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ヒトはなぜ、宇宙の果てや時間の始まりをイメージできないのか? なぜ涙を流すのか。なぜ火に魅せられるのか。なぜ町中に鳥居を作るのか――。脳は、狩猟時代から進化していない。あの頃の生存と繁殖に必要な能力のままである。だから脳には人間特有のクセが残っているのだ。動物行動学からヒトを見たユニークな論考。
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Posted by ブクログ
著者は、動物行動学に関するユニークな著書を多数発表している鳥取環境大学教授である。 本書で著者は、「ヒトの脳にはクセがある」、即ち「ヒトの脳にはかなり偏った性質がある」ことを、その原因・背景から明らかにしようとしている。 具体的に、「なぜマンガは文字より分かりやすいのか?」、「なぜヒトは時間の始まり...続きを読むと宇宙の果てをイメージできないのか?」等のヒトの脳のクセ(=性質)を挙げて、それは、ヒト(=ホモサピエンス)にとって当座の生存・繁殖のために何が有利であったのかを反映しているのだという。つまり、自分たちの歴史の99%においてアフリカのサバンナ地域で狩猟収集を中心とした生活を送ってきたヒトにとって、現代の高度な学問を文字だけで理解したり、時間の始まりや宇宙の果てを想像することは、自分たちの当座の生存・繁殖に何ら有利性をもたらすものではなく、よって、ヒトという動物の認知系や情報処理系の能力の限界を超えたものなのである。ヒトがいまだに狩猟収集生活に適応したクセ(=性質)を持っていることは、“火”に対して特別な関心を抱くこと、“ヘビ”に対して強い反応を示すこと、男性は「(狩猟に必須の)長距離のルートの把握や検出」が得意であるのに対し、女性は「(他の女性や子供との触れ合いに必須の)言語の流暢さ」が得意であることなどからも説明できるという。 また、それぞれの動物種の脳にクセがあることは、実在の世界はヒトを含む全ての動物にとって同じであるにもかかわらず、それぞれの動物種の、実在の世界を写し取る部分や方法(どのような光の波長を使うのか、音を使うのか、においを使うのかなど)が異なることからも明らかである。 そして、そのことは、原始生命の遺伝子が数十億年の間に様々な形に変化してきた中で、生存・繁殖のために有利であった設計図のひとつが現在のヒトの遺伝子であるに過ぎないことを示し、それはまさに、リチャード・ドーキンスの言う「利己的遺伝子論」につながるのである。 最後に著者は、現代科学の究極のテーマの一つと考えられている「なぜ脳内の物質的な変化から“意識”が生じるのか?」という問いを取り上げ、「それは、質問自体が間違っている。・・・NCC(意識相関神経)の領域の神経が興奮することと、意識が生まれるということは、おそらく根源的には同一のものだろう。同一のものをわれわれの脳が、違った内容で認知し、その理由を問い続けているだけなのであろう。」と、ヒトの脳の限界を改めて述べている。 現在存在する動物は、それぞれが進化の過程で、結果的に自分たちにとって有利であった方法で実在の世界を認識している、逆に言えば、それ以外の方法では実在の世界を認識し得ないという説明には説得力がある。ということは、現在のヒトに認識の困難(不可能)な、時間の始まりや宇宙の果て、人間の意識の発生の仕組みが理解・認識できるようになるのは、そうした遺伝子が結果的に有利となる環境が生じたときということなのだろうか。そして、そのような環境とは果たしてどのような環境なのだろうか。。。 深遠なテーマを考えさせる一冊である。 (2015年2月了)
◎人の脳 もともと言語は音声のみ 文字は一度音声に変換して認識 だから絵の方が視覚としては伝わりやすい 人の脳の認知=対物、生物、人間の3種類 対物がより高度に 特に化学 対人は昔と変わらない=コミュニケーション だから難しい話(対物)は擬人化(対人)して くれた方が理解しやすい ...続きを読む 例えば対炎や対蛇と言った専用の 何かに反応する領域がある 人は出来事や物の構成階層、因果関係が分かる ヒトが涙を流す=心が裸になる 涙を見せる=弱った自分=庇護を求める 相手の攻撃性を視覚的に低下させる 遺伝子、ミトコンドリア、本能
冒頭こそは学実書みたいで退屈だなと感じたけど中盤から後半にかけて興味深い内容が多くつい読み耽ってしまった。 人類の99%をしめる狩猟時代の名残が今もかなり濃く残ってるという説にはかなり納得。 この著者の違う本も読んでみたい。
人がどうして「そのように」行動してしまうか分析し解明している。自分が涙を流す理由は解明しなくていいと思った。「泣きたくなったから泣く」でいい。
人間の行動は、昔サバンナにいた頃のホモサピエンスの頃の生活に適応した脳から生じている。そのために様々な癖が生じる。これが著者の主張である。最近の脳の本で比較的よくみられる内容です。こう考えるとうまく説明できるよね、といったことですが、そうなのかなとも思うし、ちゃんと証明されたことになっていないような...続きを読む気もする。遺伝子の設計されたことに従って、行動する。遺伝子が増えるように行動する、というのが、これほど強力な動因になっているはずなのなら、なぜ日本では人が減っているのか、とも思った。新たな視点を教えてもらって、今後に役立つのかは、よくわからない。
サブタイトルの「動物行動学的人間論」に魅かれて読んでみた。前半は特に面白かった。中でも p37 「それぞれの動物種が生存する環境によって、写し取る部分や、写し取るやり方(どのような波長の光を使うのか、音を使うのか、ニオイを使うのか、そしてそれらを脳内でどのように処理するのか等)は異なっている。」 が...続きを読むとても腑に落ちた。 人間よりも嗅覚がすぐれている犬、紫外線が見えるチョウ…確かに、実在世界の反映の仕方は、それぞれの動物で異なっている。 そして、実在世界をどう認知しているのかは、ヒトの個体それぞれも微妙に違っているわけで、この点は日ごろから常に意識しておきたいと思った。
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ヒトの脳にはクセがある―動物行動学的人間論―
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小林朋道
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