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平凡なサラリーマンがある朝、巨大な虫けらに変身した状態で目覚める──。不条理文学の旗手か、不器用なサラリーマン作家か。新たなカフカ像にもとづく新訳と訳者解説によって、不朽の名作がよみがえる。
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Posted by ブクログ
100ページほどしかない短い話だったが、とても面白く救いのない話だった。 この本の素晴らしいところは訳者解説がついているところだろう。70ページ近い訳者解説により「変身」だけでなく、フランツ・カフカについても学ぶことができる。
『100分de名著』で取り上げられた川島隆氏の新訳。 ある朝目覚めたら、巨大な虫に変身していたグレゴール。虫になった理由も、回復の方法もわからない。無論仕事にも行けない。一体彼はどうするのか…? ものすごく大変な出来事に遭遇しているのに、グレゴールが淡々と落ち着いているのがシャープで怖い。彼が気...続きを読むにするのは、もっぱら遅刻した出張や、実家の借金や、妹の進路であって、自分の変身の回復法ではないのだ。まずそこで、私たちは驚き、この作品に釘付けになる。 まるで身体障害のある人を急に抱えた家族のような様相を呈する家族たち。困惑するなという方が無理な、想像し難い現実に、一家はかつての和やかな家庭から、貧しい家庭に変貌し始める。 嫌々世話をしながら、だんだんグレゴールは疎外される。ついに彼は、父親が反射的に投げたりんごで大怪我をし、誰にも見捨てられて衰弱死する。 りんごが、グレゴールに対する社会的追放の鉄槌であり、家具の剥奪が、彼が『人間であった』ところから、ものの役に立たない生き物へ、その立場が転落させられるのが、無情であり、無常でもある。まだ彼には、美しい絵に心惹かれ、妹のヴァイオリンに思いを寄せる知性があるというのに、それは誰にも気づかれず、顧みられることがない。淡々と滑稽味さえにじませて描かれているが、なんと絶望的な悲劇だろうか。もっと怖いのは、読んでいるこちらまで、淡々と事態を観察していることだ。ふと気づいた自分の眼差しが恐ろしいのだ。だが、衝撃はそこで終わらない。 虫に変わってしまった家族の一員を持て余すのは想像できるとしても、後半に妹がグレゴールを放逐することを提案するところ、鈍器で殴られたような驚きが走る。 グレゴールが家族を『いじめて』いるというのだ。虫に変身した責任は、グレゴールにはない。不慮の事態だし、基本彼は身を隠している。それでも、ヴァイオリン、いや、愛妹に心惹かれて、団らんの場に思わず出てきてしまっただけなのに。『いじめるばかり』と非難されるとは。たった数行の妹のセリフの、破壊力といったら。解釈や鑑賞を、一瞬吹き飛ばす衝撃がある。 グレゴールの死後の家族の外出が、輝かしく楽しげでヨーロッパ的近代市民層の典型的憩いの姿で描かれているのも、冒頭からずっとモノクロームの世界だったところに、急に色がついて彩りが差したようなのが、また変に美しくて、なんとも言えない気持ちになる。美しいと感じる私が、やはり怖い。 ラスト、絶筆のように幕切れとなる。妹のぐっと伸ばした背。その靴の下で、今しもグレゴールと私が、一緒に踏まれて消えた。彼女の靴底には、もちろん汚れなどついていない。かがやくような豊かな若さがあるだけだ。 実存主義って諸刃の剣。なんて怖いんだろう。この小説に対して『答え』なんて出るのか?あの、読書から来ると思えない殴打感のある衝撃。それが答えではないだろうか。次は『城』読んでみようかな。ヤバい。中毒になりそう。 巻末に川島氏による、懇切な作品解説とカフカについての評伝が付されていて、非常に充実した内容だった。これを読むと、カフカの書簡集も読みたくなるだろう。非常に読みやすく、明晰な訳で、強くお勧めしたい。
『この早起きというのは、人間をまったく薄ばかにしてしまうのだ。人間は眠りをもたなければならない』 『ただ我慢することだけが家族の義務の命じるところなのだ』 『音楽にこんなに心を奪われていても、彼は動物なのだろうか』 『これで神様に感謝できる』 グレゴールはある朝、目が覚めると自分の姿が毒虫になっ...続きを読むていた… その姿を見た家族の反応はどうなのか? 見た目は毒虫だが、間違いなくそれはグレゴール本人。最初は妹も母親もらしく接してくれるが、徐々に毒虫としての扱いを受けるようになる。 いずれ毒虫の死、つまりグレゴールの死が訪れる。家族の反応は… グレゴールには「死」の選択しか残されていなかった。 この小説を通じて、カフカは何を言いたかったのか。 時代背景。見た目と心の相違。 そして人間である尊厳。 単なる、朝起きたら姿が変わっていたSF小説ではない。
ダウンタウンの"トカゲのおっさん"の源流ってコレ? 私はこの作品が世界的に有名になって以後に生まれました。いくら読んだことがなくても、それなりの年数を送ってきた人生の中で『変身』がどんな物語なのか1ミリも知らない、という方が難しいでしょうから、どこまで新鮮に楽しめるかが気になりましたが、結果的には...続きを読むとても楽しく読めました。ちなみに私は「主人公がある日、虫になった」としか知りませんでした(「しか」と書きましたけど、それがほぼ全てだった、というのが読後の印象)。 『変身』の新訳版が出たと聞き、海外の純文学に不慣れな自分でも読みやすいかなと手に取ったのがキッカケでしたが、その予想はドンピシャ当たりました。とても読みやすい!と言っても他の訳を読んでいないので比較はできませんが。 物語の舞台はずっと主人公の実家、9割以上が主人公の部屋の中です。しかし閉塞感や停滞は感じませんし、ストーリーの割に文体そのものには重さがなく、文章のテンポも一定で、まったく絵変わりしないのに不思議と飽きずにサクサク読めます。 ネタバレになりますが、印象的だったのは最後の場面です。訳者解説でも触れられていますが、それまでは地の文で「父親」「母親」「妹」と書かれていたのが、主人公が死んだ瞬間から先は「ザムザ氏」「ザムザ夫人」「グレーテ」に置き換わっていて、主人公と家族の関係性が完全に断ち切られたことが文体そのものから明確に伝わり、残酷さが際立っています。生前の主人公に対する疎みや憎しみを隠さなくなっていった家族の描写も怖いですが、まるで最初から主人公なんて存在していなかったかのような白々しい晴れやかさに溢れているラストの方が圧倒的に恐ろしいです。まるでマネキンが演技しているような絵が浮かんでゾッとします。 読後ネット検索して、『変身』には古今さまざまな解釈があることがわかりました。私には実存主義やシオニズムなど難しいことは分かりませんが、様々な解釈が可能なくらい、メッセージがない空っぽなもの(ディスじゃないつもりです!)なのでは?と思いました。カフカが読者の解釈をリードするような意図もまるで感じません。シュールなコントを見てるような気分で、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の後期の名作コントとされている『トカゲのおっさん』にも似た不条理性を感じました。 私もあえて何か見立てのようなことをするとしたら、ストレスによる心身の不調から、主人公が自分が虫になったと思いこんだ物話ではないのかと想像しました。朝、目を覚ますと出発時間をとうに過ぎており、体を起こそうにも虫の体躯に慣れていなくて起き上がることも困難な様子は、抑鬱状態で朝がつらい人の典型に見えます。虫の脚からでる毒液が、部屋をはいずりまわったせいで部屋の床や壁にこびりついた描写がありますが、それはトイレで排泄をすることが叶わなくなった主人公の便だったりするのかなーとか。 なぜ虫になったのかの理由は明かされず、遠因を匂わせるようなことも一切なく、気持ちいい不条理さでした。出だしの一行目からもう虫になっているのもとても気持ちがよくて思わず吹いてしまいました。唐突すぎる!っていう(笑) 巻末(と言うにはページ量が多すぎる!"併載"と言うべきか)の訳者解説も本編と同じくらい読み応えがあり、はじめてカフカに触れるカフカ入門者にもうってつけです。
フランツ・カフカ作 川島隆 訳 令和4年2月 初版発行 角川文庫 原作は1915年と古いですが、昨年新訳された新しい本です。以前読んだ時は何が面白いのか全く分からなかった本でもあります。 主人公グレゴール・ザムザがある朝虫けらに姿を変えている有名な出だしで話はスタートしますが、これって今の世の中...続きを読むと似ているなと改めて思いました。 普通に生活していたのに事件に巻き込まれたり、炎上騒動で、周囲の人や世間の見方が180度変わってしまう…。姿こそ虫にはなりませんが、何を言っても聞いてもらえない、ザムザと同じような立場になる可能性は誰にでもあるのではないではないかと。 また意識を残したまま虫になるのは最近流行りの転生系の話に似ているし、周りと違う姿になるのは多様性の要素も含んでおり、今風に解釈すると、姿形が違うからと差別してはいけないというメッセージにもなっているのかなと、以前読んだ時とは違った読後感でした。100年前の本だけど読む時期、年代でこんなにイメージが変わる本もあるんだなと再認識しました。
本来、こういう不条理ものは苦手な方なんだけど、なぜかこの「変身」は好きだなぁと思った。 私はカフカの文体が好きなのかもしれない。 最初は「ある朝起きたら虫になっていた」という常人では思いつかないような突飛な発想に気を引かれるが、そのうちこの「虫になっていた」というのは何かの比喩でもあるのでは?と思...続きを読むい出したりする。 「虫」というのを「人間だと思えない」「(それがたとえ気心知れた兄だったとしても)なるべく関わりたくない」と思わせるような何か、に置き換えて読むとどうもこの話がただの「ゾワっとする話」には思えない。 この「変身」はある意味残酷・不条理極まりないと言えるのに、読み終わった時にはなぜか満足感があった。本当になぜなんだろう。 自分でもよくわからない。ただ、こういう感覚でいろんな人がカフカ文学の虜になっていったんだろうとなんとなく思った。
100分で名著を見て、そんな話だっけ、と思い再読。色々と難解な解釈があるらしいけれど、浦島太郎だって不条理な話だし、現実問題として不条理なことは起きうるし、そこに無理に意味をつける必要はないと思った。グレゴールの顛末は悲しい物語だけれど、なぜか切迫感がないのが面白い。虫のくせに出勤しようとしたり、妹...続きを読むと駆け引きしたり、天井からぶら下がったりして楽しんだり、とってもシュール。
訳者解説が面白い。 文字を追うことは読者誰でもできるけど、ドイツ語で書かれた、他の版から、技術がどう変遷しているか、というのは、一人の読書では絶対に読み解けない。ということを思い知った。 訳者ってすごい。キーワードとか、宗教的背景のある表現は日本語訳難しいらしい。確かに言われてみれば、絶対にそう...続きを読むだと思う。本作でいう「虫」だって、様々な訳がこれまで当てられては変えられて、らしい。虫ではニュートラルすぎるので、毒虫、でも攻撃性はないから、毒は違うんじゃない?っていって虫に戻るとか。虫けら。ごみ虫。なんてのもあるらしい。
伊集院光さんの『名著の話』がとても良くて、改めてこちらを手に取った。100分de名著の講師をされていた研究者による新訳。充実の解説がうれしい!
主人公は何も悪くない。ただ虫になってしまっだけ。だが、"虫になっただけ"で邪険扱いされる。至極当然のような、残酷なような…。
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