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大切な存在を近くで発見できる
子供時代、それがこの世のすべてだった。そんなことを懐かしく思い出させてくれる物語です。ちょっと切ない異性との関係、絶望的な大人との関係。その時は何が起こっているのか、ちゃんと理解できていなかったはずなのに、分かったつもりでいた。同級生の変化、自分の変化、町の変化、3人で決めた不思議な儀式。。。読み終わったとき、とても切なくなって、小学校の卒業アルバムを開きたくなった。この作品は直木賞を受賞している。しかし、決して娯楽作品ではない!
Posted by ブクログ
2人の少年が両端から綱渡りするみたいに保っていたバランスが、鳴海が加わることで崩壊していき、さらに人生まで狂っていく様子を直視したくなくて、半ば祈るような気持ちでページをめくっていた。小学生って、自分の欲望に対してある意味で大人よりはるかに残酷だ。加減を知らないというか、浅はかさ、認識の甘さが裏返って悲惨な結末を呼ぶ。それを針の返しに喩えた道尾さんはすごい。刺さるのはあっけないけれど抜くときに激痛を伴う。これって何気ない一言や行為が、とんでもない恥や痛みを連れてくるのと同じだ。
子どもの、死に触れるまでの鈍感さと、誰かを亡くしてから極端に鋭敏になる死への恐れが見事に表現されていた。死という概念を、身体を以て理解するタイミングは人それぞれなのだろう。祖父がくちびるの皮をべろんとめくるところとか、人間の老いた部分を直視する暴力性が現れている。自分が小学生の頃、背中の曲がったおばあちゃんを見るだけで胸がきゅうとなって居心地の悪さを覚えた。心が綺麗とかそういう問題ではなく、自分が悲しくならないために目を背けたいだけだという、あのなんとも言えない罪悪感と哀愁。
そんな中で語られる祖父のセリフが悲しいし心にずっしりくる。「お前、あんまし腹ん中で、妙なもん育てんなよ」という一言に、母よりもずっと孫を見つめてきたのが凝縮されている。男同士だからか、漁師だった祖父のさっぱりとした気性なのか、年の功なのかわからないけれど。女である私が(いや、女だからこそかもしれないが)母親に嫌悪感を抱くのは、慎一を通して子ども時代の心細さや母への依存を想起し、しかし実の母とは重ならないフィクションの母(純江)に情が生まれるわけもなく、ただ怒りを覚えるからだろうか。あるいは大人になった身として、慎一が不安定になる原因は純江の監督不行き届きだと感じるからかもしれない。過去と現在、二重の怒りが存在しているような気がする。
傷ついて傷つけて恥ずかしくて、その痛みや後悔や恥や矛盾に耐えられなくなった結果、苦肉の策で痛みに鈍感になることが、大人への第一歩なのか?
その過程で、どうすれば相手を不快にさせ、自分をすっきりさせられるのか、賢くなっていくのだろうか。諭すような口調の方がいっそう相手を傷つけられると発見するように。そして、自分の加虐性を自覚して、それに恐れを抱いてようやく、むやみに人を攻撃すべきではないと理解するのかもしれない。動物だったらそのうち淘汰されていくだろうけど、なまじ賢くてしぶとい人間はそれくらいじゃ死なないので、たまに行き過ぎた一部の人だけが、法を破ることになるのかもしれない。子供とは、大人が予想できないような罪を犯す危うさとつねに背中合わせの生き物に思えてくる。
Posted by ブクログ
道尾秀介の作品は子どもの世界を描いたものが多い印象。
「月と蟹」も、高学年の小学生3人がメインです。
ただでさえ大人になりかけの微妙な時期。少ーしだけ見える子どもらしく無邪気な部分にやたら安心するのは、ほぼずっと息が詰まりそうな展開だからかも。
子どもって大人が思うよりも大人を冷静に見てるものですよね。
どうしたって大人の事情に心が振り回されてしまうのが、仕方ないけど辛い。
大人が言い訳したり取り繕ろったりするのも、子どもにとってはさらにキツい。
子どもの世界にもいろいろあるなぁ、しかもけっこう残酷。
なんとか自分を守ってほしいと思いながらも、それぞれに立ち向かう姿に苦しくなりました。
Posted by ブクログ
消失感を抱えた少年が奇妙な儀式を友達と始める。そこから段々と少年に内包されている自我が変化していき、悲しみや寂しさが溢れてそれは暴力性や非倫理的な思いや行動へとつながっていく。
話の中に流れる描写が少年たちの行動や心情を生々しく描いている。その少年少女たちも家族を失っていたり、家族に暴力を振るわれていたりと家庭の愛をどこか感じられていない心にすっぽりと穴があるような人たちである。それが交わり交流していく中で改めて主人公に訪れる妬みや嫉妬、それらがいつか主人公の人格もどこか変えてしまう。
どうして人生は上手くいかないのだろうか、どうして大人になるのは難しいのか、そんな誰しもが抱える気持ちをこの本の読みに捧げながら、溶かしながら読み進めていくと、腹の中にドロドロとした様々な感情が読み手の中に生まれると思う。
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