俘虜記

俘虜記

869円 (税込)

4pt

著者の太平洋戦争従軍体験に基づく連作小説。冒頭の「捉まるまで」の、なぜ自分は米兵を殺さなかったかという感情の、異常に平静かつ精密な分析と、続編の俘虜収容所を戦後における日本社会の縮図とみた文明批評からなる。乾いた明晰さをもつ文体を用い、孤独という真空状態における人間のエゴティスムを凝視した点で、いわゆる戦争小説とは根本的に異なる作品である。横光利一賞受賞。

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俘虜記 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    敗北がもたらす堕落を端的に示した作品で,まさに戦後文学を代表するものと言える。これぞ去勢だなと。後半になるにつれてユーモアが増して弛緩していくにつれ,前半の不殺のテーマが張り詰めるといった構成を感じた。

    0
    2023年08月31日

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争。フィリピンのミンドロ島へ出兵した筆者。そこで米軍に捉えられ捕虜となる。その体験を記した本書。殺せたはずのアメリカ兵をなぜ撃たなかったのか?なぜ自殺ができなかったのか?その問いをつぶさに、自分自身にぶつける誠実な手記。

    0
    2023年07月11日

    Posted by ブクログ

    大岡昇平さんの小説はテレビドラマを見て読んだ「事件」以来かな。俘虜の心理を自ら分析してみせるくだりが秀逸です。俘虜となってから日本に帰るまでが描かれているのでけっして楽しい展開ではありませんが、戦時中の日本人の考え方など理解できました。

    0
    2015年07月18日

    Posted by ブクログ

    『野火』以来の大岡作品を読もうと思って本作をチョイスしたら、結果的に戦後70年にふさわしい読書となった。まずはこのタイミングで読めたことを喜びたい。さて、肝腎の内容についても、もちろん優れているのだが、なかでも白眉は冒頭の「捉まるまで」。著者が米兵と遭遇し、なぜ銃を撃たなかったかについて冷静に考察し

    0
    2015年04月15日

    Posted by ブクログ

    著者がフィリピン・ミンドロ島で従軍し、収容所で日々を過ごした頃の記録。
    鋭い人間観察と心理描写。
    緊迫した塀の外とは裏腹にコミカルに描かれる収容所内部の様子。
    多彩な人物が織り成す一種の密室劇は純粋に面白く、ページをめくる手が止まらなかった。
    一小隊が飢えのあまりにフィリピン人を撃って喰おうとして、

    0
    2013年08月09日

    Posted by ブクログ

    久々にものすごく時間をかけて読みました。

    戦場での強姦に関する場面など(従軍看護婦なのに実際は従軍慰安婦という感じの、ということや)は正直吐き気がしましたが。

    うまく感想がいえません。こういう戦争モノを読むと何も言えません。

    0
    2010年08月01日

    Posted by ブクログ

    これは小説?「野火」の方が有名な気がするし、野火の方が小説らしい形。でも、私には俘虜記の後になぜわざわざ野火を書いたのか分からない。文体も内容も完成度が高いと思う。いや、ぜんぜん別物なのかもしれないが・・・。

    0
    2009年10月04日

    Posted by ブクログ

    戦争文学の傑作。
    戦争の最中に起きた筆者自身の心情や自分の行動を緻密に分析、客観視している。
     本書の特徴は筆者の冷静さである。感情的な言葉で表せられることが多い戦争の事実や心情を彼は冷静に見つめ直し、表現している。
     私のような戦争未経験者が戦争に触れるとき、"必ずしも"激しい

    0
    2022年12月10日

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争後に"戦後派"と呼ばれる作家が登場しました。
    その内、一般的に、戦争体験を通して感じたことや、その意味を論じる文学者たちを第一次戦後派と呼び、戦争体験如何に依らず、戦前の文士たちによって培われた小説技巧を昇華させ、新たな手法を取り入れることで優れた小説を生み出していった

    0
    2022年01月25日

    Posted by ブクログ

    戦争に関する著書は、ノンフィクション、小説問わず数多くある。特に第二次世界大戦(太平洋戦争)に関する本は、星の数ほどあるだろう。その戦争の意義や勝敗の意味、その後の社会に与えた影響を分析する著作も枚挙にいとまがない。では、それらの著作の中で、戦争の最中に敵軍の俘虜となり、虜囚として過ごした日々を克明

    0
    2020年03月24日

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