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揉め事の内済を生業とする九十九九十郎(つくもくじゅうろう)を地酒問屋《三雲屋》の女将が訪ね、七雁新三(ななかりしんざ)という博徒の素性を調べてほしいと大金を預ける。新三は岩槻城下の貸元に草鞋(わらじ)を脱いでいるらしい。三雲屋も女将も岩槻の出身だった。九十郎は貸元を訪ねる。二十一年前、藩勘定方が酒造の運上冥加を巡る不正を疑われ、藩を追われた。三雲屋が藩御用達になったのはそれからという……長篇時代剣戟、シリーズ第四弾。
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年齢を顧みない九十郎の仕事ぶり
町民文化が盛んになり、武士と町民の身分の垣根も低くまる時代、九十九九十郎の仕舞屋の仕事は相変わらずに忙しい。仕舞屋とは世の中の揉め事やごたごたを話し合いで解消するという仕事である。要するにもみ消し屋である。 江戸に酒卸の大店となっている三雲屋の女将お曽良が九十郎のところにやって来て、岩槻にいる七雁...続きを読む新三の出生と素性を調べて欲しいと、50両の金子を先払いで置いて依頼した。三雲屋は元は岩槻の酒卸の小店であったが、運がよかったのか江戸に出店を出すまでに大きくなった。 九十郎は早速、藤五郎を伴って岩槻の金吾親分のもとに寄宿している七雁新三を訪ねて、旅に出た。しかし、行き違いで新三に逢うことができなかった。調べていく中、新三についての断片の情報を基に九十郎は鋭い推理を働かせた。七雁新三はこの岩槻藩で元勘定方の侍・日比野信兵衛の子供であることが判明する。 物語は、九十郎の推理と彼の丁寧な取材や彼の協力者、情報提供者の話しを重ね併せつつ進んでいく。 江戸の盛り場や裏町の事情に詳しい羅宇屋の久吉は、お曽良が吉原の花魁であったこと、三雲屋の主貫左衛門がお曽良を落籍して女房にしたことを話す。また、馬喰町の郡代屋敷書役・吉里伊蔵の公儀の証言、さらには岩槻金吾の子分・北次の証言、そして三雲屋の元番頭の惣吉の21年前に起こった岩槻藩勘定方の事件ついての証言、川口宿の宿主・梶平の証言等等…がもたらされる。 その結果、判明したことは、七雁新三とお曽良が日比野信兵衛の双子の子供であること、信兵衛は渡し船から落ちて亡くなったのではなく、勘定方の同僚3人に船から落とされて死んだこと、更には信兵衛の死には、藩の米収穫石高と酒作り高の帳簿上の不正が隠されていたのであった。そして信兵衛はその罪を被らされたのである。 他方、新三は渡し船の当時の船頭だった原助から真相を聞いて、父のかたき討ちのために江戸に入っていた…。そして九十郎はお曽良が依頼したこと以上の活躍をして、果たしたのであった。 現代にも通じる江戸市民の生活ぶりが豊かに描かれている傑作である。
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