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少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日からずっと五分ズレたままだ。そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。彼女が秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ世界へ僕を押しやった。洒落た語りも魅力的な、side-Aから始まる新感覚の恋愛小説。偶然の出会いが運命の環を廻し、愛の奇蹟を奏で出す。
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Posted by ブクログ
こういうなんかよく分からない、病んでるような、闇の中にいるような男の話、好きなんですよね笑 そんな男が冷静な振りをしながらも、もがき苦しみながら恋愛していく姿を見る(読む)のが面白い。(←悪趣味?w) まあでも男女問わず、恋愛の有無を問わず、そういう影のある人をほっと...続きを読むけなくなるような気持ちって人間誰しも経験したことあるのでは??
マイルストーン
作者のキャリアのマイルストーン的な作品と言っていいのではないでしょうか。とても感傷的で、自愛が鼻につく読者もいるかもしれませんが、私はすべてが好きで、何度も読み返しています。こういう評は作者が嫌うでしょうが、「ノルウェーの森」に匹敵する純文学的青春譜と受け止めています。主人公の強さと繊細さが、とても...続きを読む愛おしいです。
昔恋人を喪ったことで、世の中に交わりきれない生き方しかできなくなった男性と、 見た目だけでなく中身にも差異のない一卵性双生児の片割れの存在によりアイデンティティを確立しきれずにいる女性の苦悩と恋愛を描いた作品。 自分から見て、他人から見て、自分が他の誰でもない自分であることはどこから生まれてくるの...続きを読むか、陳腐な疑問かも知れないけれど「自分らしさとは」ということを強く考えさせられる。 10年前、まだ上記の疑問に悩むことの多かった高校生の頃に出会って以来、人間関係で悩んだときはふと読み返してしまう。 未だに自分らしさへの答えは出ないけれど、本書を読み返す度に少しずつ違う視点を持てるようになっていて、その一つ一つの積み重ねから自分らしさが生まれるのではないか、と今は考えている。
少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日からずっと五分ズレたままだ。 そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。 彼女が秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ世界へ僕を押しやった。洒落た語りも魅力的な、side‐Aから始まる新感...続きを読む覚の恋愛小説。 偶然の出会いが運命の環を廻し、愛の奇蹟を奏で出す。 やっぱり本多さんが書く人物はどれも魅力がある。 不器用である種開き直りも見せている主人公。 交通事故で死んでしまった、水穂。 プールで出会うかすみ。妹のゆかり。 ゆかりの婚約者の尾崎さん。 べらぼうに金持ちの野毛さん。 その他みんな個性があって面白い。 激しい恋愛の後摩耗して、疲弊しきった時に雨宿りの様な恋がある。 そんな風に思う。 それは雨宿りであって、止まない雨は無いのも事実。 だけどそれは必要であって、そこに愛が無いとも言い切れない。 序盤の祥子との関係もそういうものだろう。 そして主人公はそういう関係性を求めていたし、そういう人が主人公の周りに集まって来ていた。 主人公の上司の小金井さんの恋も何気に切なすぎる。 小金井さんの10年間にどれほど押しつぶされるような思いがあったのだろうか。 きっと主人公が雨宿りの様な恋が出来ていたから、かすみとの関係維持できたのだと思う。 人と人との交わるタイミングって不思議なもんだ。 そんでもってその雨宿りが帰る所になるときだってある。 引用させてもらえるならば、 人生は偶然も必然も無い。ただそこにあるだけだ。 自分もそう思う。
尾崎さんは屈託のない人だった。 30過ぎまで生きているのだからきれいごとだけでやって来られるわけはない。けれど、それが影にならない。曲がったものも、湿ったものも、塩辛いものも、その都度、きちんと飲み込んで消化して来たのだろう。 愛想のない即物的な人物説明に僕は茶々を入れた 目が二つで鼻が一つ?
文庫版の前半編。 ジャンル的には恋愛小説になるが、本作品は一般的な恋愛小説とは一線を画した恋愛小説だと感じる。あまり恋物語は好きではないが、当事者間の恋以外のところに焦点が当てられることが多いのが馴染みやすいのかもしれない。 ヒロインが見た目や性格が全く同じ双子であり、だからこそ起こり得る展開が...続きを読む新鮮だった。
5分間の意味は今のところまだハテナ? side-B続けて読むか、何か挟むか悩むところ・・。 しかし、この人の描く主人公、言葉のチョイスが、毎回、お洒落で好き。
キャラクター設定は相変わらず面白い。 一気に読み終えた。 2回読んだが、5分遅れの世界は理解出来なかった。
本多さんの作品は相変わらず心地良く自分の中に溶けていく。 誰かを好きになることと愛すること。 わたしには何も特別なエピソードがないが、わたしもきっと主人公と同じだ。苦しい恋愛が周りにたくさんあるのに、自分は愛さえ分からない。愛していると思っていたのに全て愛ではなかったと言うようなことが。 でもそれ...続きを読むはもしかしたらみんな同じなのかも知れない。或いは違うのかも知れない。 愛の証明はひどく難しい。
「甘えたい衝動があり、それが甘えだという理性もあった」 このフレーズが何故かよい。とっても簡単な文だけど、気持ちの複雑さをよく表現していると思う。 クールで無愛想でアパティア、でも自然と周りが寄って何でもうまくいく。これがこの本の主人公の設定で、他の小説でも男性が語る場合はほとんどがこんな主...続きを読む人公。 そして私たちはそんな人物にどこか憧れている。そしてその再生の物語にも憧れている。僕らが憧れるからこそ春樹的主人公で溢れかえる。 でもこの憧れは胸を張れるものじゃない。例えるなら、廃墟の持つ引力みたいなもの。 男性が見る理想の自分象、そこにある退廃性を本多さんはこの主人公を通して、徹底的にフィクショナルに描きだしている。まるでゴダールが撮ったミシェル・ポワカールのように。 主人公の心、ひいてはすべての男性の心が見透かされている感じがして心地いい。そして、そのフィクションがまるで私の心のようでもあるから不思議だ。
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本多孝好
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