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〔日本推理作家協会賞受賞作〕全世界の芸術品が収められた衛星軌道上の巨大博物館〈アフロディーテ〉。そこでは、データベース・コンピュータに直接接続した学芸員たちが、日々搬入されるいわく付きの物品に対処するなかで、芸術にこめられた人びとの想いに触れていた。切なさの名手が描く美をめぐる9つの物語
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Posted by ブクログ
2からSFマガジンで読んでいたが、1も1で面白い。こういう、進歩した世界における人の営みに重きをおいて書かれた作品はすごく好きだ。
1つ1つで起承転結がありつつも、全体として大きな物語を描き出すような形だともっと好みだが、本作は1編の完成度が高く、様々な趣向が凝らされているのでそうでなくとも面白い。後ろの3つは結構しっかり繋がりもあって良かった。
思わず唸るようなトリックがあるわけではないが、ミステリを書かれる作家ということもあって、推理小説風味の話の進行は興味深い。多岐に渡る題材からは、美術への深い造詣が伺える。専門用語が多く、想像力の及ばない箇所もままあるが、十分楽しめた。
キャラクターは魅力に富んでいるし、丁寧な心情描写が胸に響いた。以下、各話の簡単な印象。
1話は若干の物足りなさを感じた。
2話は普通。
3話は言葉遊びに重点を置かれて面白い。
4話はこれまでとは毛色が違っており、ミステリ風味は控えめながら、好みな味わい。
5話はめっちゃいい。こういう細かな問題を扱う話は好き。攻殻の新劇場版を若干彷彿とさせる。
6話は題材が好き。
7話はテクニカルな感じ。
8話は図表があるともっと良かった。
9話は非常に良かった。とりわけキャラクターが魅力的。
Posted by ブクログ
既知世界における「見物する」の目的語をジャンルをこえほぼすべて網羅する遠未来の博物館惑星を舞台に、学芸員・田代孝弘が出会う事件を描いた連作。
人に頼られたらむげにはできない優しく苦労性の主人公・孝弘のてんてこまいっぷりに笑ったり、「過渡期の技術」の一言で忘れ去られた往年の先輩に対し
「可哀想だって思うことと、哀れに思うことって、違うわよね」
と胸中を吐露するネネに切なくなったり、データベースと直接接続する学芸員の特権に酔い痴れて「反省?なんですかそれ?僕エリートだし」といわんばかりに幼稚なマシューに心底むかついたりと魅力的かつ個性的なキャラクターにはすんなり感情移入できる。
どこの職場にもある上司や同僚との軋轢や人の話を聞かない困ったちゃんの後輩など丁寧に描かれる人間関係の機微が固くなりがちな芸術論の緩衝材となり華々しくアカデミックな会話に絶妙のユーモアを添える。
中でも「ラブ・ソング」は秀逸。
ラストシーンの美しさは圧巻。
芸術を難解に語る言葉をもたない妻が漏らすたった一言の「綺麗ね」を軽んじていたと主人公が猛省する場面に思わず貰い泣き……
主人公の美は対象物以外を夾雑物として除く峻厳な美。
妻・美和子の美は対象物以外のものをも含み全体を成す豊穣な美。
だからこそ主人公は美術品の鑑賞中に隣にいる妻を忘れ
美しいものに接した妻は「愛する人とこれを見たい」と望む。
「貴方みたいに上手く説明できないけど、とても綺麗ね」
抱擁する手は包容する心。
美しいものを美しいと素直に感じる心があり、愛する人が隣にいれば、世界はきっと美しい。
愛することとは互いに見つめあうことではなく同じ方向を見ることだ。
ラストシーンの二人にその言葉を捧げたい。
Posted by ブクログ
終始きれいな穏やかな物語だった!
SFだと聞いて読み進め、あれ?ミステリ要素強め??とちょっと戸惑いました。
切羽詰まった感じはなく、日常系のような優しい物語が続きます。
美しい風景がほわ~んと頭に浮かんでくる素敵な小説です。
感嘆詞として形容詞を使っちゃう美和子さん、わたしも同じタイプなのでよくわかります。美術館に行くのは好きだけど、作品たちから何を感じとればいいの!?少し焦る感覚もありました。そんな気を張らずにもっと心から作品に身を委ねるだけで良かったのか〜と感じました。
もう何年も美術館に行けてないけど、また落ち着いたら行きたいなあ〜
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