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天平の昔、荒れ狂う大海を越えて唐に留学した若い僧たちがあった。故国の便りもなく、無事な生還も期しがたい彼ら――在唐二十年、放浪の果て、高僧鑒真を伴って普照はただひとり故国の土を踏んだ……。鑒真来朝という日本古代史上の大きな事実をもとに、極限に挑み、木の葉のように翻弄される僧たちの運命を、永遠の相の下に鮮明なイメージとして定着させた画期的な歴史小説。
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Posted by ブクログ
なぜか無性に井上靖が読みたくなり、40年以上前に読んだ本を手にとった。あの時の感動とまた違った風が心の中を駆け抜ける。 8世紀の日本。日本と唐の間の航海は、今では想像もできないほどの苦難があった。しかし、その苦難を乗り越え日本の近代国家成立のために生涯を懸けた留学僧の思いが現代人に深い感動を与える...続きを読む。 圧巻は、業行が、日本に持ち帰るために数十年というか生涯全ての時間をかけ写経した夥しい経典とともに海の藻屑となり沈んでしまう描写だ。業行の人生は一体何だったんだろうか、深く考えさせられる。 救われるのは、日本に無事帰ることができた普照のもとに届いた一つの甍。これが日本に辿りつくことのできなかった留学僧らの形見に見えたことだ。 これを託した人物は不明であるが、唐招提寺の金堂の屋根に鎮座した姿を見た普照は何を思ったことだろう。 この物語のタイトルにある甍。天平時代の甍は、寺院などの隆盛を誇るシンボルを想像する。 これは、日本に唐の高僧を招聘し戒律を施行するという使命を普照に託し、唐の地で果てた栄叡の姿に重なる。 また、業行の叫び声とともに夥しい経巻が潮の中へ転がり落ちていくその一巻一巻がまさに一枚一枚の瓦のようにも見える光景にも重なる。 真に見事なタイトルだと思う。 文庫本で約200ページの小説。こんなにも心を揺さぶられるとは思ってもみなかった。再読して良かった。この小説を読んだ後、心の深さが変わったような気がする。 そうだ、唐招提寺に行ってみよう。天平の甍を感じるために。
本書は8世紀の奈良時代に第九次遣唐使として留学する4人の日本人僧侶を中心にして、後半は6度にもわたる挑戦で訪日をはたす鑑真の物語です。当時の日本人にとっては海外に行くことは命がけで、しかも船はそんなに頻繁に出ていない。無事に唐に渡れても帰ることができるのは何十年後の可能性もあって、帰りも無事に帰れる...続きを読む保証はない。そんな中当時の日本人の中でも外国文化を日本に持ち帰る重要な役割を果たしていたのが僧侶でした。 本書の中では唐に渡る4人の日本人留学僧と、唐で写経をひたすら続けている業行という5人の日本人僧侶が中心になりますが、それぞれの性格が違っていて、自分だったら誰のタイプになるかなと考えさせられました。もちろん訪日を果たした鑑真和上の偉大さはわかるのですが、個人的には無名の日本人留学僧が積み上げてきたもの、あるいは無念となったものが歴史となって日本を形作ってきたと思います。本書は用語が難解なところもかなりありますが、無意識のうちに自分を留学僧の誰かに重ね合わせながら、自分自身が8世紀の奈良および唐にいるような気分になりました。
読みにくかったなぁ。 言葉使いの難しさ、人名の読みにくさ。 文学というより記録文ではないかと思うようなデータの記述。 もう途中で投げ出そうかと一度だけ思った。 不思議なことに一度きりで、そのあとは読みにくいと感じながらも話が普照と鑑真の日本渡来に絞られてくると、多くの身内からさえも白眼視されるその目...続きを読む的を果たすための彼らの命がけの熱意が私にページをめくらせてくれました。 そうか、鑑真が日本に渡って仏教の何たるかを教えたからこそ日本における仏教が本物のものになったのか。 小学校で習ったかなあ? 視力を失った鑑真和上像の写真が思い出されるだけだ。
井上靖の歴史小説として代表的な作品。 井上靖は小説家としての自身の想いや情景を描いたもの、自伝的なものと歴史小説の3つに大別される優れた小説を多数書きました。 歴史小説では、日本を舞台したもの、中国を中心としたものを多く執筆していて、本作は大別するのであれば井上靖の中国歴史モノの代表作であり、氏の作...続きを読む品全体としても代表的な一作です。 氏が芥川賞を受賞したのが1950年の『闘牛』、『天平の甍』は1957年刊行なので、初中期の作品と言えますが、1907年に生まれたため、遅咲きの作家であったといえると思います。 『天平の甍』は天平5年(733年)の遣唐使として唐に渡った若い留学僧たち、とりわけ普照と栄叡を中心とした物語となっています。 仏教はあるにはあるが、課役を逃れるため百姓の出家が流亡しており、法を整備しても歯止めは効かなかった。 また、僧尼の行儀の堕落も甚だしく、社会現象となっており、国は仏教に帰人した者が守るべき規範を必要としていました。 そんな折、白羽の矢が立ったのが4人の留学僧で、普照、栄叡もその4人の内の2人です。 鑒眞(鑑真)の来朝という、古代日本おける歴史的な出来事を実現させるため、荒波に揉まれる僧侶たちの運命を描いた作品となっています。 普照や栄叡は実在の人物で、鑑真来朝における苦難の日々は史実が元になっています。 鑑真という人物や、日本の仏教の起こりは中学社会の教科書でもおなじみですが、その舞台裏にこういった壮大なドラマがあったというのは読んでいて興味深かったです。 東シナ海には激しい海流があり、季節風の知識もない当時、遣唐使の航行は文字通り命がけだったそうです。 船は度々難破し、多くの人が命を落としました。 高僧を連れて帰る指名を帯びた普照たちが鑑真と巡り会えたのも長い年月を経た上でしたが、辿り着けるかもわからないような日本へ連れて帰ることを嫌う弟子の密告等があったりして渡日は難航します。 また、渡日にこぎ着けても、過酷な船旅も何度も死にそうになりながら失敗を繰り返し、体調も崩れてゆく。 それでも、日本へ向かうという強い意思が感じられる、壮絶な歴史ドラマでした。 長い作品ではないですが文体は難しく、読むには骨が折れます。 ただ、登場する僧たちのそれぞれの選択、生き様も多種多様で、楽しんで読み進められました。 特に「業行」という僧の最後は本当に悲痛で、怨詛の声が聞こえてきそうな迫力を感じます。 "凄まじい"という形容詞がピッタリくるような、歴史文学小説でした。
我が国の元祖国費留学生達の使命感と壮絶な人生に圧倒された。若い人、特にこれから留学する人達には是非読んでほしい。 それにしても、鑑真和上の不屈の意志にはただただ頭が下がる。歴史の教科書でサラッと語られている苦難の渡日がこれほどのものだったとは。「偉人の偉さ」を改めて感じることができる良著です。
それぞれの信じた道を進んだ結果が人生だが、その結果は自然や時の流れといった抗いようのないことに大きく影響される。はるか昔に起こった出来事だが、海を隔てて命がけで行き来した遣唐使という特殊な環境だからこそ浮かび上がる人生の真相がある。鑑真という人物に興味をもちながら今まで手にしてこなかった天平の甍であ...続きを読むったが、読み終わった今、改めてそのことに想いを馳せている。時の流れの中に折り重なって刻まれている幾多の物語の結果として今私はここにいるのであるが、きっとこの本に出て来た人たちと同じように流れに飲み込まれながら自分の物語を紡いて時の流れの彼方に消えて行くのだろう。読む人の年代によって捉え方が変わる小説だと思う。
鑑真来日に尽力した留学僧や同時に唐へやって来た僧侶たちの小説 漢字だらけな割に読みやすい 人生色々、皆違って皆いいと感じました
唐招提寺に行く予定があるので、予習。 昔の歴史小説は硬派ですね。 ドラマチックな場面も淡々と、言い方を変えれば無駄なあおりもなく語られていきます。 今の作家ならもっとエンタメに寄せるんじゃないかなと思います。そうなると、文庫本3-4冊分くらいはいくんじゃないでしょうか。そんな内容がおよそ200ペ...続きを読むージに収まっています。エンタメ部分は自分の脳内で膨らませながら読みました。また、中国の人物や地理を調べながらの読書になりました。 そういうことで、短い小説ですが、結構読むのに時間がかかりました。 これで唐招提寺参拝を、小説聖地巡礼として行くことができます。
最初が難しくつらかった。中国×歴史×仏教のどの知識もないから。後半鑑真と日本に渡ろうとするあたりからおもしろくなってきた。 この本は光村の中3の国語の教科書に紹介されているのですが、こんな難しい本読む中3いるでしょうか。
井上靖の作品は、少ししか読んでこなかった。 「しろばんば」が一番最初かな。 歴史ものでは「額田王」と「孔子」。 「孔子」は自分の孔子のイメージの大方を作っている。 それ以来だから、20年近くご無沙汰状態だった。 まず一番印象に残っているのは簡潔な文体。 今の歴史小説を書く作家さんとはどこか違う。 ...続きを読む今の作家さんなら、万葉集などの古典籍を引用するにしても、必ず訳を添えたり、人物や語り手に言い換えさせたりと読者に配慮するだろう。 あるいはそもそもそういうものを引用しないとか。 そういう配慮がまるでないというか、読者もある程度そうしたものを読みこなすだろうという期待があるのか。 すがすがしいまでの簡潔さ。 さて、この小説では第九次遣唐使として唐に渡った僧たちが、鑒真を招来するまでが描かれる。 簡単に言ってしまったが、20年近い年月が描かれる。 何しろ当時の唐への旅は、天候次第。 ただ、この作品では唐へ行くより、日本へ帰る海路の方が大変なような印象を受けたが、実際のところはどうなのだろうか? 同時に唐に渡って普照、栄叡、戒融、玄朗の四人の留学僧たち。 最初は群像劇なのかと思い、そんなに覚えられないぞ、と焦ったが、人物もきっかり書き分けられており、それだけにそれぞれの人物のたどる運命も胸に迫る。 彼らより先に唐に滞在していた業行の写経への没頭ぶりも強烈に印象づけられる。 何を考えているかわからないような仲麻呂の人物像も、登場場面は少ないながらも、妙に頭に残る。 人物像といえば鑒真もまた印象深い。 法を伝えるために日本に行くものはいないか、と弟子たちに尋ね、誰も行くものがいないことを見て取ると、お前たちが行かないならば、自分が行く、と渡日を決断する。 その後の困難はよく知られた通り、だが、一体どうしてそこまでできるのか。 日本に仏教を持ち帰るには、いろいろな方法があったのか、とも初めて気づく。 自分が経典を学ぶだけではなく、鑒真のような高僧を招く方法もあれば、業行のように手に入りうる経典を写すことに専念し、それを持ち帰ることも一つ。 物語ではそれぞれの人の資質により、これらが選び取られていくことになるのだが、国を背負って留学した人々の、自分の人生をかけてできることは何かという問いは、今の私たちには想像もつかない重さがあったのだろう。 (一方では何も持ち帰らない、帰ることもしないという人物たちのことも描いているのも面白いが。) 資料の少ない時代を舞台とするだけに、相当な研究を重ねて書かれた作品のようだ。 難解な仏教用語が多いが、郡司勝義さんによる巻末の注解があり、ありがたい。
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