海と毒薬(新潮文庫)

海と毒薬(新潮文庫)

407円 (税込)

2pt

戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化し、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? いかなる精神的倫理的な真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描く新潮社文学賞受賞の問題作。

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海と毒薬(新潮文庫) のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    終戦前の九州大学生体解剖事件をモチーフにし、登場人物の出生や罪の意識の感じ方の違いを良く表現していた。個人個人の罪の意識の違いは勿論、当該事件の当事者になった際にもその罪の意識の違いによる心情の違いを垣間見え、読者にも正義感や罪の意識の感じ方を問い直す作品になっていた。事件について表面的にしか分から

    0
    2025年09月30日

    Posted by ブクログ

    捕虜への生体実験という実際の事件をベースにした作品。ここでは、人間を押し流す運命に抗い自由を与える存在として神が捉えられていた。しかし、そのような神が存在せず、ただ海にのまれるように罪を犯してしまう登場人物たち。そして、彼らは、その罪に対して「良心」の問題ではなく、あくまでも一時的な世間的な罰のみの

    0
    2025年08月25日

    Posted by ブクログ

    様々なテーマが折り重なった傑作。ちなみに僕はこの話を読んだ後、菊と刀、新渡戸稲造の武士道を読み返した。議論のきっかけになるし、比較すべき作品も非常に多岐にわたる。人の原罪や組織内での正義などを深く考えさせられる。短い作品ながらまさに文学を体現した素晴らしい名作ということで総括したいと思います。

    0
    2025年07月20日

    Posted by ブクログ

    おすすめポイント
    ・正しさとは何か、すごく考えさせられる
    ・遠藤周作はキリスト教信者なので、キリスト教のマインドが根底に流れてる。でも全然押し付けがましくないし、むしろ人とはどうあるべきかという彼のメッセージには納得する。サイコパスでもない限りは、きっと多くの人は。

    残念ポイント
    ・なし!ほんとに

    0
    2025年06月19日

    Posted by ブクログ

    神が運命をさだめるのではなく、運命から自由にしてくれるのが神だという考え、神は無力であれ、可能性さえ示してくれればそれで良いのだと感じた。

    人間は善悪の外には立てない。
    人によって罰と感じるものは違う。
    ならば正義もみな形が違うのも当然で、
    その混沌のなか、正しい倫理観を求められる。
    私達はかなり

    0
    2025年10月27日

    Posted by ブクログ

    読者の私が高校生のときに、この本は絶対に読んでおくべき本だと言われた本です。当時の衝撃は、とてつもなくて言葉を失ったことを覚えています。少し前にNSFMさんのレビューを読んで、続編を読みたいと思いました。まずはこの本をもう一度読んでからと思い、再読しました。

    新宿でひっそりと開業医をする勝呂。彼の

    0
    2025年10月17日

    Posted by ブクログ

    倫理観は、個人の中に生まれるものではなく、世間が作り出すものだと再認識した。それでも私は人が悪魔なのではなく、戦争が人を悪魔に変えてしまうだけと信じたい。



    最初は利己的な戸田は純粋で不器用な勝呂のことを馬鹿にしてると思っていたが、生い立ちを知って見方が変わった。小説のセリフを用いるなら、勝呂に

    0
    2025年10月06日

    Posted by ブクログ

    捕虜の生態解剖がテーマと聞いていたからどれほど解剖や付随した描写があるのかと思ったけど、そういうわけじゃなかった

    海のように寄せては引いていく非人道的な事柄や勝呂自身ではどうしようもない患者の容体云々に対する勝呂の葛藤が見てとれた

    生態解剖は医学的な観点からは正に傾くし、人道的な観点からは負に傾

    0
    2025年09月11日

    Posted by ブクログ

    良心とは社会的な恥からこそ生まれるものなかのか。本当は、罪の意識や道徳的なものから生まれてくるのが良心ではないのか。人は社会的な評価がもしなくなってしまえば良心はなくなるのか。そういったことを考えさせられるほんだった。

    0
    2025年09月11日

    Posted by ブクログ

    「沈黙」からの流れで。人の残虐さと、そうなれなかった勝呂の良心はじつに良心だったのか、あるいは冷徹に見える戸田にほんとうに良心はなかったのか、まざまざと考えさせられる。

    佐伯彰一が解説ですべて書いてしまっているけれど、導入部の計算され尽くしっぷりに感嘆する。

    黒い海が引き込んだのだ、みんな死ぬ世

    0
    2025年09月05日

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