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Posted by ブクログ
「幼き日のこと」「青春放浪」「私の自己形成史」収録。
「幼き日のこと」には大正時代の農村の生活が詳細にユーモラスに登場する。
おばあちゃんの昔話を聞いているような感覚!祖母亡き今、もっとちゃんと話を聞いておけばよかったという後悔を、少し軽くしてくれる。
実際の出来事が起こった順番を、自伝的小説「しろばんば」では変えたという創作背景も触れられていて、面白い。
全体を通じて、自分にまつわる事柄が淡々と語られている調子が、なんというか、気持ちいい!
延々と自分について語るくどさのようなものが、まったく無いのだ。
ふと、今の自分が作られた背景にどんな出来事が起きてきたか、どんな人との出会いがあったのか・・・などなど考えたくなります。
Posted by ブクログ
井上靖の作品で、中学生か高校生の時に読んだものは『額田女王』と『黒い蝶』。それ以来読んでいなかった。歴史的作品を多く書く、品の良い作家というイメージだった。先日、『しろばんば』を読み、イメージが少し変わり、親近感が増して、『しろばんば』の世界をもっと知りたくなって手に取った。
湯ヶ島での、おかのお婆さんとの暮らしについて書いているところが、やはり一番面白かった。エッセイなので、『しろばんば』のようにその世界に引き込まれることはなく、お婆さんの語り口も現代風で情感はないけれど、『しろばんば』の背景を色々と知ることができた。
「…わが儘いっぱいに振舞ってはいたが、家庭で育つのと異って、甘えというものはなかったと思う。おかのお婆さんの方も、盲愛と言っていい愛情を注いではいたが、血の繋がりから来るどろどろしたものはなかった筈である。祖母と孫の関係ではなく、世の男女の愛の形のようなものが、私とおかのお婆さんの間には置かれていたのではないかと思う。」
「私は今でも、おかのお婆さんの墓石の前に立つと、祖母の墓に詣でている気持ではなく、遠い昔の愛人の墓の前に立っている気持である。ずいぶん愛されたが、幾らかはこちらも苦労した、そんな感慨である。」(233頁)
青年期以降は、随分と、のりしろの多い生活を送っていたようだ。こののりしろこそ、後に数々の優れた作品を生み出した作家の源泉となったのだろう。
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