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完全な顕微鏡を完成させた素人学者が、覗いてみた水滴の中に完璧な美をもつ女性を見出す「ダイヤモンドのレンズ」。ロボット物の古典として評価の高い「不思議屋」。独創的な才能を発揮し、ポーの後継者と呼ばれるオブライエンの幻想、神秘、奇想に富む8作を収録。怪奇幻想小説の新訳で大注目の南條竹則氏が、自身の思い出とシンクロする表題作を含め、愛着ある作品ばかりで編んだ珠玉の傑作短篇集。
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Posted by ブクログ
この作品集のジャンルはSFだろうか、どちらかといえばオカルトに近い感じがする。「ダイヤモンドのレンズ」は後の顛末を予想しながら読みつつ、後半での意外な展開に驚きました。ファンタジー色豊かであり且つ、流麗な文章により、この作品が世にでた時代の人達はミクロの世界に思いを馳せたのではないでしょうか。 他に...続きを読む印象に残ったのは生前の自分がとった行動を悔いて現世に蘇る「チューリップの鉢」、「あれは何だったのか」は透明人間のルーツだろうか。「ハンフリー公の晩餐」はもっと内容を膨らませて読ませてほしいと感じるほどに好みです。 逆に、謎が多すぎて物語に入っていけない「不思議屋」、「手品師ピョウルー」は表現力にもクドさがあり好きにはなれませんでした。
★このような陶酔と歓喜の瞬間を享しむためなら(p.49) 古き良き怪奇と幻想という感じです。きょうびの読者には物足りないかもしれませんがこういうタイプのはゆったり楽しめます。
怪談物のおもしろいところは怖さというよりも、綺麗に解決されないモヤモヤ感や、釈然としないところだと個人的に思っています。 ミステリーなら怪談の現象にも何らかの説明をつけるでしょうし、ホラーに振り切ったなら、派手な流血や命の危険を強調すると思うのですが、 怪談物は特にオチや伏線があるわけでもなく、命...続きを読むの危険までいくこともあまりない印象があります。(そもそも語り手が死んでいたら、怪談として伝わることもないですし) 特に説明やオチもないけど、なんだか不気味で尾を引く。それが怪談の面白さだと自分は思うのです。 この短編集の著者はフィッツ=ジェイムズ=オブライエンはアメリカの作家だそう。でも、収録されてる作品の雰囲気の多くは、怪談物の雰囲気があるように思います。特に「あれは何だったのか? ―一つの謎」なんて、本当にタイトルのまんま(笑) 不気味だけど、誰かが死んだり呪われたりするわけでもなく、読んでるといつの間にか話が終わっていた印象です。カテゴリはちょっと違うかもしれないけど、この釈然としなささと、ちょっと呆気ない感じが本当の怪談っぽさがあります。 幽霊がでてくるものも奇妙な味わいがあって良い。「チューリップの鉢」「なくした部屋」どちらも幽霊がでてくる建物での奇怪な体験を描いたゴーストハウスもの。読み終えた後に抱く感情はそれぞれ違いますが、言葉にしがたい奇妙な感覚が残ります。 そして、自分だけかもしれませんが、短編の中にはおかしな連想を働かせてしまうものもあります。「墓を愛した少年」を読み終えたときに最初に浮かんできたのは、シューベルトの魔王でした。奇怪で不気味な感じと、子どもを襲う理不尽で理由のない悲劇が、そう感じた理由かなあ。 表題作の一編「不思議屋」から連想したのは『トイ・ストーリー』。最も内容は、似て非なるものなのですが……(そもそも似てるかどうかも怪しいけど) 動き始める人形たちの描写と行動の不気味さもさることながら、それを操る「不思議屋」のいかにも邪悪な魔法使いですよ、感がなかなか乙です。 表題作のもう一編「ダイヤモンドのレンズ」は怪談・怪奇ものというよりかは幻想小説の方が近そう。レンズをのぞき込むとそこには妖精のような美しい女性がいた、というメルヘンな話なのですが、そうは問屋が下ろしません。 主人公の視点から語られる女性の描写がものすごく修飾・美化されているんですよね。最初はこうした表現が美しくも感じられたのですが、徐々にその賛美が読んでいるこっちとしては、気持ち悪く感じてくるというか……。 元々話がメルヘンなだけに、余計に主人公が常軌を逸してる感じがしてくるのです。話の結末も含めて、メルヘンで妖美でありながらも奇妙な読後感の残る、なんとも言えない作品でした。 そして最終話に収録されている「ハンフリー公の晩餐」。散々ここまで変化球を見せられてきたので、最後はどんな球が来るんだ、とバッターボックスで見極めようと思ったら、ど真ん中にストレートを投げられたような、そんな感覚(笑) ヘンな話ばっかり読んできたので、最後に上手い具合にまとめられた感があって良かったと思う反面、そうやってまとめられてしまったことが悔しくもある……。 たぶん、ここで出来の良くない短編だったら「最後だけ行儀よくまとめてくれやがって」なんてことも思うのかもしれませんが、なにぶんストレートな話でも上手く描かれてるから、そんな牙も抜かれてしまいます(苦笑) 振り返ってみると一筋縄でいかない短編集だったなあ、という印象です。クセはありますが、ちょっと変わった小説も読んでみたい、という方ははまるかもしれません。
この表紙ポカーンシリーズの、不思議奇妙怪奇な作品達は正直私には似たり寄ったりの印象だったが。作者はアイルランドに生まれ、遺産を食い潰し、アメリカに渡って執筆活動をした。他の病弱で夢見がちな作者達と異なり、世間に揉まれたのかなあ。非常にダイナミックな書き味で、我々を手品師のように活劇の世界に連れてゆく...続きを読むのだなあ。m&m'sというチョコレートがあるが、あんな感じ。チョコにチョコをコーティングして歯触りよくし、素材の持ち味を引き立てている。一歩踏み出た読ませる感で、惹き付けていると思う。
太く短く破天荒に生きて散った フィッツ=ジェイムズ・オブライエン(享年34)短編集。 親族の遺産を蕩尽してスッカラカンになってから ペンで身を立てたとは何事か(笑)。 箱を開けるとカラフルな包み紙の キャンディ(ボンボンでもよい)が入っていて、 一つ一つ違う味がする――そんな趣の一冊。 甘かったり...続きを読む、ほろ苦かったり。 無気味な話、読者を冷たく突き放すような話もありつつ、 ヒューマニズム溢れるハートウォーミングな物語もあって 心が和むが、 そこには編者兼翻訳者の人柄が反映されているに違いない。 表題作「不思議屋」はニューヨークが舞台だが、 雰囲気はドイツっぽい。 奇怪な商売人=不思議屋ことヒッペ氏は、 ホフマンの小説に登場するコッポラ(コッペリウス)や ドロッセルマイヤーを彷彿させる。 この作品や「ハンフリー公の晩餐」など、 清貧な若い男女が桎梏から解放される筋立てが 清々しくて好もしい。
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