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Posted by ブクログ
初出1998(平成10)年から2014(平成26)年辺りの作品を収めた短編集。
この作家の本は3冊目だったろうか。グロ趣味が何となく面白いと思っている。
今回は、「インターネット時代の文学」という感じが凄くした。もはや言葉の芸としての文学は、この文学には存在しない。言葉なき文学、とも言える。言葉があるのではなく、幾らかの記号が漂っており、吾々がインターネットを漂うのと同じように、この小説ストリーム上を辿る主体は、言葉ではなくむき出しの記号を求めて漂っている。このとき自己自身はむき出しの<欲望>でしかなくなっている。この作家の場合は「グロテスクなもの」への倒錯的な欲望だけが、存在者を存在させている唯一のものである。その欲望は何やらロジックを発生させることで、そのロジックによってようやく時間を動きき出させる。
人物も光景もほとんど描写されず、人物同士の会話だけでひたすら進む。そしてやっとグロテスクな場面が登場すると、急にそこだけ描写的になる。
このようなむき出しの欲望の主体と、記号だけが散在しそれらのあいだを「何となく」移動してゆくような、ほの暗い世界の底での体験。この在り方は、「ヱヴァンゲリヲン」の世界とも共通しているように感じる。ここは、日本文化が衰退し根源化して到達した、サブカルチャーのなかでしか実現しなかった作品世界なのであろう。
「ヱヴァンゲリヲン」と同様に、このような主体の存在は、私にはひたすら「気持ち悪い」。だが、もはや単なる欲望でしかあり得なくなった哀れな人間の行く末は、気にはなる。
本書を読みながら、そんなギリギリの境地を見るような思いに浸った。
Posted by ブクログ
最初の三編『ショグゴス』『首なし』『兆』がすごくよかったです。
『ショグゴス』寓話的で皮肉の効いたSF短編。南極に現れた謎の海百合型生物と不定形生物。二種の偏った依存関係を否定しながらロボットの人類への奉仕を当たり前とする人類の矛盾。人類側指揮官の倫理感により話が予想外の方向に向かっていくのがすごく面白い。クトゥルフかじってればさらに楽しい。
『首なし』あごから上を失っても生きている男。その世話をしながら愛を注ぐ女性の狂気に美しさすら感じる。
『兆』自殺したはずのクラスメートに付きまとわれる女子中学生。自殺の理由を探るうちに深みにはまっていくフリーライター。日常から異界へと足を踏み外していく怖さを丹念に描く正統派ホラー。複雑な構成が上手いし何より怖い。
『朱雀の池』は、何かのアンソロジーで既読。どうなるんだろうと展開に惹きつけられるものはあるが唐突で後味は悪い。『密やかな趣味』は、目の付け所は面白いけれどグロさ全開で悪趣味すぎてちょっと。『試作品三号』は、SFバトルもの。軽いノリで楽しい。『百舌鳥魔先生のアトリエ』は、これも悪趣味なんですけれど、主人公の驚きと気持ちの変化に同調できる丁寧さがある。当たり前が壊れていく怖さ。
Posted by ブクログ
2015年、30冊目は小林泰三。
今年に入って、『忌憶』『目を擦る女』と読んだが、イマイチ当たってない印象。果たして今回は……?
短編七編収録。今回はランダムに(というか、『兆』は既読なので、最後にとおもったため)よみました。では、極々簡単に内容を……。
「ショグゴス」共生と従属関係の話。ユーモラスな面もある、SF系。
「首なし」近世日本が舞台の猟奇的ヤンデレ話。
「兆」いかにも、小林泰三らしい作品。『ゆがんだ闇』以来、約1年ぶりに読んだが、やはり好き。
「朱雀の池」ドッペルゲンガー(?)な歴史曲解(?)モノ。
「密やかな趣味」ブラックな、だからこそ超絶極まりないスプラッター。
「試作品三号」SF妖怪譚。エヴァのフレーバーも少々。
「百舌鳥魔先生のアトリエ」グロ系小林泰三全開。気味悪くも引き込まれた。
個人的好みとしては、「兆」「百舌鳥魔先生~」「密やかな趣味」「首なし」の順かな。残り三編は横一線。ソレでも★★★★☆評価
Posted by ブクログ
短編七つを収めた一冊なのでそれぞれの感想を述べようと思いましたが、いかんせん文章力がないのでタイトルの作品のみの感想だけ記述します。
泰三節の出てる短編作品の中ではベスト3に入る好きな話。
テーマが『融合』ということと、小林泰三さんという事でファンの方々なら直感的にどういう流れになるのかはワクワクという気持ちと共にわかると思います。未読の方はドキドキしながら世界に浸ってください。
さて融合。セックスや心の繋がりという面以外での(むしろそれを含む)融けて一つに合わさる行為、ある種、究極とも言える。
世間一般でいう普通という単語を使うなら、それは子を産む事に同意する。ただ、この作中では子はいない。普通に擬える為に、妻は融合を欲したのだろう。
これ以上書くとネタバレしそうなのでこの辺で。
他6点の作品も面白いので、是非。
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