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Posted by ブクログ
もしぼくに革命家の友人がいたなら、ぼくは少しも躊躇うことなく、かれにこの本を読むよう薦めるだろう。
この本はさながら革命の教科書なのだ。情報管理の方法、大衆を扇動する方法、口うるさい自称・知識人たちを黙らせる方法、そして自分たちの真の目的を隠しながら交渉を進める方法。革命の計画から遂行に至るまでに必要な、考えうる限りすべてのことが記されている。
そしてそれ以上に大事なことは、この本が娯楽として楽しむために書かれた、極上のエンターテインメントだということだ。
この本を読む時の感覚は、よく出来たアニメを夜更かしして一気観しているときの感覚とほとんど変わらない。というのは、この本自体がとにかくアニメチックなのだ。
義手の電気技師で「やれやれ系」の主人公、マヌエル。超人的な忍耐力と遠大な野望を持つ、参謀にして黒幕的存在、デ・ラ・パス教授。月世界いちの美人であり革命の申し子、ワイオミング。
そして人格を持った超高性能コンピューターのマイク。チート級の活躍を見せつつも、少しズレたユーモアを愛する一面も持っている。
ここまで揃えばあざといくらいのキャラ立ち具合で、21世紀のアニメに少しも引けを取らない。
忘れてはいけないのが、月世界人のものの考え方を象徴する「タンスターフル(無料の昼飯はない)」というフレーズや、政治についてのウィットに富んだ名言(ほとんどは教授によるもの。ぼくのお気に入りは、「ニュースの自由を"ほんの少しだけ"制限するってことは、古い言いまわしだが"ほんの少しだけ妊娠している"と同じ範疇に入るんだ」)。
こうした仕掛けの一つ一つも読者の厨二心をくすぐり、この本にアニメじみたコンテンツ性と中毒性を与える。付け加えておくが、ぼく自身がこうして(多少なりともハインラインに寄せた)感想文を書いているのも、この素晴らしい小説の世界に囚われた「ロス」によるものなのだ。
とんでもなく面白かった。月世界に関する設定が止めどなく次々に展開されていくさまは、情報の嵐とでも言えるほどで、本当に月世界があってもおかしくないと思えた。重厚感ある世界観だけでなく、ある一人の計算技師がどんどん革命に近づいていくストーリーは、単純に娯楽小説としても面白さが極まっていた。情報密度が高く、頁数が多く、読むのに時間がかかるため、娯楽に対しては非常に生き急いでいる、日常的に本を読まない層に流行ることはないだろうことが本当に惜しいが、間違いなく人生で一度は読んでおくべき本の一つだ。お薦めする。
風化しない名作!
ハインラインの代表作と言われるものの一つ。流刑地であり搾取される生産地である月世界の革命の物語です。
半世紀前の作品ですが、まったく風化していない!間違いなく名作です。
3章構成になっていて、盛り上がるのは最終章ですが、そこまでがちょっと長いかも。
でもいろいろな要素が詰まっていて面白いです。
革命の組織論が延々語られるのはアレなんだけど、
月の中央コンピュータ「マイク」の万能ぶりは、当時のコンピュータへの夢が詰まっている感じです。
そして定番だけどやっぱり邦訳タイトルがかっこいい。
原題[The Moon Is a Harsh Mistress]
のMistressを「夜の女王」って訳したところに感服。
Posted by ブクログ
ロバート・A・ハイラインと言えば『夏への扉』、そして猫
この本の邦題は『月は無慈悲な夜の女王』
ネーミングの勝利だ。
650ページを越えるこの本は、本国では『夏への扉』より読まれているという。1965年の作品で、人類初の宇宙有人飛行は4年前、まだアポロ11号は月面着陸していない。当時の最新技術はテレビジョン。
いわば古典
月世界を舞台とした独立運動のシミュレーション物語といったところか……読みにくく苦労しながらもところどころ飛ばしながら読んだ。
そして、その先に『夏への扉』同様にスピーディーで少しセンチメンタルな物語が、待っていた。
「無料の昼飯はない!」
読書だって例外は無い。
Posted by ブクログ
ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』は奇跡的なほど凄い小説だ。しかし一方で、致命的な弱点も抱えている。
本作の凄さは二つある。
一つ目は、人間社会の本質を鋭く描いている点だ。現代にも通じる「覇権国家の交代と新しい秩序の誕生」が物語の根底にある。イギリスの植民地支配から脱却し、超大国への道を歩み始めたアメリカの独立をモチーフにしながら、覇権国家がどのように衰退し、新たな勢力が台頭するのかを見事に描いている。皮肉なことに、長らく世界のリーダーとして君臨してきたアメリカ自身が、その影響力を徐々に失いつつある現在の姿さえ、この物語から読み取ることができる。
もう一つは、驚異的な先見性で描かれる生成AIを思わせる計算機の存在である。本作の出版当時は、AIどころかインターネットすら存在していなかった。それにもかかわらず、作中の超高性能計算機は現代の生成AIを彷彿とさせる。「ハインラインは未来を見てきたのではないか」と思わせるほど、その想像力と創造力には圧倒される。
ただし、本作には大きな欠点もある。日本語訳にどうしても馴染めず、とにかく読みにくい。独特の文体を再現しようとした結果なのかもしれないが、商業作品としてはかなり厳しい。また、700ページ近い長編でありながら、全体的に展開が遅い点も好みが分かれるのではないか。SF好きなら忍耐強く楽しめると思うが、そうでない読者は途中で挫折する可能性もある。
SF史に残る古典として高く評価されるのも納得の一冊だが、個人的な評価はやや辛めの星4つである。
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