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舞台は第二次世界大戦下のドイツ。ナチや人体実験、ゲーテの「ファウスト」、北欧神話をはじめ、芸術に狂う医者の倒錯的な愛、精神不安定となった母親の幻想的な悪夢、去勢された男性ソプラノ歌手(カストラート)の美声etc…、ありとあらゆる耽美要素でお腹いっぱいの一冊だ。
さらに本書がギュンター・フォン・フュルステンベルクなる劇中作家によって著され、野上晶という人物に翻訳されたというメタ構成になっている点も見所。これにより、最終的に物語中の人物関係は二転三転し、真実も嘘も曖昧となって、読者をさらなる悪夢へと突き落す。これぞ幻想小説の醍醐味!私は読後しばらく脳内麻薬の分泌が止まらなかった。
また、本書は1997年の「週刊文春ミステリー・ベスト10」の第1位、第32回吉川英治文学賞受賞などミステリーとしても極上。皆川博子の目くるめく幻想の世界をぜひご堪能あれ!
Posted by ブクログ
「歌う城壁」の童話を起点に、正統アーリア人の子を養育する施設・生命の泉、ナチスの地下壕、不死の人体実験、ボーイソプラノを生涯維持する去勢手術等々書き並べると不安になる題材を、元SSの科学者の家族を中心とした物語としてまとめ上げた一冊。
読んでいる間中、ずっと靄に包まれた感覚に陥っていた。何が謎で何が真実なのか、作中で一応明らかにされる。
がしかし、この作品自体が真実なのかをわからなくする仕掛けが冒頭からあとがきに至るまでを貫いている。
お伽噺のはずの歌う城壁の下で十数人の命が現実に消える。
読後残るのは恐怖……。
楽しい小説ではない。
面白いと言っていいのかもわからない。そう言えば不謹慎になってしまいそうな。
けれど、先を読まずにはいられなかった。
須賀しのぶ著『神の棘』の感想で、同時代のナチスを題材にしたものとしてこの本の名前を挙げているのが目に付いて手に取った。内容は全然違うものの、そちらを読んでいたおかげで時代背景がよくわかり、より深く作品に没入できた。
話の面白さでは『神の棘』の方が、一口に言えない「凄さ」ではこちらの方が断然上かと。
敢えて言えば、背徳の面白さがある。
うん、結局面白いのかも。しかも、とても。
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