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義に厚く、潔い男の中の男。「武士」という言葉から連想される通念であろう。現代には失われた日本の美徳を、われわれは「武士道」へと投影しがちだ。しかし、多くの史料には、嫉妬心から足を引っ張りあう、彼らの等身大の生き様が描かれている。では、なにゆえにサムライたちは、かくも生臭い情念に翻弄されねばならなかったのか。そして、その心性を根深く規定した日本社会の特質とは。一級資料を丹念に掘り起こし、嫉妬うずまく武士社会の実像を浮き彫りにする刺激的な試み。
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Posted by ブクログ
江戸時代、出世は生まれた家の家格できまっていたが、同格の武士の間では出世争いがあり、飛び抜けて出世する者には嫉妬が向けられた。 そして嫉妬は表向きには出ず、必ず正義の仮面のもとに向けられたということがよくわかる本。
嫉妬の視点から武士の世界を見たものだったが、馴染なく無理な感も否めない。特に武士の嫉妬を取り上げる必要があったのか疑問。
「怒り新党」でマツコデラックスが「やっぱり怖いのは男のやり合いよ。表に出ないもの。」と言っていた。 江戸時代,男とは,生物学的な雄ではなく元服した武士の意だったという。 礼に篤く義を重んじお家大事と死を厭わず忠勤に励むイメージがあるからこそ,山吹色好きな,「よいではないか,よいではないか,もそっと近...続きを読むう♪」な悪徳お代官様キャラが立つというものなのに,武士ワールドは実は嫉妬と羨望がぐるぐるとぐろを巻く世界だった。 主が死んで殉死すればえっあの人が?と訝しがられたり,殉死しなければおめおめ生きて恥ずかしくないの?と軽蔑されたり,上役よりも毎日顔をつきあわせる先輩や同僚のご機嫌のほうを気にしたり, 武士道というは死ぬことと見つけたりの「葉隠」の作者はこれぞ武士と大人気の赤穂浪士批判,長谷川平蔵は逮捕率の高さを自慢してずっとヒラ,柳沢吉保も田沼意次も高い家格の出ならばあんなに反発は受けなかったとか。 藤沢周平の清く貧しい世界が瓦解していくね。 ただしこの本が面白いのは,歴史上の人物の暴露情報ではなく,個人的な感情と考えられがちな嫉妬が社会システムの中に埋め込まれているのが伝わってくるところ。 大久保彦左衛門が,勝ち戦で逃げる敵を追いかけて取っただけの首と実力伯仲の戦でやっと取った首と,どっちも同じいっことカウントするとは片腹痛いと文句をたれているそうだが, 論功行賞が量的になったのは戦が大型化して殿による直接評価が難しくなったからとか, 嫉妬は嫉妬でも潔く死ぬかどうかより昇進栄達に注目されるのは戦がなくなったからとか, 対人関係上の感情はそれを包摂する社会に依存しているのだと再認識できる。 もちろん,自分の嫉妬を社会のせいにするのは単なる責任転嫁に過ぎないが。 うつ病が増えている現代は,社会構造のどこかがきっとうつの温床なのだ。
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男の嫉妬 ――武士道の論理と心理
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山本博文
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