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日本の自動車産業は、製品の品質、世界市場でのシェアなど現在も世界トップレベルにある。またカンバン方式、TQCなど日本発の生産システムが「グローバルスタンダード」となっている。これほど国際競争力があるのはなぜなのか。その強さの秘密に、企業が生産・開発現場で総合的な実力を競いあう「能力構築競争」という観点から迫り、長期不況下にあって自信喪失に陥っている日本企業の再生に向け、明確な指針を提示する。
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Posted by ブクログ
能力構築競争 日本の自動車産業はなぜ強いのか 著:藤本 隆宏 中公新書 1700 良書 生産性が戦前GMの10分の1しかなかったトヨタが20世紀末に世界でもっとも生産性の高い自動車会社になぜなり得たか 能力構築競争とは、スキルをいかにに早く身につけるかと言う意味ではないです 組織能力とは、生産...続きを読む企業経営の質をあらわす概念であり、能力構築競争とは、企業が経営の質を高めるために切磋琢磨することであると定義する 過剰品質は、悪でなく、含み資産であるとの言、納得感がありました。 単なるQCDの追究ではなく、組織全体の能力向上を図る総合的な試みであることを本書は主張する 気になったのは以下です 販売の現場からみた競争力 4P ①製品(Product) 、②価格(Price) 、③広告(Promotion) 、④販売チャネル (Place) もの造りの現場からみた競争力 QCD ①品質 (Quality) 、②コスト(Cost) 、③納期(Delivery) 品質 総合品質 設計品質、製造品質 適合品質があり、過剰品質がある 競争には2つあり 深層レベルの競争 能力構築競争 組織のルーチンの体系、生産性、生産リードタイム、適合品質、開発リードタイム 表層レベルの競争 QCD 製品内容の訴求力、広告内容の訴求力、利益、パフォーマンス 創発プロセス あるシステムで必ずしも意図されない形で複雑に変化すること、能力構築競争は、創発的なプロセスであるといえる 能力構築競争は、生物的進化論と似ている、いわば、企業組織の進化論である ①進化論は、システムの安定と変化、連続性と不連続性を同時に説明しようとする 変化しにくい性質を持つシステムがそれでもたまには変化する ②進化論は、合理的で複雑なシステムの存在理由を説明しようとする ③システムが今の形に変化してきた原因の説明と、変化の結果生じた新システムの事後的な合理的な説明を別々に考える 進化論とは、変異⇒淘汰⇒保持、という3段階の説明ロジックからなるモデルである 組織能力とは、三段階からなる ①ルーチン的なもの造り能力:同じ製品を競争相手より、低いコスト、高い品質、短い納期で供給し続けることである(QCD) ②ルーチン的な改善能力:生産性・品質・納期などの深層の競争力を繰り返し着実に向上させていく能力 ③能力構築能力:2つのルーチン的な組織能力そのものを、ライバルより速く構築する能力⇒進化能力とも呼べる 過剰品質とは、悪いことばかりではない。いわば含み資産としての価値が、国内自動車メーカーに幸運をもたらした 製品のアーキテクチャーとは、モジューラ型か、インテグラル型か。あるいはオープン型か、クローズ型かの違いがある 品質のつくりこみ 製品設計⇒工程設計⇒工程⇒成否んというプロセスで情報転写が物理的にできないようなポカヨケを制度で防ぐこと、これを品質を作り込むという 一括外注 詳細設計ごと外注する承認図方式、無検査納入は、部品企業の成長を促し、長期的にまとめ能力を蓄積することで、コストダウンや品質向上を達成することができるようになる ジャストインタイム:在庫の削減 工程を不用意に分割すると、生産ロットがまとまらないと加工に着手できなくなるため、工程間の仕掛品在庫は非常におおくなる 多工程もち、多能工により、生産性は向上した。そのために、作業を標準化し、標準作業のマニュアル化をおこなった 世界を席巻したアメリカ式多量生産方式が失速しはじめた一因が、過剰専門化であったことはいまや定説である 品質管理 TQC,QCサークル、TQM 過剰品質を出発点として、設計の簡素化によるコストダウンが行われた⇒設計の簡素化運動 ①部品の共通化 ②プラットフォームの統合 ③モデルチェンジサイクルの延長 ④過剰設計の修正 フロントローディングとは 開発の初期(フロント)にyほり多くの仕込みを行うことにより、開発後半の問題解決負荷を大幅に減らし、全体の期間短縮をするという開発手法である より上流で、問題をつぶすことにより、下流の負荷や時間を極力減らそうという考え方である IT(情報技術)LT(リードタイム)パラドックス 先端的な情報技術をもつことは、開発期間短縮競争に勝つための必要条件であるが、十分条件ではない IT時代であったも、脳お力構築競争の基本はかわっていない そして、それは、地道な、統合型組織能力の構築と改善をいう 組み立て自動化 FMC,FMS,FA,CIM,そして、三次元統合の、CAD,CAM,CAE 現代の統合化もの造りシステムは、たんなる、リーン生産方式ではない 競争力アップと両立する形で、他の利害関係者とのバランスをとる企業システムであり、「バランス型リーン方式」と呼ばれている 目次 序章 もの造り現場からの産業論 第1章 自動車産業における競争の本質 第2章 能力構築競争とは何か 第3章 なぜ自動車では強かったのか 第4章 もの造り組織能力の解剖学 第5章 能力構築の軌跡―二十世紀後半の自動車産業 第6章 創発的な能力構築の論理 第7章 紛争―脇役としての貿易摩擦 第8章 協調―競争を補完する提携ネットワーク 第9章 欧米の追い上げと日本の軌道修正 第10章 能力構築競争は続く ISBN:9784121017000 出版社:中央公論新社 判型:新書 ページ数:412ページ 定価:960円(本体) 2003年06月25日初版 2003年08月15日3版
トヨタの「マニュファクチャラーとしての能力」がいかに優れているか、それがどのようにして構築されてきたのかについて非常に深い考察を重ねる。この能力は、創発的なアプローチのたまものであり、能力を構築する能力の高さに帰着できることを喝破。非常に参考になる。製造業のマネージーのみならず、すべてのビジネスマン...続きを読むへ。
ある会社の「人だけ」総入れ替えしたとする。昨日までの会社と、入れ替えてからの会社は、同じように操業できるだろうか。設備やマニュアル、制度はあっても、そこに対する熟練、人が保有するノウハウがない。作業標準があれば、手探りでもある程度現場は動くだろうが、外殻だけあってもやはり会社が今まで通り、機能すると...続きを読むは言えない。これは若干、ドラゴンボールのギニュー隊長がその技により悟空の身体と「チェンジ」したが、肉体と精神が一致せず、力を発揮できなかったという現象に似ている。 企業の業績を左右するのは景気や外部環境もあるから、一時の経営不振で、即その企業が弱い、とはならない。業績の波を超えながら、企業は経験を組織に取り込みながら能力を構築しているものだというのが本書。上述は、その能力が宿るのは、肉体か精神かを私が勝手に妄想したもの。 例えば、会社で働く全ての人が、逆に全く別の会社を立ち上げたならば、今までと似たような会社を作る事はできる。しかし、人だけ変わった今までのA社、新しく立ち上げたB社はどちらが強いだろうか。 強さは人に付随する。しかし、それはジワジワと会社の仕組みに組み込まれていく。自動車産業に関して、私はまだA社が勝つのではと思う。つまり、系列も販売店もブランドも同じで、従来通りのモノづくりが可能ならば、消費者は、A社の商品を買わない理由があまりない。 つまり、日本の自動車産業が何故強いか、これは、築き上げてきたブランドによるのだが、そのブランドを磨き上げる組織の日々の向上心が機能していて、それによる積み重ねだと言える。 その中で、古いのだが「リエンジニアリング」という考え方が重要なポイントの一つだと思った。 ー アダム・スミス以来、分業は生産性向上をもたらすとされてきたが、二十世紀の教訓は「過ぎたるは及ばざるがごとし」、つまり過剰分業の弊害であった。専門化の論理を武器に二十世紀前半、世界経済を席巻したアメリカ式大量生産方式が二十世紀後半になって失速しはじめた一因が過剰専門化であったことは、いまや定説といえる。労働者の作業や生産設備を細かく専門化しすぎたために、生産システムが硬直化し、調整コストやムダが発生し、コスト・品質面の競争力を低下させた、ということである。しかし、戦後日本の自動車企業などの生産現場では、そうした過剰分業的制度の導入が抑制され、むしろ幅広い職務区分、多能工育成、多工程持ちなどの組織ルーチンが定着し、競争力を支えてきたわけである。一九九〇年代に一時流行したアメリカ発の「リエンジニアリング」は、過剰分業を回避すべきことを正しく指摘していたが、日本の生産現場ではこのことは理論なき実践として長く定着していたのである。しかし、日本メーカーははじめから国際競争力の向上を目的として、意図的に過剰分業を回避してきたのだろうか。そうともいえない側面がある。むしろ、国内市場が成長していくなかで、生産現場が恒常的に「猫の手も借りたい」状況に置かれていたため、欧米量産企業のように細分化された職務区分を工場に持ち込みたくてもその機会がなく、幅広い職務配分とせざるをえなかった、という状況が頻繁に観察される。 ー 社長が送り込まれたことによって「事実上傘下に入った」とみる向きもあるが、むしろ「能カ補完型の提携」とみることも可能だ。そもそも、オペレーション能力で世界をリードする日本企業は、その「もの造り能力」を海外拠点に適用する「トランスプラント戦略」を柱にグローバル化を進め、またその開発力を使って高級車分野への多角化を図るという、欧米企業とは異なるオペレーション主導の展開をみせてきた。しかし、バブル経済崩壊後の一九九〇年代、戦略構想能力の弱さが一部企業で顕在化し、マツダ、日産、三菱などが財務的に苦境に陥ったそこに目をつけたのが、資力と戦略構想力で優る一部の欧米企業であり、これら日本企業との包括的資本提携を果たした。これを、欧米企業の地域補完的な対アジア戦略とみることもできるが、「組織能力補完型」の提携とみることもできる。すなわち、社長送り込みによって、日本企業の戦略構想能力の弱点を短期集中的に強化し、また資本注入によって財務的体力を回復させる一方、依然として強い日本企薬の製造・開発能力は徹底的に活用する、というものである。 考えさせられるし、勉強になる本。
「日本の自動車産業は、なぜこれほどまでに強いのだろうか?」以前から、私の頭の片隅に漠然と存在していた疑問が、本書を読むことで氷解した。 本書は、わが国の自動車産業が、国際競争でもトップレベルを維持し続け、なぜ世界シェア30%を占めるまでに至ったのか、そして、なぜ21世紀に入った現在も最高益を更新...続きを読むし続けているのかについて、主にトヨタ自動車をケースとして取り上げ、「もの造り経営学」の視点から競争の本質について分析した、興味深い書である。 著者は、能力構築競争とは、「企業が経営の質を高めるために切磋琢磨し、組織能力を改善することによって深層の競争力レベルで競い合うこと」だと定義し、企業・産業の長期的な発展パターンを、この「能力構築競争」という視点から分析している。 著者はこの視点を軸に、自動車企業の長期的反映の重要な要件として、①顧客や株主を満足させることのみでなく労働者に人気があること、②地域社会への貢献が認められていること、③サプライヤーと長期的に共存共栄できることを要件とし、従ってこの用件を満たすことにより、わが国の自動車産業は強さを誇ってきたと述べている。 そこで私は、今日の競争力の形成にあたって必要な条件として、企業の社会的責任(CSR)の徹底を、④として提案したい。なぜならば(①~③にも当然含まれていると思うが)、現代企業に求められる社会的な責任は、従来の経済的あるいは法的な企業の責任を大きく超えた概念にまで広がっているからである。特に欧米を中心として、CSRは広く浸透しており、社会的責任投資というスタイルまで確立されている。CSRは競争力強化のためには、もはや不可欠の要素となっている。 つまり、「法令順守やコーポレートガバナンスなど、倫理面や経済性への配慮」を含めた①~④が競争力の重要なポイントになる。その結果として、「リスク・マネジメントの強化」、「ブランド価値の向上」、「優秀な人材の確保」、「市場からの評価」といった企業の長期的な安定性や成長性のための要件が確保されるのではないかと考える。 また、本書では、自動車産業の光のあたる部分だけでなく、もの造り能力と戦略能力のアンバランスなど、能力構築競争によって生じた影の部分にも触れており、製造業の現状分析として、誠実に向き合っている。 以前、トヨタ自動車のグループ企業に勤務していた私にとって、「QC」「かんばん方式」などは日常的に実践していたことであり、本書の内容は、非常に身近に感じることができた。実際、トヨタ企業では、製造ラインは勿論、情報システムや経理、営業に至るまで、品質向上や環境対策などの「カイゼン」意識が従業員に広く浸透している。その意味においては、現場において競争力は今現在も常に向上しているのである。 「もの造り」は平成不況とともに評価は低くなり、悲観論がささやかれてきたが、実は自動車産業においては、いまだ競争力は強さを維持し続けていることが、本書を読むことによって理解できた。企業にとっては、業種・規模を問わず、「深層の競争力レベル」の維持・向上が、共通、しかも今日的な課題になっているのではないだろうか。その解決のためのヒントが、本書では述べられていると思う。
日本のもの造り産業における企業の組織能力に関する1冊。自動車産業を例にしており、とても分かりやすかった。 日本のもの造り(特に自動車産業)では深層の競争力が高く、すり合せ製品と日本の組織能力はとても相性がよい。深層の競争力とは、顧客が目で見て評価しにくいものである。例えば、開発リードタイム、生産性な...続きを読むど。藤本氏は競争を表層の競争力と深層の競争力とに分けられると考えている。表層の競争力は収益につながる。しかし、表層の競争力は深層の競争力によって実現し、高い企業組織能力があって、高い深層の競争力を実現できる。日本の高い組織能力の例として、フロントローディングなどがあげられていた。だが、過剰な能力構築だといわれるようなこともあり、確かにそうだとも言える。しかし、もの造りにおいて、組織能力を構築することが大切。それを活かす戦略に日本は弱さを持っており、欧米などを手本に見習う必要があると藤本氏は指摘。 深層の競争力が強くなったことを過去の歴史と共に説明していて、とても分かりやすかった。創発によって企業の組織能力は高められるが、それは必ずしも意図した経路からは生み出されない。結果的によかったといった事後的に合理的なこともある。どのプロセスをたどろうが、進化しようとする意志がなければ、組織能力は高まらないと思った。これは日常生活でも同じように感じる。運がいいとか悪いとか関係なく、そのときのチャンスをものにするのは日々の努力。運を引き寄せる努力を日常からすべきだと感じた。
日本の競争力を考えるうえで外せない本。「自動車産業は他の産業と、どこが、なぜ違っていたのか」とう問題意識にこだわり索引まで含め406頁も新書であります。
会社で上司に渡された本 日本の自動車産業における競争力の源泉を「表層」「深層」に区別し解説 業務においても非常にためになった
今日のトヨタをはじめとした日本の自動車メーカのものづくりが世界で 通用しているのかを過程に基づき説明し、将来も競争に負けない 自動車産業の目指す姿、他の製造業にも応用できる事柄を説明した本。 アメリカの自動車に依存してきた日本の自動車生産から日本独自の自動車 生産に進化したのは、QCD+F(プラ...続きを読むットフォーム共通化等による生産柔軟性)を 粘り強く・しぶとく磨き上げていることが一番大きな要因と語る(p.15)。 能力構築競争とは、企業が経営の質を高めるために切磋琢磨することと定義している。 上記の結論はタイトルを反映した内容となっており、筋の通った本だと考えられる。 本書では以下7つの問題を設定し、筆者の考えを述べている。 1.競争力の本質は? →統合的なバランス力 2.なぜ自動車産業が注目されるのか? →様々な部門のすり合わせによるつくられる製品ゆえ 3.競争力がつくまでの過程は? →当事者が予期せぬ問題を地道に解決するサイクルを回した 4.外部要因が与えた影響は? →早期問題発見による早期解決(フロントローディイング)、為替差損による海外企業に対するビハインドを危機感として能力構築を地道に行った。 5.競合が追いつけないのは? →日本のシステムを解読するのに時間がかかっている。 6.弱点とその克服について →Q向上による過剰設計が課題であったが、簡素設計を意識し克服。 7.利益を上げるには? →利益確保の長期戦略のイメージが課題 <参考になった部分> ・製品の認知度が上がったときにユーザはトータルバランス、ユーザが使う環境下での 導入のしやすさで製品の価値を考える。(p.56) ・ものづくりは設計情報の転写の繰り返し。転写がうまくできれば開発期間の短縮・生産 リードタイムの短縮化がはかれる。(p.85) ・生産性の向上は各工程ごとにスピードアップを図ることを意識(海外メーカ)よりも ものができあがるまでのトータル時間を短くする(トヨタの視点)が大事。(p.116) ・開発は重量級PMが製品コンセプトを創造し、それに沿って各部門が動き ものを作り上げてきた。強いPMが製品の全ての責任を負うシステムが結果を挙げている。(p.120) ・新規市場開拓は早いうちに初期開発品を市場投入し、市場を把握しイメージを作る。 次に開発品の質を高めつつ、ラインナップをそろえることを限られたコストで実行する。(p.122) ・改善活動は上に提案される前に、事前検証を行いデータもそろえた状態で提案されることがトヨタでは徹底されている(p.135) → 他者の説得はデータに基づいて行われる。 ・新規産業創出のための開発:ティアダウン→試作→国内部品の作りこみ→国内産業の活性化(p.147) ・関連技術保有技術者の採用による強い開発体制づくり(p.192) ・コモディティー化:製品の差異化が図れず、価格勝負しかない状況(p.260) ・世界規模の産業創出は1企業だけでは難しい。関連企業や国も巻き込む(p.262) ・マツダのユーノスロードスターは1人のPMが開発を始めた所から大ヒットを生むに至る(p.321) <さらなる疑問> 生産計画に修正があった時、ジャストインタイムは崩れないのか?
この論考。誤った使われ方をしてしまった。擦り合わせ型のアーキテクチャ礼賛に使われた。これは間違い。 モジュラー型の威力を強調すべきであった。
日本のもの造りがこの一冊でわかる。 今や中国で安い労働力を使い、安く物を造れる時代。 そんな中、日本はこれからどの方向に行けば良いのか?この一冊に全て凝縮されている。 世界をも誇る日本のもの造りをこの一冊で感じとってもらいたい。
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