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賞味期限、放射線量、食品中の化学物質から電車内での携帯電話まで、私たちはさまざまな基準値に囲まれて、超えた/超えないと一喜一憂している。だが、それらの数字の根拠を探ってみると、じつに不思議な決まり方をしているものが多い。その「からくり」を知らなければ、基準値は無用の不安や油断を生む数字になってしまうのだ。「基準値オタク」を自称する俊英研究者4人が追った基準値誕生に潜むミステリー! (ブルーバックス・2014年6月刊)
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Posted by ブクログ
安全のために設けられた基準値。科学的なようでいて実は根拠があいまいなものや複数の基準が混在しているものもある。普段耳にしつつもあまり気にしない基準値設定の謎に迫る一冊。 お酒は二十歳になってから、優先席付近では携帯電話の電源をお切りください、消費期限と賞味期限など実は身近な基準値。安全はどのように...続きを読む数値化されたのか、そもそも安全とは何か。ゼロリスクと許容できるリスクなど。 10万人に1人がガンにかかって、死ぬレベル 10年連続で年末ジャンボ宝くじを買い続け一等が1回出る確率 実はこの二つは同じ程度だという。 数字のマジック、人間の心理、認知についても分かりやすい例が多く示されている。 正に「科学をあなたのポケットに」のキャッチフレーズに相応しい良著。
基準値は同じ分野でもいろんな基準がある 基準値の根拠が科学的な安全性とは限らない 基準値の根拠は主に安全性か受け入れられるリスクかコスト面から決められる 基準値の根拠はなし崩し的に適当に決めている場合が存在する 基準値を越えた越えないだけで一喜一憂するのは危険 基準値を絶対視すると思考停止に陥る危...続きを読む険があるというのは確かにそうだと思った 基準値の用途やその根拠まで気に掛けるよう注意していきたい といっても面倒なんだよな・・・
「基準値マニア」の著者が語る、基準値にまつわるあれやこれや。本書では、日本では飲酒できる年齢が20歳なのはなぜ?健康に害を及ぼす化学物質の基準値の決め方とは?…様々なトピックを科学的な知見と基準値の制定に関する経緯などに展開しながら説明していく。この手の本は、読んでみると同じことに繰り返しが多く、途...続きを読む中で飽きてしまうことが多かったが、本書に限っては一度読み出すと止まらない!文系・理系にかかわらず、特に大学1年生には読んで欲しい本。おすすめです。
放射能汚染物質やPM2.5等タイムリーな話題をからめつつ、各種基準値の設定の背景等を説明。結構マニアックではあるが、自分は「やむをえない点は多いが、結構アバウトなところ多いな」という感想を持つ。驚くのは多くの規制値、規格が海外の臨床結果なり、実験結果なりのそのままパクリであること。あきらかに基準と...続きを読むして使用不能なものにもそのまま流用していることがあるのには驚く。検証には10年単位の地道なデータ集めと分析が必要なのは確かだろうが、それこそ国税を持ってしっかり実施してほしい、と読後思った。環境関連ばかりではなく、JISなども多くはIEC、ASME等のまるごとコピーというのが結構ある点からも、日本は標準、規格設定が得意ではない国なのかも。 しかし、色々勉強になった。根拠を求めてあまりにマニアックな追求をする必要はないと思うが、視点が大きく変わる場合があることを今回知ったので、今後、ある指針が出たときに、その根拠を問うてみたいところ。
リスク管理の3つの原則 ・ゼロリスクに基づく基準値:その物質が一定量までは健康を害さない閾値がある場合 ・受け入れられるリスクに基づく方法:生涯の発がん確率が10万人に1人以下などと定める方法。大気環境基準、水道水質基準などで用いられている。 ・費用との兼ね合いで決める方法 食品中の一般生菌数が1...続きを読むgあたり1000万~1億個に達すると、味や見た目から腐敗が認められる。弁当や総菜は、加熱食品では1g当たりの上限値が10万個だが、非加熱食品では100万個まで認められている。保存できる期間に安全係数を掛けて消費期限や賞味期限が決められる。安全係数は0.7としている場合が多いが、農水省は2008年に食品ロスを削減する観点から、0.8以上を設定することを勧告した。日本では、賞味期限までの期間を製造業者、販売業者、消費者が3分の1ずつ分け合うという商慣習があり、これが廃棄される食品を増やす原因にもなっている。 アメリカでは、食品中の発がん性物質がどの程度までなら安全とみなすかについて何度も裁判が繰り返されるうちに、生涯でがんが生じる割合として受け入れられるレベルは、1万人に1人から100万人に1人の範囲に落ち着いた。がんの原因の3分の1は、普通の食品に天然に含まれている物質。 1993年に施行された水道水質基準値では、閾値がない発がん性物質については、WHOの飲料水質ガイドラインにならって、生涯発がん確率が10万人に1人のレベルで設定された。閾値があるホルムアルデヒド等では、動物実験で毒性影響がみられなかった量(NOAEL)に種差、人間の個人差それぞれに10倍ずつ合計100倍の不確実性係数を用いて、基準値が設定される。 化学物質の基準値には、環境基準型の基準値と残留農薬型の基準値の2種類があった。残留農薬型の基準値は、農薬のラベルに記された使用基準を守って使用していれば超えない範囲でできる限り低く設定される。この基準値を超えた場合、農家が農薬を適正に使用していないことを意味するが、健康リスクが発生することを意味するものではなかった。2003年の食品安全基本法制定時に、農業規範としての基準値が安全かどうかの基準値として統一されてしまった。 日本の大気汚染対策の対象は、SO2、NO2、PMと変遷した。1980年代までに、疾病の発症は工場排煙に起因するSO2を原因とすることが認められていた。1995年の西淀川公害訴訟判決によって、NO2と道路沿線住民の健康被害との因果関係認められたが、2000年の尼崎公害訴訟判決で否定され、ディーゼル排気微粒子などのPMによる健康被害が認められた。 生態系保全の視点からの化学物質の規制は、2002年のOECDによる勧告を受けて水質目標が導入された。
仕事関係で読んでみたいと思い、購入。基準値の持つ4つの特徴【①従来の科学だけでは決まらない②数字を使いまわしがち③改変されにくい④法的な意味は様々】は、仕事でぼんやり思っていたことを綺麗に言語化してくれている。基準値の決定において、特に日本では、受け入れられるリスクレベルはどの程度か(=なぜその基準...続きを読む値なのか、why)がなかなか議論されず、なんとなくで決めた基準値をどのように守るか(=how)が重要視される。この主張は自分の仕事にも当てはまる面がある。なぜ?という思考を持つよう意識したい。
良書。面白い。 なぜ、お酒は20才からと決まったのか。元は、明治まで遡り、根拠は曖昧。 安全とは、受け入れられないリスクのないこと。 根拠の曖昧なものも多いが、実績があれば、信じていいのではないか。一度決まるとなかなか変更にならないのも基準値の特徴だが。
基準値の決め方が千差万別であることが理解できたが、それにしても人為的な値であることは間違いない.その数値だけがマスコミで飛び回ることに注意する必要があるのを痛感した.原発事故にからむ避難の基準の追加被曝線量20 mSv/年と除染の目標値1 mSv/年の開きを説明した部分(p177-178)は興味を持...続きを読むって読んだ.
帯にある「全国民必読」は言い過ぎかもしれない。だが、基準値という「人を思考停止させる指標」に単純にだまされないように、読んでおくことは有益と思う。 基準値は、安全と不安全を、生と死を、安心と不信を、一本の線で峻別するものではない。この本にあるように、その決め方には、さまざまな紛れ、仮定、割り切りがあ...続きを読むる。可能な限り合理的に設けられている場合は多いはずだが、100%信頼できるかどうかはわからない。 そんな、基準値に寄りかかって無駄な努力をしたり、自分ではない誰かに判断と責任を押しつけないようにしなければならない。
私たちの身の回りにはいろいろな基準値があります。食品の消費期限や、大気汚染の基準、そして放射性物質による被爆基準など。でもこれらの基準が守られていても「本当に安全なの?」と疑問に思うことはよくありますよね。福島第一原発事故の後、枝野官房長官(当時)が「ただちに健康に影響はありません」とよく言ってまし...続きを読むたが、「じゃあ長期的にはどうやねん」と疑問に思った方も多いのでは。 本書は様々な基準値がどのような根拠で決定され(非科学的な決め方が多くて驚きます)、それを私たちがいかに受け止めるべきかの指針を与えてくれます。「基準というのは 考えるという行為を遠ざけてしまう道具である」という本書にある言葉どおり、単に基準以下かどうかという極論に陥らず、「○○基準の何倍!」というような新聞等の見出しに必要以上に煽られることのないように心がけたいですね。 「必要以上に危険を煽るつもりもないし、安全を強調するつもりもない。基準値のありのままの姿を知ることで身の回りのリスクの大きさを知ってほしい。リスクを知らないまま不安になるよりは、知っている方が安心だ」という著者の姿勢には強く共感できます。
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基準値のからくり 安全はこうして数字になった
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村上道夫
永井孝志
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