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ポイット氏は、今日もがっくりと肩を落とした。「またダメだった……」果たしてこれは何度目の失敗だろう。いったいいつになったら……?ひとり悩むポイット氏に、ある日見知らぬ女性が声をかけてきた。――「あなた、まだ〈アレ〉を食べていませんね?」そして知らされる衝撃の事実。どこか風変わりな中年と老年の男女4人による、ちょっと奇妙なお話。もしかしてあなたも、〈4ミリ〉のお仲間ですか?
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Posted by ブクログ
『緑の葉がしげる枝えだに、たくさんのブランコのようにぶら下がっているという、ヘリオトロープ色の、小さなリンゴのように愛らしい、やさしく切ない、遠い夢のような味のする』フラココノ実。 なんて美味しそう。素敵な描写にうっとり。 このフラココノ実は、大人になると食べたくなるという。けれど食べると自分の中の...続きを読む「何か」が消えてしまうらしい。 それでも食べたいのは、誰もが食べているのに食べていない自分は「何か」が足りない気がするからと。 その気持ち何となく分かります。 「「何か」を得れば「何か」を失う。見方を変えれば、どっちかの「何か」は持っているのだ。そこいらじゅうの人がなくしてしまった「何か」を大事に持っているほうが貴重、かつ愉快じゃありませんか」というバンボーロさんの言葉にハッとした。 登場人物が、冴えない中年おじさん、(本人曰く)ただの主婦、「何か」が足りないと評価されている画家、本に鼻を突っこんでいるおばあさん。 これは、大人のために書かれた物語だ。 楽しい~。
かわいい! 内容も表紙もかわいすぎる。 うふふな空気。 いわゆる子供心を持ち続けていられるかってことかしら。
何かを得れば何かを失う。 皆が失うはずの何かを持ち続けていると、時に疎外感を感じるかもしれないけれど、それを、楽しいと感じる方が楽しく生きられる。 違ってオッケー!逆に楽しもう!のメッセージに愛を感じます。 不思議な設定だけど、しっくりくる、すてきなお話でした。
大好きな高楼方子さんの作品。ポイット氏の住む地方では、年齢や時期、その人に会ったタイミングで初めて食べることができるようにる、みんなそれを心待ちにしている果実がある。 やさしく切ない、遠い夢のような味のするフラココの実。けれど一度食べると、自分の中の何かが消えてしまうらしい。しかも何が消えてしまうの...続きを読むかは実は誰にも分からない…ポイット氏は何度も食べようとするのだけれど、48歳になった今でも食べることができなくて……
児童書の体裁で、子どもが読んでももちろん楽しいけど、大人にこそ読んでほしい。 まず感心するのは高楼さんの言葉のセンスの良さ。登場人物の名前も、フラココの実という名前も、(5ミリでも9ミリでも1センチでもなく)4ミリというのも絶妙。ヘリオトロープ色というのも。ヘリオトロープって聞いたことはあってもよ...続きを読むほど花が好きな人や色に詳しい人でないと、どういう色か思い浮かばない。(実はちゃんと表紙に描いてあるんだけど)一体どんな素敵な色なのかとすごく気になる。あー気になる気になると思いながら読むので余計に想像してしまう。上手い。 こういう不思議な物語は、読者をその世界にスッと連れて行けるかが重要なのだけど、意識すらしないで同じ場所に行ける。 高楼さんの作品での友情は年の近い同性なんて狭いものではないのが、素敵。老若男女問わず、魂のありようが似ていれば友達になれる。わかりあえる。『紳士とオバケ氏』で人間とオバケに友情が成り立ったように。それから、登場人物が孤独を恐れず人生を楽しんでいるのもいい。 私も4ミリ浮いていられたらなぁとも思ったり、いやいや時々素晴らしいフラココの実を食べに行くのも悪くないよ、と思ったり。 読んで幸せな気持ちになれる本は多くないけれど、これは数少ない幸せが感じられる本。プレゼントにもいいかも。挿し絵も魅力的。
高楼方子さんの作品にはまりつつあり、せっかくなので童話も読んでみました。 児童文学だけど、大人になってから読むとまた違う楽しみがあると思います。 フラココノ実を食べずに大人になった登場人物たちがとても愉快で魅力的。
ポイット氏はフラココノ実を食べたことがない。 この本の世界では、人はある時期がくるとみんなフラココノ実を食るようになる。はじめて食べる時には、未知の味を味わおうと大人びたふうを装ったり、精神鍛錬に励んだりする人もいれば、逆にフラココノ実を拒否しようとする人もいる。けれど、一人一人違う「食べ時」が来...続きを読むたら、人はフラココノ実を食べずにはいられない。 大きな湖の中程にあるフラココノ島にある木になるフラココノ実。一度食べたら、毎月一度食べに行くことになるが、そうなると、フラココノ実は日常のひとつでしかなくなる。 大人はほぼ、フラココノ実を食べている。 だけど、ポイット氏は、そこそこおじさんで、仕事もしている大人なのに、まだフラココノ実を食べた事がない。島に近付こうとすると何らかの障害があって、島に渡ることさえできないのだ。 他人には隠している、フラココノ実を食べていない事実だけど、ある時、エビータさんという女の人に声をかけられた。 「あなた、お歩きになるとき、4ミリほど浮いていらっしゃることご存じ?」と。 フラココノ実を食べていない人は、地面から4ミリほど浮いている、そして自分もそうなのだと言うのです。 さらに画家のバンボーロ氏もおじいさんなのに4ミリ浮いている。 3人は4ミリ同盟をくんで、フラココノ島へ一緒に行くことを決めましたが・・・。 フラココノ実が大人への階段のようなものであり、フラココノ実を食べていない人の楽しげな空気が、たかどのほうこさんらしい・・・と言うか、たかどのほうこさんこそ、4ミリ浮いていても不思議じゃないと思ってしまう。
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