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1990年代から一気に産業界に広まった「偽装請負」という雇用形態。グローバル化で飽くなきコストカット、人員削減を迫られたキヤノン、松下電器産業など超一流企業までもが、率先して安い労働力を求めて、違法行為に手を染めていた! 2006年夏から告発キャンペーン報道を展開し、新聞労連ジャーナリスト大賞優秀賞を受賞した朝日新聞取材チームが、格差社会の「労働悲劇」を描き尽くす渾身のルポ。
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Posted by ブクログ
想像以上に心痛める内容の本だった。圧倒的に強い使用側が違法行為に手を染める話。不景気だったからとか、言い訳はあるのだろうが、許されない行為だと思う。 IT業界でも請負、委任、派遣といった契約形態があり、それぞれ気を使う必要がある。偽装請負にならないよう、気を付けたい。
空虚な好景気を作り出した、奢れる経営者のとった卑劣な人件費削減計画である偽装請負。 僕は、結果的に人件費をピンハネしている派遣であっても、「人身売買」と同義として捉えているが、本書で述べられている「偽装請負」という現実はそれよりもなお悲惨である。 人間が人間として扱われない社会。 これが拝金...続きを読む主義の行き着いた先にあった、「超好景気」の裏に隠された実際である。 特に憤りを禁じえないのは、キヤノン会長の御手洗による、あまりに身勝手な発言・思想である。いくら思想的に偏りがあると言われる朝日の取材によるものだとはいえ、自らの足元で違法行為をしておきながら、経団連会長の立場を得て、その行為を合法化せよと政府に迫る姿勢は、事実のみをとっても、もはや理性ある人間とは言えず、金満主義の豚とでも評するしかない。 現在も、派遣・請負の仕事で苦しむ人は大勢いる。本書にあるような現実をより多くの人に知ってもらい、労働者の側もきちんと権利を主張し、また、経営者の側も、しっかりとしたモラルを持って企業運営に携わってほしいと願う。
■海外に出れば、知的財産や生産の技術が流出しかねない。そんなリスクは負いたくない。悩んだ末の結論は「ハイテク戦略の中核製品だけは、勤勉な労働者が多い日本で作る」 ■製造請負を管轄する役所は無かった ■社会保険に加入させないケースも少なくなかった。こうした行為はもちろん違法だが、発覚しても、メーカーは...続きを読む「知らなかった」といえば、それ以上、追及されない。 ■クリーンルーム。語感的には、体にいい場所のように聞こえるが、皮膚呼吸が止められ、動けば厚い。動かないと汗で冷える。照明は高速道路のトンネルと中と同じ黄色一色。輝度が高いから眼が悪くなる。ほこりを除去するため、水分も取り除かれて、空気は乾燥している。一定の光、一定の温度で、昼も夜もわからなくなる。トイレは、いったんクリーン服を脱いで、終えたら着て、セキュリティシステムを解除し、エアシャワーを浴びる。 ■偽装請負の監督は、違反者を逮捕することのできる労働基準監督署ではなく、雇用創出を目的とする公共職業安定所だった。安定所の職員は、「雇用が失われる事の方が心配で、厳しく指導できなかった」と釈明する。 ■戦後日本の製造業は、中卒・高卒者と、冬は雪で農業の出来ない東北・北海道の期間工に支えられていた。1985年のプラザ合意をきっかけに、日本国内の労働賃金など製造コストが割高になり、日本は円高不況に。これを打開するため、多くの日本の製造業が海外に工場を移転した。 ■90年代は、電話一本で人を集められる商売があった ■生産現場は、ものづくりに高い使命感を持っている。直接来ようであろうと、請負であろうと、そこにいる労働者で、決められた量の製品を一定の品質でつくることを何よりも優先する。「そこに居る人だけで何とかやり遂げる」のが生産現場のDNAだからだ。 ■富士アウトソーシングを選んだのは、工場勤務では唯一、時給制ではなく月給制だったからだ。 ■自前での指揮命令は完全にはできていなかった。製造装置のメンテナンスも「簡単なものならできるが、難しいものはキヤノンにお願いする」本当の請負にはコストが掛かる ■労働者の多様化の1つとして、派遣社員と請負社員がある。実は、このおかげで、日本の産業の空洞化がかなり止められている ■2006年5月、派遣契約の労働者を全員再び請負契約に戻した上で、パネル製造ラインで労働者を指揮命令する立場だった松下社員を1年の期限付きで請負会社に大量出向させた。製造ラインで請負会社に出向した松下社員が請負労働者に指揮命令しても、請負会社内での指揮命令となるため、偽装請負とは形式上言えなくなる。しかし、請負会社への大量出向は職業安定法違反にあたるとして是正指導された。この出向は労働者供給事業に該当した。出向が反復継続または常態化すると違法だが、技術指導などの目的がある場合は社会通念上、労働者供給事業に該当しないと判断される。 ■製造請負の業者数は誰も知らない。官庁が無く、統計も無いためだ。電機総研が2003年に発表した「製造業務請負業の生成・発展過程と事業の概要」によると、請負会社の数は「大小合わせて2・3千社を下限に1万社も有り得ない数字ではない」という。 ■クリスタルの強さは、徹底した顧客ニーズの分析と、それに基づく決め細やかなサービス提案力 ■クリスタルの一番の売り物は、人の出し入れの速さ。パンフレットに「垂直立上・垂直撤収」と見出しをたてた。大口顧客をいくつも抱える利点を生かし、メーカーが閑散期に入ると、速やかに作業員を引き上げ、間をおかずに、繁忙期に入ったメーカーに移し替えた。しかも数百人規模で一気に移し替える早業。 ■精密機械メーカーが、指先の器用な女性を大量に欲しがっていると聞くと、強力な営業力を使って若い女性を必要なだけ揃え,更衣室やロッカーなど、女性の受入に必要な設備をセットで売り込んだ。 ■メーカーの余剰人員まで引き受けた。バブル崩壊後は、リストラ対象の社員やパートが大勢いた。そこで「不要になった人員のうち、正社員なら出向、パートなら転籍の形で我々が引き受けます」と提案した。引き受けた人員はクリスタルが請負労働者として別のメーカーに送り込む仕組みだった。このシステムは「出向転籍システム」と呼ばれていた。 ■労組にもセールスをした。生産現場への請負導入に賛成すべきかどうか迷っていたとき、請負を早くから利用していた松下電器産業の工場に連れて行き、作業の様子を見せて説得し精工をおさめたこともあった。「100人の要請に対し99人しか集まらなかった場合は、背広姿の営業マンが残りの1人になるべく、作業着に着替えて、作業員に早変わりした。それが我々の文化だった」 ■1980年代末のバブル経済期に、大手都市銀行がビルの高層階に「空中店舗」と称した店を構えた事がある。支店ごとに決められた地区割営業の慣習を捨てて、全国どこにでも営業して良い権限を与え、身内同士で競争させる手法だった。ノルマによる締め付けはほとんど効果が無く、この仕組みは長くは続かなかった。 ■創業者の林は2006年10月、保有するクリスタル株式会社をすべて匿名の投資ファンドに売り渡した。これをグッドウィルが買った。グッドウィルは安い買い物をしたと評価する一方、同業者でそう考える人は少ない。労働市場を冷静に分析すると、林の方が一枚上手で高値で売り抜けたという。手にした創業者利益は800億円。
偽装請負のリアルな実態について書かれた中身ずっしりの1冊。キャノンの華やかにCMされたデジカメ、松下の鮮やかなプラズマテレビ。成功を収めた社会的地位の高いこのような企業での生産現場での実態の真実、完成品を使用する人のどれくらいが知っているのだろうか??
ワーキング・プアの一因を暴いたルポルタージュ。朝日新聞特別報道チームが、キャノン、松下の工場で行われていた「偽装請負」を追求した調査報道の記録。日雇い労働者の現実は切迫している。これまでの報道と、この本で少しでも現実が変われば・・・。
「現場」の実態が丁寧に描かれていてGOOD! 派遣労働者の実態ってこんななの、っていう衝撃を受けた一冊。5つ星のおすすめ本。
上段勇士さん(ニコン熊谷製作所で働いていた方。偽装請負の被害者) 請負・偽装請負 クリーンルーム(非常に過酷な労働現場として記述されている) 人夫出し 御手洗富士夫(キヤノンの会長。産業の空洞化を防ごうとする一方で、偽装請負や派遣期間の延長を肯定的に捉えている) セル生産方式 東京ユニオン(2006...続きを読む年にキヤノンを相手に労働争議を起こした) 枝野幸男(キヤノンの件で2007年に衆議院予算委員会にて偽装請負に触れる) 松下幸之助『実践経営哲学』 出向(松下電器は社員を請負会社へ出向扱いにする事で偽装請負状態を解消しようとした。尚、賃金は請負会社から支払われるものに上乗せし、派遣向け補助金も違法に受け取っていた) 三重ショック(三重県が亀山市にシャープを誘致する際に、巨額な補助金に驚愕した。この事を指す) 吉岡力さん(松下電器の偽装請負の被害者。内部告発をしたがために、他の従業員から隔離された上、期間切れを理由に排除した) 電機総研(電機連合系のシンクタンク。製造請負の業者数も調べている) 株式会社クリスタル(かつて存在した請負会社。週刊東洋経済から「闇夜のカラス」という呼び名を広められた) 労災隠し(偽装請負において、法的には派遣契約とみなされている。隠すことで、法令違反がバレる事を防ぎ、保険料率を上げずに済む。また、労働者死傷病報告は被災者本人でも閲覧できず、簡単に隠せてしまう) 労災とばし(労災を別の場所であったように装うこと) 合成の誤謬
会社も行政もクズばかり。 終身雇用なんて、社の為にも、本人の為にもならん。 腐った部分は切り捨てる事の出来る、強い社会が欲しい。 そうしないと国も死んでいくだろう。
[ 内容 ] 長期不況で一気に広がった「偽装請負」という雇用形態。キヤノン、松下電器産業など超一流企業までもがそんな違法行為をしていた。 2006年夏から告発報道を展開した朝日新聞特別報道チームの渾身のルポ。 [ 目次 ] プロローグ 若者の死が意味するもの 第1章 キヤノン「偽装請負」工場 第2...続きを読む章 松下の超奇策 第3章 巨大請負会社の盛衰 第4章 偽装請負が「安全」を脅かす 第5章 脱「合成の誤謬」へ [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
製造実習で製造現場にたつにあたって、この本を読んでみた。新入社員としては気が滅入る内容だが、知っておかなければならない話。
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