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私の職業は小説家である。ベストセラーとは無縁だが、一応、生活はできている。そして出版業界に長年関わっていると、様々な小説家に出会う。そして彼らは、奇人変人であることが多く、またトラブルに巻き込まれる者も多い。そして私は幸福な作家というものにも出会ったことがない──。 そんな「私」が告発する、世にも不思議な小説家の世界。
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Posted by ブクログ
小説家には奇人変人が多い。その奇行ゆえ、トラブルに巻き込まれることも少なくない。そしてトラブルの中には、奇譚としか言えないできごとがあったりもする。 そんな小説家の経験した奇譚を集めた連作サスペンスホラー短編集。 物語は、奇譚を蒐集・記録した「私」の視点で描かれる。 ◇ ...続きを読むO氏という小説家がいた。 20代で小説を書きはじめたO氏は、新人賞への応募作が審査員特別賞を受賞してミステリー作家としてデビューした。 O氏の作品の魅力は描写のリアリティの高さにある。例えば舞台となる学校の持つ空気、生徒たちの息遣いなど、瑞々しさや存在感が感じられるほどの表現力なのだ。 一定のファンを獲得したO氏は、以後も同じ高校を舞台にしたミステリーをシリーズ化して、執筆し続けていたのだった。 ある出版社で行われた年末のパーティで私はO氏と初めて顔を合わせた。 O氏は長身・痩せ型で色が白く、頬は不健康そうにこけている。さらに骨折した左腕を三角巾で首から吊っていた。心配する私にO氏は、慣れれば特に執筆には支障がないと言う。 その後は和やかに会話が進み、話題は執筆中の作品に移った。 O氏は学園ミステリーシリーズの新作を書いていると話したあと、照れ笑いしながら「実はこの腕、自分で折ったんです」と打ち明けた。 理由を尋ねたところ……。 ( 第1話「墓場の小説家」) 全7話。 * * * * * 「小説家には変人・奇人が多い」のは昔からよく知られたことです。特に優れた作家ほどその傾向が強いと言います。 例えば『百鬼園事件帖』を読むまでもなく内田百閒の変人ぶりは有名ですし、百閒の師である夏目漱石もかなり変わったところがあったと伝わっています。 他にも、永井荷風、泉鏡花、太宰治、菊池寛と錚々たる顔ぶれが変人として挙がります。 そして私たちは、そんな文豪たちの奇行のエピソードを興味津々で読んだり聞いたりしたがるものです。 そういう点で、本作は目のつけどころがよかった。まず、そう思いました。 各話それぞれで主人公となる小説家たちは、ヒットメーカーとも言える人気作家なので、変人・奇人に違いないと期待が高まります。 そして彼らの奇行ぶりを蒐集・記録していく「私」は、作家であっても大きなヒットとは無縁の人。つまり私たちと同じく、人気作家の奇行やそれに絡むエピソードに興味津々になるのは自然な流れだと思います。( 実際、機会を狙っては彼らに話を聞きに行ったりするという大切な役回りでした。) と無理なく作品に入っていける設定でした。 7話ともよく考えられた話で、山白さんの創作力の高さがよくわかる出来栄えでしたが、ホラーとして見ると、第4話「小説の怪人」が優れていたのではないかと思います。 第4話「小説の怪人」は、若い時分から様々な経歴とエピソードを持つ大御所作家の秘密が描かれます。さわりだけ紹介すると……。 文壇の大御所たる「X先生」の新作が出版されるや映画化が決まるなど大ヒットとなりました。けれど、そのプロットや設定に私は覚えがありました。 20年以上前、当時駆け出し作家仲間だったAさんが大切に温めていたものと同じだったのです。 Aさんが構想を作品化しないまま、作家を諦めて郷里に帰ったことを知っていた私はすぐ彼女の郷里を訪れますが、実家にはAさんの姿はありませんでした。 不吉な予感を抱いて東京に戻った私を道端で待っていたのはX先生でした。彼は私に「話がある」と言って車に乗るよう促しました。 というなかなか不穏なサスペンス調の展開です。この不穏さはどんどん大きくなっていき、ラストがまた不気味です。 その他にも、第6話「ある編集者の偏執的な恋」はミステリー要素が強い作品になっています。 内容を簡単に紹介すると……。 ある編集者が目当ての作家に対して異常なやり方で接近を図るというもので、顔色ひとつ変えずに計画を実行していくところや、目的を達したあとは何食わぬ顔で作家に接しているさまなど、本当にゾッとする内容です。 また、第7話「精神感応小説家」はオカルト要素が絡んできますが、まったくホラーではありません。これも簡単に紹介すると……。 ベトナムから技能実習生として日本へやってきたN君は、ある時「相手に触れるだけで考えていることがわかる」という能力を手に入れます。そんなN君の存在を知った編集者がN君に仕事を頼みます。 その仕事とは、ひどい交通事故で全身麻痺となった文豪J先生の頭の中にある新作を原稿に書き起こすというものでした。 J先生は意思表示が一切できないものの思考力や判断力はまったく問題ない状態だったのです。ところが文豪の国語力とN君の日本語能力に大きな隔たりがあり……。 J先生の交通事故が仕組まれたものであったり、身動きの取れないJ先生を狙う人間がいたりとサスペンス要素も楽しめるうえに、ハッピーエンドなので読後感は良好です。最終話にふさわしいと思います。 乙一さんの山白朝子バージョンは初読みですが、完成度の高い作品でとても楽しめました。1話ずつの分量もちょうどよくて読みやすかったので、オススメです。
様々な作家の小説ができるまでの苦悩や生活などを短編にした話であっという間に読める本なのにまた再読したいと思わせる文章になっている。あり得ない日常を過ごしてるからなのだろうし、凡人に小説は平凡になるので奇抜な人物しか小説家にはなれないと言っているようにどの作家も知らない世界のような執筆作業をしているの...続きを読むで先が気になるのとまた読みたくなるのかも。
様々な変わり者の小説家たちの短編集。 後半の方に行けば行くほど個人的に好みでした!面白いっっ!!特にラストの「精神感応小説家」! 乙一先生ファンですが、山白朝子先生名義のは初めて読みました。勿体ないことをしていた!他のも読んでみます♪ しかし、技能実習生の行方不明問題はどうなってるんだろう…
めっちゃ面白い。 なんと乙一さんの別ペンネームとは 初めて知りました。 そりゃ面白いし不気味だし最高なわけだ。 他の作品も読みます。
あ〜面白かったε- (´ー`*) 山白朝子が7人の小説家や編集者との会話形式で 奇妙な体験談を語るという7つのお話。 なかには作風や容姿など〝あの人をイメージした?“ なんて作家もいたりして笑 切ない話もあればゾワっとする話もあり、山白名義の本らしくグロさは少なめだけどゾワゾワしつつ結末が気に...続きを読むなる話ばかりでした。 「ある編集者の偏執的な恋」では女性編集者がストーカー化していくのがミザリーを彷彿とさせるサイコスリラーで結末に思わず〝上手い!上手ぎ!!“ と感心しきり♪ 「精神感応小説家」は最悪のパターンにいくか?ウルっとハッピーエンドにいくか?黒乙?中田? とワクワク♪どんな結末でもこの人らしいと思えるその凄さに感服(* ´ ェ `*) 七人七様の小説家… たくさんの名義を持つ乙一の七つの顔という気がして「実は全て僕のお話でした…」と言われても何の不思議もない一冊とわたしは感じた。 やっぱりこの人天才だわ〜♪ 赤青黄桃黒… ゴレンジャーか!!(●︎´艸`)ムフフ
本作はジョジョの奇妙な冒険のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』を小説家バージョンにしたような作品。小説家してたらこんな不思議な体験しました~を、エッセイのような柔らかいタッチで語ってくれる。ちなみに山白朝子さんは乙一さんの別名義なので、彼の「あとがき」の、あのゆるい感じが好きな人はより楽しんで読む...続きを読むことができるとおもう。 良かった点を一点あげるとすれば、オチの落とし方。ラストでいったん怪異だったり問題が解決……したかと思いきや、実はこんな恐ろしい後日談があったんですよ、みたいな落とし方が個人的にはかなり好きだった。 というわけで☆5つ。 あとこれはどうでもいいことだけど、表紙の絵、ちょっとダサすぎません?笑
小説家にまつわる不思議な短編集。 中でも小説の怪人、ある編集者の偏執的な恋、 精神感応小説家が好き。 恐怖やゾクッとするオチ、不思議な世界観を 持ってる山白(乙一名義作品も)先生好き
変人小説家たちの七つの不思議なお話 山白朝子さんらしいゾクッと感もあり、満足な一冊です 七人ともかなりの変人で、特殊な方法で執筆する。 読んでいるとつい 「ヘェ~作家さんってこんなふうに物語を生み出すんだ」と思ってしまうが(思わない!?)、いやいやこの七人は変人ですから! あ、【ある編集者の偏執...続きを読む的な恋】だけは、編集者が変人と言うべきかな。 私が好きなのは…… 【小説家、逃げた】 筆が異様に速い覆面作家で、その執筆する様子! ラストが良い 【脳内アクター】 R先生の頭の中には劇団がある。 脳内の劇団員が様々なキャラクターを演じるのだ。 最後は背筋がゾクッ 【精神感応小説家】 なんだかとても良いお話。 悲しさと怖さの感じさせ方が、さすが。 「出版社のパーティ」というのに潜入してみたい( ˊᵕˋ )
あまりにもゾッとする描写があり、一度本を閉じてしまう…。こんなの初めてです。 ひとつひとつが濃い短編集。思いがけない展開に、思わず声が出てしまう。面白かった!
小説家には変人が多い。 こ〜んな出だしから始まる7人の変人小説家達のお話。 「私」が告発する世にも不思議な小説家の世界。 どうやって作品が生まれるのか、小説家の執筆にまつわる7つの短編集♪ 作家さんてすごいな〜。 なんでこんな構想練れるんだろう?ってよく感じたりする。 ずっと小説を生み続けるって...続きを読むほんとに大変な事だよな〜って思う。 なのでこれはフィクションだけど、実はちゃんとモデルもいるほんとの話なんだよと言われても全然不思議じゃないかも、、笑 山白朝子さん名義だけど、そこまで奇妙な感じや怖さはなくてソフトだったかな?? でも7話とも面白かった〜! 個人的には「小説家、逃げた」と「脳内アクター」が特に好きでした\♡︎/
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