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芭蕉にとって、『おくのほそ道』とはなんだったのか。六百里、百五十日に及ぶ旅程は歌仙の面影を移す四つの主題に分けられる。出立から那須野までの禊、白河の関を過ぎてみちのくを辿る歌枕巡礼、奥羽山脈を越え日本海沿岸で得た宇宙への感応、さまざまな別れを経て大垣に至る浮世帰り。そして芭蕉は大いなる人生観と出遭う。すなわち、不易流行とかるみ。流転してやまない人の世の苦しみをどのように受け容れるのか。全行程を追体験しながら、その深層を読み解く。
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Posted by ブクログ
これは良かった!私は俳諧のまったくの初心者なのだが、芭蕉の世界を理解できた。和歌は、三十一文字で一つの世界を読み上げるが、俳諧は切れのところでまったく違う (心の世界)へ飛ぶ。初めはそれがわかりにくかったが、通読するうちにわかってきた。そしてその面白さも。 初心者でもこのように芭蕉の世界の面白さをわ...続きを読むからせる書き方をしてくれる筆者がすばらしいと思う。
[ 内容 ] 芭蕉にとって、『おくのほそ道』とはなんだったのか。 六百里、百五十日に及ぶ旅程は歌仙の面影を移す四つの主題に分けられる。 出立から那須野までの禊、白河の関を過ぎてみちのくを辿る歌枕巡礼、奥羽山脈を越え日本海沿岸で得た宇宙への感応、さまざまな別れを経て大垣に至る浮世帰り。 そして芭蕉は大...続きを読むいなる人生観と出遭う。 すなわち、不易流行とかるみ。 流転してやまない人の世の苦しみをどのように受け容れるのか。 全行程を追体験しながら、その深層を読み解く。 [ 目次 ] 第1章 「かるみ」の発見 第2章 なぜ旅に出たか 第3章 『おくのほそ道』の構造 第4章 旅の禊―深川から蘆野まで 第5章 歌枕巡礼―白河の関から平泉まで 第6章 太陽と月―尿前の関から越後まで 第7章 浮世帰り―市振の関から大垣まで エピローグ―その後の芭蕉 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
どうしても嵐山光三郎の芭蕉像が頭から離れないが、俳諧という表の顔にリアリティがあるからこそ、裏の顔と推察される隠密が成立するのだろう……ともかく、国文学者のように芭蕉が詠んだ句の中に、西行や源氏物語などの古典の下敷きがあることを読み取る教養がないので、江戸の知識人の教養の深さに驚かされる。「荒海や佐...続きを読む渡に横たふ天河」は本書では実景を詠んだ句と解説していたが、芭蕉が歩いた季節の日本海は穏やかだったろうし、天文学的に佐渡島には天の河は横たわない。曾良日記では当日は雨だった。このあたりは上手の手から水が漏ったか?
「古池や・・・」の句で蕉風開眼した芭蕉が、その俳句の実践の場として、選んだ場所が歌枕の宝庫である東北(みちのく)であった。 そして杜甫や西行のような旅に憧れて旅に出るのであるが、訪れた「みちのくの歌枕」の地での夢と現実のギャップそして失望、そして日本海側での「荒海や」の句で代表される宇宙的な体験、最...続きを読む後に人間世界への浮世帰りと、その旅の中で新境地を悟る。つまり、宇宙的なものから「不易流行」、人間世界への回帰からは「かるみ」へと、芭蕉の俳句が昇華していく旅であった事が平易に語られている。 若い頃は誰でも、希望に満ち溢れている、ところが、長く生きていると、どうも様子が違う事に気づき始める。そして現代のようになかなか死ぬことすら出来ない悲惨な人生をどう生きていけばいいのか? 著者は、「人生を幸福なものと思っていれば、ときどき出会う不幸は耐え難いものに思えるだろう・・・(略)・・・ところが、はじめから、人生は悲惨なものと覚悟していれば、ときどき巡ってくる幸福が素晴らしいものに思える。芭蕉が「奥の細道」の旅以降に詠んだ句はどれもこうした人生への深い諦念の上に立って詠まれている。あるいは、こうした諦念を下に敷いて詠まなければ、その味わいがわからない句である」 我々の今後の心構えとしても、押さえておきたい人生観でもあります。
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