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東日本大震災後の日本を立て直すにはどうすればよいのか――。この問題を考えるとき、震災前の日本経済が停滞していたことを忘れてはならない。以前に戻るのではなく、復興とセットになった新たな成長が必要なのだ。そのために効果的な取り組みとは何か。本書では、飛躍的成長の核になる、産業集積の考え方から、TPPの本質までをわかりやすく説き明かし、まだ眠っている日本の力を最大限に生かす道を明解に示す。
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Posted by ブクログ
明解なロジックで日本の底力を示してくれる。日本は明治維新や第二次世界大戦後に成し遂げたように、復興を超えた飛躍的成長を遂げる必要があると説く。そのためには、制度的転換によって、企業のグローバル化と、地方の産業集積の創出を、図る必要があるとする。ポイントとなるのは人と人とのつながりであり、若者に期待を...続きを読む寄せている。
【出会い】 修論副査の先生の近著。 【概要】 震災後の日本でいかに経済復興を果たすかというテーマに対し、「グローバル化」と「産業集積」という観点からその方途を明快かつ平易に解説。 【感想】 「三人寄れば文殊の知恵」効果を高め、「臥龍企業」を躍進させるというメッセージはシンプル(立場としては賛成)...続きを読む。 論証として既往の研究、数値データ、事例を豊富に引いていて、あまり経済学になじみがない人でも分かりやすい内容になっているように思う。
東日本大震災直後に書かれた、震災復興提言の書である。論旨は明快でわかりやすいが、震災から10年近くが経過した現在から考えると、提言の内容はどうであったか。よく考える必要がある。
東日本大震災後の日本を立て直すにはどうすればよいのかについて、経済学を中心とした学術的な理論や実証研究の結果に基づいて、2つの提言を行っている。1つ目は、TPPをはじめとするEPAの締結や、起業に対する情報支援によって、日本人、日本経済をさらにグローバル化して、外国との貿易、投資、知的交流を活発化さ...続きを読むせることである。2つ目は、東北をはじめとして日本の各地に特区をつくることで、高度な技術を核とする産業集積を創出することである。2つの提言とも、「つながり(3人寄れば文殊の知恵効果)」が経済成長のために重要であるという考え方がベースとなっている。 図表も交えながら、わかりやすく、論理的に議論が展開されており、一定の納得性があった。ただ、具体的提言であるTPP参加と特区が、どのように「つながり」をもたらすかということについては十分に理解できたとはいえなかった。
サプライサイドの話が多かったが、研究論文を多く引用していて面白かった。 要はTPPを起点にグローバル化し、地方に減税特区を作って産業集積を促進せよという内容。 「法人税は上げるべからず。所得税より消費税の方が公平だから消費税増税が良い。」というのもよく分からないし、三人寄れば文殊の知恵効果というの...続きを読むもいまいちピンと来ないが、とにかく日本経済を復興以上に甦らせ、豊かになりたいらしい。 資料が豊富なので、目を通すだけでも十分に勉強になる。
東日本大震災以降の、日本のあるべき姿をグローバル化と産業集積というキーワードをもとに教えてくれる本です。 現在、復興に向けて様々な支援、活動が行なわれているものの、原発問題やがれきの処理など、まだまだ解決できていない問題が山積しています。大震災は短期的に見れば日本にとって大きなダメージです。しか...続きを読むし、統計的には自然災害が多い国が必ずしも経済成長が低いわけではなく、過去の歴史をなぞれば、第2次世界大戦後の焼け野原から日本は成長を成し遂げた例を挙げて、今後の復興・成長への期待感を教えてくれます。 著書では、グローバル化と産業集積が、今後の日本の将来を決めるキーワードになると主張しています。グローバル化に関しては、異論を挟む余地は無いでしょう。少子高齢化で人口減少が既に始まっている日本だけに目を向けていても先は無く、世界市場に目を向けてビジネスを行なわざるを得ない状況になっています。 一方、産業集積に関しては、世間での浸透率は今ひとつかもしれません。著書でも例を挙げているように、アメリカのシリコンバレーのような、ある特定の産業に特化して、多数の企業が集積するような例は、日本ではそれほど多くないと思います。著書では分かりやすく、「3人寄れば文殊の知恵」といフレーズを用いて、同じ仲間が寄り集まるメリットを挙げています。 著書を読んで感じたのは、人間、危機的な状況に追い込まれると、何もかも捨ててゼロベースで物事を考えるようになるという考えです。何かドラスティックに変えるにも、キッカケが無いとなかなか実行できないことがあると思います。 現状の慣習に甘えていると、今まで歩んできた道を踏み外して進んでいくのは相当な勇気が入ります。しかし、退路を絶たれると、今までのようにはいきません。道が無いので、自分で道を造るしかありません。一人で道を切り開くのは大変なので、みんなでチカラを合わせて協力しながらがんばっていこう、と自分は読み取りました。 今回の震災をひとつのキッカケとして、自分を変えていく機会として捉えられるかどうかは自分次第だと思います。震災という出来事を、ひとつのターニングポイントとして自分の心の中でプラスに変えていけるかどうか、認識を変えていく必要があると思います。 目次 第1章 復興と成長 第2章 経済成長の鍵その1―グローバル化 第3章 グローバル化の方策―TPPを中心に 第4章 経済成長の鍵その2―産業集績 第5章 震災前の産業集積の実態 第6章 「つながり」と「技術」による集積 終章 日本人の底力
東日本大震災によって甚大な被害を受けた日本であるが、筆者は「復興」だけではダメであり、復興を越えた「飛躍的成長」が必要であるとする。 なぜなら震災前の日本経済は停滞しており、復興しても長期的には凋落していくだけだからである。 そこで震災後の今こそ、日本経済の飛躍的成長のために手を打つべきであると述...続きを読むべている。 その方法として、①TPPへの参入により企業のグローバル化を図ること、②東北など地方に特区を設け、産業集積による発展を図ること、の二つを主張している。 日本には力を持った臥龍企業が多くあり、TPPによって海外とつながり、特区により企業同士や大学などとのネットワークを拡充して、産業集積による技術向上を図ることで、生産性が大きく向上するとしている。 このような主張には賛成である。そしてそのタイミングは今しかないと思う。 筆者も述べているように、明治維新や戦後など、日本は混乱期に制度を大きく変え成長してきた。 今がまさにその混乱期であり、21世紀の日本の発展のために大転換を図るべき時であると思う。
グローバル化に賛成の内容でありそれもデータに基づいた論述で過去に読んだグローバル化反対のものと比較出来て面白かった。
グラフを用いた説明等もあり、理論展開が分かりやすい。多用される「文殊の知恵」論には少し疑問に思うところもあったが、経済特区に関する内容には目新しさこそないものの納得させられる。
戸堂康之著「日本経済の底力」中公新書(2011) 本書の特徴としては、経済学を中心とした学術的な実証研究の結果をもとにしていることだ。それによって、東北の地震による復興、そしてその復興を超えた成長のために乗り越えなければならない2つのことで議論を展開していることだ。1つがTPP(環太平洋戦略的連携協...続きを読む定)の締結により、日本経済をさらにグローバル化して、外国との貿易、投資、知的交流を活性化させること。つまり筆者はTPPについては、積極的な論者となっている。もう1つが東方をはじめとして日本の各地に特区をつくることで高度な技術を核とする産業集積を創出することである。産業集積が経済成長を促進する上でどの程度の効果があり、どのような方策や政策をおこなえばよいかについて詳細に述べている。 *一般的に、革新的な技術が生まれても、普及するには時間がかかる。例えば、日本にはじめて自動車が輸入されたのは、1989年であり、1904年には国産自動車第一号も作成されたが普及にはなかなか結びつかなかった。しかし、初上陸から25年後の1923年に関東大地震が東京を襲い、復興のための輸送手段として自動車やトラックの有用性が認められたためにようやく普及が進んだ。大災害の作用はシュンペーターのいう「創造的破壊」にも通じる。大災害たもたらす容赦ない破壊から、新しい成長の芽が育つということなのだ。 *輸出から生産性への因果関係を示すデータがある。日本のデータをつかった研究では、輸出をすることで企業の生産性成長率は平均で2%ほど上昇することが見いだされている。海外直接投資をすることでもやはり生産性成長率が平均で2%あがるとの実証結果がある。もしすべての企業の生産性成長率が2%あがれば日本全体のGDP成長率もおおむね2%上昇する。 *しかし、生産効率が向上することよりももっと重要なのは、輸出や直接投資といったグローバルな活動を行うことで、企業が世界とつながり、海外の最先端の技術やアイデア、情報にふれ、技術や経営の確信を行うための知識や手がかりを得ることができることである。 *日本の輸出額の対GDP比は15.6%であり、主要先進国、新興国の中では最低レベルである。つまり、日本は輸出大国でもなければ、外需に依存した国でもない。日本では、日本企業はアジアに投資しているように思われているが、実は対外直接投資の対GDP比で言えば、他の先進国と比べると低い。 * TPPの特徴は何と言ってもその規模である。交渉中の9カ国のGDP総額は、正解の28%である。むろん、これは世界のGDPの24%を占めるアメリカが含まれていることが大きい。さらにもし、日本がこれに参加すれば世界のGDPの三分の一をしめる巨大な自由貿易圏となる。貿易を拡大するにしても、つながりによる技術や情報のやりとりの効果にしても規模が大きい方がメリットもおおい。 *TPPに日本が参加した場合には、日米のGDPで全体の96%を占めることになる。このことからTPPは実質的には日米のEPAであるとの議論がある。また日米間の工業品に対する関税はすでに低いこともあって、TPPは必要ないとの議論もある。しかしTPPに参加する可能性の高いアメリカとマレーシアについて、日本からの輸出をみてみると必ずしもこの議論は正しいとは言えないことがわかる。
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