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背が低くて鈍いと女を愛する資格もないのか。心は優しいが女性にモテない野呂は悩む。明るく行動的な親友の南条は、野呂が密かに恋する同級生の戸田京子の心を掴んだ。微妙に翳る友情。そして8年が過ぎる。歳月は彼らの人生をどう変えたか。愛と哀しみの十字架を背負った3人の運命を描いた青春ロマン。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
微笑ましくもあり、あまりに哀しくもあり・・・ 喜怒哀楽のバランス・展開が実に絶妙です。 プロローグから第一章への導入はとても印象的。
恋人の突然の死後、善良な恋人の友人と結婚することになった京子。今よりもずっと、シングルマザーやできちゃった婚に対する世間の風当たりが強かった時代。 恋愛小説の形の裏で、全ての人間の心に潜む罪と哀しみを描いたつらい作品です。
どんなに愛されても尽くされても、どうしても嫌悪する。美しい心をもっていても、目をそむけられてしまう。猪首という言葉を初めて知った。
イケメン南条、デブサ野呂、美人な戸田京子の三角関係のお話 遠藤周作が本人の役で出てきて、若者から請われてトンデモな恋愛指南(唐辛子作戦とかヤキモチ作戦とか)をしてたりする こんな設定は現代のラノベに通じるものもあるし、前半は男女の機微を知らない若者をからかい半分にいじる周作先生のキャラがユーモラス...続きを読むに感じる でも、中盤から描かれてあるのは運命に翻弄される若者たちの姿 何というか、もっとどうにかならなかったのかなぁと思わざるを得ない 南条はまぁ一般的な感覚を持っているのであろう 時として軽率だけども、若者ゆえのこらえ性のなさと見ればまぁ許せなくもない ただ、その行為が後にどんな結末をもたらすかを微塵も考えなかったのかという憤りも同時に感じるけどね 戸田京子は当時の倫理観からしたらまぁ真っ当な判断をしたのかもしれないけど 最後の選択に関してはなぁ… 結局は自分本位だし、その前の選択のミスにより自分の後の道を狭めた自業自得とも言える姿が哀れ 本気で一途なら世間体なんか考えずに一人でという選択をすべき、そして一回決めたことならそれをやり遂げるべきだと思うよ ま、そのときの心理状況からそんな冷静な判断はできないというのもよくわかるけどね そして問題は野呂くん 現代は野呂くんみたいな子が増えてるのではなかろうか 自分の気持ちよりも好きな相手の事を第一に考える姿勢は好感が持てる ただ第三者的にはそう見えるだけで、当事者同士からしたら全く共感は得られないだろうけどね 多分、野呂くんが結婚しなければ死ななかったのではないかと思う この中で一番のエゴイストは野呂くん 表向きは相手のための自己犠牲に見えるかもしれないけど、自分の欲望に一番忠実に行動してるよね 世間的には善良に見えるのかもしれない ただ、その善良さは醜い人を傷つける事にもなる この「善良さ」の使い方は江國香織もやってる 「きらきらひかる」の睦月とか「間宮兄弟」の明信とか だからこそ一番共感するのは野呂くんなんだよなぁ そんな善良な人になってみたいものだ
誰も幸せにならない、でも心に染みる、とまらなくなる。 だけどそこかしこにいろんな形の愛が描かれていて、読み終わるとじーんとする。
遠藤周作さんの作品は、必ずその根底に愛があって、細部細部に現れる憎しみ嫉妬裏切り…の中にも愛が感じられます。読んでいて安心できる、そして何だか救われる作品たちです。 作中の、南条も京子も野呂もそれぞれの若い時代を精一杯生きています。読み終えて最後にわかったことは、野呂に対する南条の愛でした。
それぞれの立場に立って考えると、言い分もあって世の中うまく行かないなと思いました。 南条は自分の気持ちにまっすぐに生きただけだし。京子は周りに流されながらも、運命のいたずらで自分の思いとは違う方向に行ってしまう。野呂は大切な人大切にしたがために、生き残り思い出とともに、苦しみの中で生きていくしかない...続きを読む。 切ない話です。
なんか見事なほど誰も幸せになれなかった。切ないっていうのとはちょっと違う気がしました。 初めて読んだのが高校の時だったからずいぶん前の話なんだけど、今さらながらにこの作品が自分が生まれるより前に出版された作品だってことに気づきました。 もちろん昭和の香りが漂いまくっているんだけど、そんなに時代を感じ...続きを読むさせないです。人の心ってどんな時代でも一緒なんだろうなと思いました。好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い、綺麗なものは綺麗なんです。 京子の“野呂が生理的に受け付けない”って気持ちがよく分かるんです。小鳥が死ぬときの目が一番好きなんです、なんて言える人間は暗いし気持ち悪いです。死に際を見守る野呂は優しいのかもしれません。でもその優しさが暗すぎる。それは女性に向ける優しさではないと思いました。 正直野呂は優しい人間というより、ただの鈍くさい奴に見えました。 あのタイミングで京子の前に現れて、結局京子の気持ちも考えずに自分の意見を通し切りました。考えずにというより想像もつかないんでしょうね。周りから見たら貧乏くじを引いたのに愛する女性に尽くす優しい男なのかもしれません。京子が望んだのはそんなことじゃなかったのに。切ないというよりやりきれないって感じかな。
カテゴリでエッセイとしているけどエッセイでもない。遠藤周作が小説家と教師という二足のワラジを履いていた頃に知り合った男子学生にスポットをあてて書いたエッセイ風の小説か、小説風のエッセイか……どちらかわからないけれど、とても好きな文章で何度も読んだ。
「若きウェルテルの悩み」の激しさと「車輪の下」の暗さを併せ持ったような色合いの作品。さらば、夏の光よ。
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