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一九三二年三月、中国東北地方に忽然と出現し、わずか一三年五ヵ月後に姿を消した国家、満洲国。今日なおその影を色濃く残す満洲国とは何だったのか。在満蒙各民族の楽土を目指すユートピアか、国民なき兵営国家なのか。本書は、満洲国の肖像をギリシア神話の怪獣キメラに譬えることによって、建国の背景、国家理念、統治機構の特色を明らかにし、近代日本の国家観、民族観、そしてアジア観を問い直す試みである。吉野作造賞受賞。
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Posted by ブクログ
王道楽土の建設の夢も歪み、占領政策化した満洲国の肖像を省みる。ロシアのウクライナ侵攻に合わせて、ロシアの主張と蛮行がもたらしているものが、私たちの歴史と無縁でないことを、今だからこそ思う。
京都大学人文科学研究所教授(近代日本政治史)の山室信一(1951-)による「満洲国」の成立と変容。 【構成】 序章 満洲国へのまなざし 第1章日本の活くる唯一の途-関東軍・満蒙領有論の射程 第2章在満各民族の楽土たらしむ-新国家建設工作と建国理念の模索 第3章世界政治の模範となさんとす-道義立国の...続きを読む大旆と満洲国政治の形成 第4章経邦の長策は常に日本帝国と協力同心-王道楽土の蹉跌と日満一体化の道程 終章 キメラ-その実相と幻像 驚愕の歴史研究である。 「満洲国」と呼ばれる国は、わずか12年の間しかこの世に存在していなかった。にも関わらず、その実相についてある日本人は王道楽土を追求した理想郷といい、ある中国人は傀儡の「偽満洲国」であるという。 本書は、その満洲国を「頭が獅子、胴が羊、尾が龍という怪物キメラと想定してみたい。獅子は関東軍、羊は天皇制国家、龍は中国皇帝および近代中国にそれぞれ比」して、その胚胎していた要素が刻々と変化しながら表層に浮かび上がる様を記している。 明治の山縣以来、国家の利益線が主張されてきたが、第一次大戦後の満洲における軍閥割拠・反日運動激化への相乗効果として関東軍が肥大化した。そして、そのために内地の人口問題、食糧不足、朝鮮経営の安定化、そして来るべき大国との経済・軍事的競争に打ち克つために、広大な満洲を手中に収めることが必須と妄想されるようになった。 満洲事変は林銑十郎司令官隷下の朝鮮軍が越境したことにより軍事的成功を収めたことはまさにこの欲望を充足するためである。 そのような剥き出しの欲望とともに、蒋介石政権や馬賊の抑圧から満洲人民を解放し、日漢満鮮蒙の民族が相和す五族協和・王道楽土を満洲の地に築こうという理念も1920年代末から生起した。多数ではないが、満洲在住の漢人・満人の一部も満人の開放・独立を志向ししていた。 石原完爾・板垣征四郎が主導し純軍事的な行動であった満洲事変ではあったが、その裏には満洲独立を彩る道義的な理念がなかったわけではなかったことを第2章は示している。それ故に、ラストエンペラーであった愛真覚羅溥儀を執政として迎え、翌年には工程として即位させることがその理念実現には不可欠であった。 しかしながら、できあがった満洲国は総務庁を中心とした日系優位が貫徹した組織であり、重要ポストにおける日満比率は次第に日本側に傾斜し、建国時の理念を唱えた満人・漢人たちはことごとく排斥されていく。溥儀を補弼すべき国務総理大臣ですら、有能でもない、日本語も解さない人物が補せられ、全くの骨抜きとなっていく。無論その実験を握るのは関東軍司令官であった。 そして王道と唱えた、建国理念すらも日満一体の名の下に、八紘一宇という皇道に吸収され、皮相すら消え失せた。 五族協和といいながら、満人・漢人を徹底的に侮蔑し、労働力として駆り出し、収奪した作物を内地へ移入して満洲には還元せずに吸い上げていく。一方で、理想国家・計画経済の実験場としての満洲国に数多くの日本人テクノクラートが入り、辣腕をふるった。皮肉なことに、それを模倣した高度国防国家・国家総動員体制という名の下に、内地の日本に照射される。日本人が歴史上手にした最もエゴイスティックな国制が満洲国だったと言えるだろう。 その国家がソ連の侵攻により最期を迎える時、搾取の対象であった満人・漢人だけでなく、大号令をかけて内地から移民させた日本人農民すらも遺棄して国家中枢である関東軍首脳は逃亡した。 雲散霧消した国家の後に残るは、理想的な都市計画によって築かれた都市部の壮麗な建築物、あとは蹂躙された戦死者の遺体、遺された未亡人・子ども、シベリアに抑留された兵士、そして恨みの記憶であったろう。 文学的とも言える文章によって紡がれたこのどす暗い歴史。 思想史であり、政治史であり、社会史でもある。歴史学が総合的な学問であることを思い知らされる。 一つになりそうもないテーマを著者の実力で何とかまとめあげた、そんな印象を受ける。 何にせよ、新書か単行本かを問わず、「満洲国」を知る上で避けられない文献であり、時代を経ても読み継がれる古典となる一書である。
「昭和の戦争だって、満州から撤退すればいいのに、できなかった。『原発を失ったら経済成長できない』と経済界は言うけど、そんなことないね。昔も『満州は日本の生命線』と言ったけど、満州を失ったって日本は発展したじゃないか」 と、小泉純一郎元首相は脱原発に転じて言った。 1929年に「満蒙問題の解決は、日...続きを読む本の活くる唯一の途なり」と言ったのは石原莞爾。しかし、満州国建国がなぜわが国にとって経済的救世主たりうるのか、そしてなぜ満蒙が起死回生の新天地と目されたのか、それは確固たる裏づけに基づいての展望ではない。単なる希望的観測にすぎなかった。そうした過剰な期待が吐露されたのは、世界恐慌に巻き込まれ、冷害や凶作に追い討ちをかけられてどん底にあった日本経済がその突破口として満州国に求めざるをえなかった。1931年には窮迫した農村で娘の身売りが続出して娘地獄と呼ばれる事態が起きた。東大法学部の就職率も26%と史上最低を記録。このような社会情勢のなかで、絶望と閉塞感の裏返しが満州国への希望となり、それが「満州へ!」という満州国ブームを沸騰させていった。 当時の日本青年は、満州の地に民族協和する理想国家を建設しようと情熱を燃やして満州国に馳せ参じた。そして国づくりに精魂を傾けた。 ライフネット出口会長の推薦書。
加藤陽子 満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)からの展開 満洲国についての概説書として、満洲国の国制や建国の流れ、その根底にあった思想について網羅しつつ、一方で掛け声ばかりの民族協和とその実態がもたらした不条理について迫力を持って描いている。 満洲国初心者としては非常に...続きを読む読みやすかったし、物語的にも非常に興味深く読むことができた。 一方でかなり筆者の満洲国に対するものの見方という点においては、満洲国の二律背反的な部分を認めながらも、基本的には批判的な立場をとっているため、一般的には十分に中立的だと思うが、読む人が読めば受け入れられ難いかもしれない。 少なくとも読んでいて胸がすくような本ではなく、読めば読むほどもやもやする本なので。
まず初めに、新書レベルとしてはかなり専門的な内容であり、大学受験程度の知識を持っている人間でも予備知識なしに読むのは難しい。巻末の増補解説がかなり分かりやすいのでまずはそちらを読むことをすすめる。本編は学術的でありながらも(良くも悪くも)感情の起伏に富む面もあるが、増補解説についてはかなり冷静な分析...続きを読むがなされているので、そういう意味でも増補解説から読んでもらいたい。 その上でこの本は満洲国がどのような実体を持つ国家体であったのかについて非常に示唆に富む内容である。一部に関して被害者側に重きを置いている感はあるが、それは仕方のないことであろう。 満洲国がなぜ傀儡政権と言われたのか、その実情がどのように変容していったのか、日本に与えた影響などを細かに分析し、「キメラ」と言う1単語に集約させている。学術論文にかなり近い内容でありながら小説のようなテーマ性を持たせた筆者の力には舌を巻く。 日本史、中国史では聞き慣れない人名が多く、読み進めるのに苦労するとは思うが、後半になればなるほど「キメラ」という言葉に向かって綺麗に収束されていくので是非読み進めてほしい。
満州国は、おかしな国家である。日本は自国の権益を保持するため、満州を中国本土から切り離したかった。そのために満州を独立させた。これは外国が認めるかは別問題であるが、帝国主義的な戦略としては成り立つだろう。しかし、溥儀を担ぎ出すことは理解できない。 満州の住民の大部分は中国人であり、満州族の国ではな...続きを読むい。溥儀も満州在住の満州族の指導者ではなく、中国全土の皇帝であった。溥儀を担ぎ出せば、中国から分離した満州国の論理が苦しくなる。むしろ、独立国の指導者として担ぐならば東北の軍閥の張作霖だろう。ところが、関東軍は張作霖を謀殺した。滅茶苦茶である。
満洲国の肖像をギリシア神話の怪獣キメラになぞらえて描くことで、その建国の背景、国家理念、統治機構などの特色を明らかにし、そこに表れた近代日本の国家観察や民族観、アジア観を抉り出している。 新書だが重厚で説得力のある内容。満洲国の理念として語られてきた「民族協和」「順天安民」「王道楽土」といったスロー...続きを読むガンが、(当初それらを本気で信じて取り組んでいた人々が一部いたとしても)総体として口先だけの欺瞞に過ぎなかったということがよく理解できた。「満洲国にも良い側面があった」などという言説で目を背けてはいけない近代日本の醜悪な側面が凝縮されていると感じた。著者が指摘するように、満洲国崩壊時の中国人学生が語った「善意がいかようにあれ、満洲国の実質」は「帝国主義日本のカイライ政権のほかのなにものでもなかった」という言葉に尽きていると思う。
当時の文書を徹底的に掘り起こした本格的論文。よく新書で出版したなという感じ。 読んで改めて思うのは、列強の圧迫の中で生き残る、という日本なりの言い分はあったとしても、満州への日本の進出は当時の基準で見てさえ明白な国際法違反だったと言わざるを得ないこと。 日本軍内部でも「さすがにこれは持たないんじゃ...続きを読むないの」という議論がさんざんなされている。当初直接占領を理想と掲げた石原莞爾は、妥協策として考え出した「五族協和の満州国」という建前にだんだん本気で惹かれていく。そして、民族の壁を越えた理想国家、という理念に貢献しようとして海を渡った善意の日本人が多くいたことも事実。 しかしその実態は、日本人が官僚、警察、軍を支配するまぎれもない傀儡国家。満州人に皇居のある東に向かっての遥拝を強制・・・。中国戦線不拡大論者だった昭和天皇も全く本意ではなかったろう・・。 「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った」という詩は、当時の満州と日本を覆った漠然とした希望と不安を体感していないとなかなか本当の味がわからないのでは、という趣旨の著者の指摘は印象的だった。
満蒙領有か独立国家建設か、共和制か帝政か。 満州国成立までの紆余曲折を丁寧に描き出している点がよい。
フォトリーディング&スーパーリーディング 満州帝国の歴史の概要を知ろうと思って読んだ。理解したポイントは以下の点: 満州帝国建国は日本の防衛のため。(赤化防止の防波堤。) 第一次大戦以後の戦争は総力戦。その総力戦を意識して日本は資源や食糧の自給自足体制を目指した。満州国建国は欧米のブロック経済...続きを読むの日本版。 満州国の理想は高かったが、現実の指導原理は日本のための支配という概念で動いた。そのため理想と現実のギャップを誰もが意識した。 満州国は時代の必然から生まれたあだ花のような存在で、多くの人々に傷を与えた。 関東軍は日本のために満州を支配した国民無き兵団だった。 以上
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