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Posted by ブクログ
直木賞。
かけがえのない人へ
「足元の地面が固まれば固まるほど、その硬い地面をほじくり返したい衝動に駆られるのはなぜだろう?」
恋愛において、自分と違うタイプの人に惹かれるのはとても分かる。
でも、自分と似ているタイプの人といるのが自然なような、決められたことであるような気がして逆らえない。
どっちと一緒にいても自分を肯定しなきゃいけないから、自分の中で、言い訳を並べて
自分を騙して、これは正しいことなんだと思い込んで。
地面は固くなればなるほどほじくり返したくなるよね〜それってすごく自然なこと。
悪なんだけど、悪ではない!って正当化してあげたい。
正当化してあげたいのに、最後アンハッピーなのがとってもよかった。
Posted by ブクログ
『ほかならぬ人へ』
華麗なる一族の中で「生まれそこなった」と思っている、宇津木明生。先祖は巨大財閥で、父は大学教授、母は大病院の創業家の長女、伯父は宇津木製薬グループの社長である。長兄も次兄も成績優秀で大学の研究者。
ところが、明生だけが、小学校時代から成績が振るわなかったが、先祖が日大の前身の学校の創立者であったという縁で、日大の附属中学から日大へ進み、大手スポーツ用品メーカー、YAMATOに就職した。側から見れば「大企業に就職した」と言えるのだが、普通のサラリーマンになったのは宇津木家では初めてだった。
明生は兄達のように優秀でなくてもおおらかな家族に包まれ、優しく何不自由なく、育ったのだが、彼自身にとっては華麗なる一族である実家での暮らしは劣等感と悔しさと無念さに苛まされた暗黒時代であった。
「普通に暮らしたい」ということが夢であった明生が結婚相手に選んだのは池袋のキャバクラで出会った「ブクロのミキティ」と呼ばれた元キャバクラ嬢のなずなだった。いくら、華麗なる一族が重かったとしても、客観的に見れば、そんな結婚は上手くいかないことが一目瞭然。案の定、なずなには二年で裏切られた。それでも、納得出来ず、なずなと、話し合おう、やり直そう、とする明生。ストレスでげっそり痩せて。本当にお坊ちゃんだなあ…。けれど、人を信じて真っ直ぐな所は本当に育ちの良さが感じられて、そういう真っ直ぐなところは案外偉大な先祖から受け継いだ魅力なのかもと思った。
そんな時、明生の相談に乗ってくれたのが、会社の上司である東海さん。相当なブスらしいが、仕事はバリバリ出来る人。なずなとの離婚で打ちひしがれている明生に適度な距離を保ちながらも親身になってくれ、突き放しながらも甘えさせてくれた。なぜ、東海さんがそんな人であったかというと、離婚、自身の癌、中絶、前の夫の死などを経験し、「自分なんか死ねば良かった」と一度は考えた人であったから。
誰からもブサイクと言われた東海さんだったが、明生は東海さんのことをブスだと思ったことはなかった。その理由は東海さんの放つ匂いだった。
明生が一年間の中国研修に行っている間に東海さんは癌が再発し、入院した。そして「退院したら一緒に暮らしませんか」と明生はプロポーズした。退院後、二人は結婚し、それから東海さんは仕事も家事も全力投球で生き、二年後、癌が再再発して、亡くなった。
付箋を付けた箇所はいくつかあるのだが、いちばん響いたのは次の箇所
「やがてこの部屋にしみついた彼女の匂いも少しずつ薄れ、いずれは完全に消えてしまうに違いない。 自分はもう二度とあの匂いを嗅ぐことはできないのだ…」
『かけがえのない人へ』
みはるは聖司との結婚を控えているが、会社の元上司の黒木と浮気を続けている。
みはるは電線や通信ケーブルを製造する会社の創業者の孫で、現在は社長の娘。小児科医の母に似て頭が良いがあまり美人ではない。会社員としてバリバリ仕事をし、結婚は一つのキャリアとしか考えていない。会社の幹部であり、みはるの家とも釣り合いのとれた婚約者である、聖司のことは嫌いではないが、心の底では「あんな男どうでも良い」と思っている。経済的には恵まれていたが不仲であった両親を見て育ったので、結婚に夢を抱いていなかった。
一方、浮気相手の黒木は、施設で育ち、大学も中退したが、バイト中に正社員に抜擢され、会社の中で目覚ましい業績を上げてきた雑草のような男。「自分はまっとうに生きられない」と信じている黒木にみはるは訳も分からず手繰り寄せられる。
みはるの父が愛人の家で心臓発作を起こし、母親の病院に担ぎこまれた日はみはるの誕生日だった。婚約者の聖司を会った後、どうしても黒木と会いたくなり、突然黒木のマンションを訪ねた。前もって行くと連絡していなかったのに、誕生日には婚約者と過ごすことが分かっていただろうに、黒木の部屋の冷蔵庫からは「Happy Birthday Miharu」と書かれたケーキが出てきた。「どうして用意してくれてたの?」と聞くと「習慣だから」と。毎年、もしかして誕生日にみはるが来るかもしれないと思い用意してくれていたのだった。荒々しくオスの匂い放つ男だが、そういうところに愛を感じてしまう。
結婚式前日にもこっそり黒木に会いにいく、みはる。そんなみはるに気付いていない聖司にみはるはいらついている。そして、知っているのに知らないふりをしているのだったらサイテーだと思っている。だけど、黒木のマンションはもぬけの殻だった。
作者の白石一文さんの考えの根底には「(お金や才能や恵まれた境遇を)持っている人が幸せとは限らない」というのがあるらしい。「持っている」といえば、白石氏自身もある意味「持っている人」で、お父様も直木賞作家。双子の弟さんも作家で、白石氏は文芸春秋の天才編集者だったらしい。
さすがだなと思った。最近はやりのほっこりするする小説や多様性小説、元気の出る小説………。これを読んだ後ではもの足りなく感じられると思う。大人の小説。
Posted by ブクログ
先月ようやく長編小説「大地」を読み終わったことで、小説枠が空き、こちらの一冊を読んでみることに。以前、目当ての本と一緒にメルカリで売られていて、たまたまついてきた。どうやら直木賞を獲った作品でもあるということで、内容もわからず読み始める。結論、結構好き。とても落ち着いた大人な内容だが、人との関係性についてハッとさせられる。本のタイトルでもある「ほかならぬ人へ」と、「かけがえのない人へ」という2つの物語がある。最後にふと「ほかならぬ」と「かけがえのない」はどう違うのかなと考えた。「ほかならぬ」は自分主語、「かけがえのない」は運命主語なのかな。あと、編集者の作者に対する愛に溢れたあとがきがとても良かった。
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