るものだ。
全編通して逆説を言い続ける友達と、 気に入った本を9冊買って違う色のカバーをかけ、その日の気分に合った色のを読むというくだりが良かった。
唯美主義に浸りたいだけの気持ちで読むには人生動かされすぎる問題作でした((汗 ここから得るものはかなり大きいので、人生で読んでおいた方がいい作品だと思うのですが、あらすじとか教養として知っていただけの大雑把な内容などから受けるイメージは軽すぎたかもしれません。 実際に読んでみたら無秩序が予想の遥か...続きを読む上をいっていて、とにかく怖い怖い! 怖がらせるためのホラー小説よりもずっと怖いです……。 凄く重く心にのしかかるものがあり、考えようによっては財産にもなり得ると思うので、読んでよかったというのは素直な感想ですが、ただ私は実際に読破する前の、大まかな知識だけの時の方がこの作品が好きでした。 全て含めて最終的に星4です。
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