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かけがえのない、高校生だった日々を共に過ごした四人の男女。テストにやきもきしたり、文化祭に全力投球したり、ほのかな恋心を抱いたり――。卒業してからも、ときにすれ違い、行き違い、手さぐりで距離をはかりながら、お互いのことをずっと気にかけていた。卒業から20年のあいだに交わされた、あるいは出されることのなかった手紙、葉書、FAX、メモetc.で全編を綴る。ごく普通の人々が生きるそれぞれの切実な青春が、行間から見事に浮かび上がる姫野文学の隠れた名作。
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Posted by ブクログ
どん、と強い衝撃を、何度も受ける一冊。 痛かったり、恥ずかしかったり、羨ましかったり、色々な種類の衝撃を不意討ちで、喰らいます。 「地の文」が一切なく、登場人物が他の登場人物に宛てた手紙だけで物語は進みます。 主人公が高校2年生であった時を起点にした、約20年間が描かれています。 同級生への淡...続きを読むい恋心、先生の悪口、同級生の噂話、受験、進学… そんなことで埋め尽くされていた手紙の内容は登場人物達が年齢を重ねると共に変化していきます。 別離、結婚、不倫、奪取、離婚…。 彼らに起きた様々な出来事が、変化する手紙の内容から、推察されます。 手紙というのは、ある程度自分を客観視していたり、 少なくとも自分の気持ちを文章にできる程度に整理できていないと書けないもので、その上でどうしても他者に伝えたい気持ちが詰まったものなので、出来事の受け止め方や、人の心について、核心をついている表現が多く、そういう意味で、色々な種類の衝撃を受けたのだと思います。 作中にはいくつか、投函されない手紙も登場します。これが非常によい持ち味を発揮しています。 伝えたいと思って書いた後に思い直して、自分の中に仕舞う感情。 これが手紙の書き手の本心を表していて、作品全体をぐっとリアルに仕上げています。 結局投函されなかった手紙の中に 「なんていうのかな、わがままを言ってくれなきゃ応対できないんだよ、他人は。わがままを、ありったけのわがままをぶつけることが、それが他人を好きになるということなんだ。好きな人にはわがままを言われなければ意味がないんだ。 こんなことを言ったら相手に悪いとか、こんなことをしたら相手に悪いとか、そういうことを考えることがもう、冷たいことなんだ。」 という文がありました。強く印象に残りました。 とても素敵な一冊に出会えました。おすすめ。
小説的な地の文が一切無く、全てが手紙やFAXなどで構成されている小説はとても斬新だと思った。その人がどう行動したか、何があったのかは細かく見ることができない分、投函されず、本人だけの想いが綴られた手紙などもあり、神の視点で登場人物それぞれの人生が見れた。登場人物がたどり着いた結末までの軌跡がとても切...続きを読むなく、興味深かった。
僕が一番好きな小説です。 恋愛小説として大好きです。 今までも沢山恋愛小説を読みましたが、この小説が一番です。 他の恋愛小説と、何が違うのか。ちょっと考えてみました。 一言で言ってしまうと、それは「僕の身の丈にあっている。」と言うことです。 もちろん、傷心の海外旅行での出会いとか、クルーザーで港の夜...続きを読む景を見ながらのデートとか、そういう恋愛小説も好きなのですけれども、そこには「僕」がいません。 そう、「終業式」を読んで、僕が「一番好き」と断言できるのは、「たとえば登場人物の中に僕がいても違和感がない。」僕の身の丈にあった恋愛小説だと言うことです。 物語は、一九六〇年頃生まれた同級生四人の高校時代からスタートします。舞台は、静岡県浜松付近。僕が生まれた年代や土地柄とは全く異なります。それでも、「僕が登場してもおかしくない。」と思えます。何故なのでしょうか。 それが、この小説の他では読めない、恋愛小説であるポイントのような気がします。恋愛に対する四人の試行錯誤。これが、ポイントではないかと思います。 都築は行き当たりバッタリですし、悦子は雰囲気に流されやすい。島木は猪突猛進ですし、優子は考えすぎなのですけれども、みんな失敗しながら、少しずつ大人になってゆきます。 おきまりのパターンを踏まない恋愛は、試行錯誤、遠回りです。でも「恋愛」って、そういうものですよね。自分の好みの異性は、自分で見つけるしかないし「見つかった」と思ったら、相手にも「見つけた」と思ってもらえるように努力しなくてはならないのですけれども、それって、必ずしも雑誌に載っているようなテクニックがうまくいくとは限りません。もし、失敗したとしても、誰もフォロー(例えば、替わりを見つけてくれるとか?)してくれません。結局、自分でどうにかするしかないのです。たとえ、うまくいって、ドラマに出てくるような、トレンディーな恋愛になったとしても、それが幸せへの切符であると思えません。そんな僕は、登場人物の試行錯誤に励まされるのです。僕も「今は遠回りをしながら、でも前進しているのだ。」と思えるのです。 自分の恋愛観を「遠回りが趣味」とは思いませんが、こんな登場人物たちに共感がもてる人とは、きっと仲良くなれる。そんなふうに思える恋愛小説でした。 ーーーーーー 角川書店から新たに刊行されたので、買ってみました。今回読んでも「やっぱり、保坂の気持ちがよく分かる。」なのですが(^_^;) 今回は、都築が終盤に悦子へ送った手紙(角川文庫ではp328~)にも注目しました。悦子が、相変わらず別れた男へ自分の欲求を訴えている(同p308~)のに比べ、都築のこの手紙は、悦子への接し方(つまりは女性への接し方)の変化が伺われます。男三兄弟の真ん中ッ子として育った彼が、遅まきながら、女性への接し方を学んだ様子が伺えます。僕も、男三兄弟の真ん中なので、今後(ていうか、今、ちょうど、ラストの都築と同い年(^_^;)だから、今こそ!)彼の後に続こうと思います。
初めの方は、高校生の自然な文体なのか、少し読みづらい。しかし、都築が浪人して詩的な文章を書いてしまったりだとか、ああこういう時期もあったよなあ、と思わされる。 後の方がものすごくいい。様々な人がいて、いろんな人生がある。人と深く関わったらそのぶん傷つくけれど、傷つかない人生は味気ない。「Love i...続きを読むs not saying sorry」について書かれた都築の手紙がいちばんいい。 最初の方は読みづらくても、ぜひ最後まで読み通してほしい。
手紙やFAXという特定の誰かに書かれたものを第三者が読むには想像をふくらませる部分が多くあって、「え、これ誰のこと?」とか「ああ、多分こんなことがあったんや」とか考えながら読み進めた 悦子たちの文で、「女はこうあるもの」というその時代の風潮、学生時代で盛り上がる会話など今と変わるもの、変わらないもの...続きを読むを感じられるのもおもしろかった 思うことをそのまま文にしたとしても本当の気持ちとはやっぱり違う部分があったり、感じてほしいようには伝わらなかったり 読み終わったとき『終業式』というタイトルに改めてぐっときた
手紙だけの小説。これは誰が誰に書いた手紙なんだろうと最初は考えて、途中からは多分この人の手紙だと思えるようになりどんどん面白くなった。 学生生活から同じ人物を手紙で読むことができて、大人になってからも変わってない部分と変わっている部分が見えてそれもまた面白かった。
高校の同級生、悦子、優子、都築を中心に、高校〜社会人までの主に恋愛を中心とした出来事を綴った青春群像劇。手紙やFAXで構成されたそれは、時に一方通行だったり、タイミングが合わなかったりでもどかしく、しかしだからこそ、その不便さがドラマチックに作用する。現代から見た物語の時代は良くも悪くも前時代的で、...続きを読む感覚的に少しのめり込めないところはあったけど、手紙やFAXといったオフラインによるやり取りは、その余白に起こった出来事を想像する楽しみが用意されてていいなぁ。 物語の後半は、結婚や離婚などいろいろな出来事を経験し、歳もとってちょっと悟りの境地に達した登場人物たちの哀しくも温かい言葉で手紙が綴られていて、胸に迫るものがあった。 特に都築が離婚して今は離れて暮らす息子に宛てた手紙は、彼の女性遍歴を思い浮かべながら読むと、一層グッとくるものがあるのだった。 ひとを好きになるということは、取りも直さずエゴではあるが、相手を思いやるふりをして自分が傷つくことを恐れるがゆえに、それを押し殺して真摯に振る舞うことだけに意味はあるのか。ひとを好きになるということは、自制できなくなるくらい取り乱してしまうことだ、みたいなことが書かれていて、なるほどなぁ、と思う。 とても面白かった。
高校生のキャピキャピした文面から 日々を重ね、ゆっくりと大人になっていく 登場人物たち。 その変化が、手紙、交換ノート、FAXだけで 鮮やかに描かれてゆく。 出さなかった手紙、伝えられなかった言葉が こんなふうに表現されることに新鮮さと驚き。 まるで、この作品の中に生きていて 私も彼ら彼女らと手...続きを読む紙を交わしていたかのように 思わせられるのも、文面のイキイキと したリアルさゆえだと思う。 読書中、この世界の中の仲間に加われて 楽しかった。
高校3年生(第1章「制服」)から20年後の結婚離婚(第4章「指輪」)まで仲良し男女4人組とその周囲でかわされる書簡で構成された物語。本当に伝えたい思いは行間に潜ませ、彼らは大人になっていく―― すべてこれハガキ、手紙、FAX、案内状等々の書簡のみでできている。なのに各々の人となりがよくわかるし、終...続きを読むわりの方には誰かさんの秘めたる思いがあかされたりする。 ちなみに彼らが高校3年生だったのは70年代のようだ。ソックタッチ、パンチdeデート、エマニエル夫人というワードに懐かしさを覚える人はよりいっそう楽しめるだろう。
『ツ、イ、ラ、ク』以来の姫野カオルコ作品。2作しか読んでいないのに、あぁ、姫野カオルコらしいなと思ってしまった。青春と言ったら陳腐な言葉かもしれないけれど、誰でも懐かしさを感じてしまう思春期独特の雰囲気とか、リアルな感情とか、周りが見えないまま全力で生きてた感じとか。1975年から1995年までの時...続きを読む代を描いているのに、いつの時代も思春期のこの感じは変わらないんだな。読んでから知ったけど、装丁も、ヨシ。
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