日本人ムスリムとして生きる

樋口美作

日本人ムスリム（イスラム教徒）として生きた日々とその思いを綴る書。偏見と誤解に満ちた宗教に身を投じた日本人の信仰体験の苦労と、戒律を守るための工夫などを赤裸々に告白。

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: エッセイ・紀行 / エッセイ
• 出版社: 佼成出版社
• 電子版発売日: 2019年09月06日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 5MB

[ブクログ · ★★★★★]

私の叔父が編集者でして、その叔父が編集した本をいただきました。
ハードカバーで難しそうに見えるけれども
内容はイスラム教のことを知らない人でも読みやすいように
丁寧にイスラム教について説明してあったりして
むしろ宗教関係の話に初心者の方が最初に読んだらいいんじゃないかと
思えるような本でした。
同じ日本人の視点からイスラム教について書いてあるので
共感できる、と言ったら自分はムスリムではないのでおかしいかもしれないけど
説得力のあるようなかかれ方でした。

私の卒論の参考になるような話もちらほら。

[ブクログ · ★★★★☆]

樋口氏はとてもマジメな性格で、それがムスリムになる前も、ムスリムになった後も、いろんなことを決定づけている。

p38

クルアーンには25人の預言者の名前がある

預言者とは人類の歴史のそれぞれの時代に、その民族の言葉で啓示を受け、人々を導き、自身でも信仰を実践した人。

日本のある時代にも預言者は使わされたかもしれない。私達がそれを知らないだけである。

一説にはブッダも預言者の1人と言われており、クルアーンにある預言者（14）ズルキフルがその人であると言われている。

預言者はあくまでも人間である。

ムハンマドの人間性は、クルアーンの中で啓示されている。
「わたしは、あなたがたと同じ人間にすぎない。唯、あなたがたの神は、唯一の神であることがわたしに啓示された。」（41章6節）

p46

スンナ派とシーア派の、教義上の違いは、さしてない。
シーア派の発端は、イスラームの初期、ムハンマドの死後の後継者争いにあり、政治的なもの。

p57

イスラーム世界を語る時、イスラム学の総本山ともいわれるエジプトのアズハル大学の存在を無視することはできない。

アズハル大学は、イスラームの諸学を総合的に、専門的に、研究する場を提供した。

1965年の時点でさえ、カイロ郊外にある留学生の寮には七十数か国の学生が居住していた。
学生の出身国の国旗が立ち並び、ニューヨークの国連本部を想起させるものだった。

p88
クルアーン23章
52．本当にあなたがたのこのウンマは、唯一の共同体である。われはあなたがたの主である。われを畏れよ。
53．それなのにかれらは諸宗派に分裂した。しかも各派は自分たちが素晴らしいと言っている。
54．だから当分の間、迷いのままにかれらを放置しなさい。

p105

日本人ムスリムの長老であったオマル三田師は
（三田了一のことなんだろう？？？？？）

p119

クルアーン2章
256．宗教には強制があってはならない。正に正しい道は迷誤から明らかに（分別）されている。それで邪神を退けてアッラーを信仰する者は、決して壊れることのない、堅固な取っ手を握った者である。アッラーは全聴にして全知であられる。


クルアーン109章
1. 言ってやるがいい。「おお不信者たちよ、
2. わたしは、あなたがたが崇めるものを崇めない。
3. あなたがたは、わたしが崇めるものを、崇める者たちではない。
4. わたしは、あなたがたが崇めてきたものの、崇拝者ではない。
5. あなたがたは、わたしが崇めてきたものの、崇拝者ではない。
6. あなたがたには、あなたがたの宗教があり、わたしには、わたしの宗教があるのである。

p145

クルアーンは禁欲を禁止している。

クルアーン57章
27．それからわが使徒を、かれらの足跡に従わせ、更にマルヤムの子イーサーを遣わし、福音を授け、またかれらに従う者の胸に博愛と慈悲の情を持たせた。

だが禁欲の修道院制は、かれらが自分で作ったもので、われがかれらにそれを指示してはいない。

アッラーの喜びを得たいばかりにしたことだが、かれらはそれも守らねばならないようには守っていなかった。それでわれは、かれらの中の信仰する者には報奨を与えた。だがかれらの多くの者はアッラーの掟に背く者たちであった。

オマル三田師の言葉
隔離されたなかでの禁欲的生活や形式的祈りではなく、騒がしくても、この世の中の普段の生活の中で行うべきであろう

p148

クルアーン41章
6．言ってやるがいい。
「わたしは、あなたがたと同じ人間に過ぎない。唯、あなたがたの神は、唯一の神であることがわたしに啓示された。それでかれに向かって真直ぐに傾倒し、かれの御赦しを祈りなさい。多神教徒こそ災いであり、
7．そのような者が喜捨を行わず来世を否定する者である。

クルアーン112章　純正章(アル・イフラース)
マッカ啓示 4節

1. 言え、「かれはアッラー、唯一なる御方であられる。
2. アッラーは、自存され、
3. 御産みなさらないし、御産れになられたのではない、
4. かれに比べ得る、何ものもない。」

p172
アメリカはイラク戦争で
◆約30兆円の戦費
◆2,300人以上の戦死者
を出している。
イラクも
◆一般民間人を含む24,000人以上の戦死者
を出している。

p173
キリスト教徒イスラームが、同一の神を信じる人間同士が、それぞれ「神のご加護を」と祈って戦っている。

p175

クルアーン2章
190．あなたがたに戦いを挑む者があれば、アッラーの道のために戦え。だが侵略的であってはならない。本当にアッラーは、侵略者を愛さない。

p179
パレスチナは国連決議を遵守しないと避難されているが、イスラエルも35年間で34の決議を守らなかった。

イスラエルは何をしても良し
パレスチナは何をしても悪し

このダブルスタンダードは絶対に許容できない。
これが「アラブの大義」である。

p196
中国人ムスリムの数は約3000万人。
北京市を中心に約450の支部がある。
2005年の巡礼者は15,000人。

p216
井上洋治神父は
ヨーロッパで育った父性的なキリスト教を
日本的な、母性的キリスト教に変換しようとして
「風の家」を設立した。
遠藤周作はカトリック信者として井上神父を支持した。

p227
誰がどのモスクへ行っても一体感を共有できる。
国や民族の違いをこえて同一行動がとれる。

この本を最後まで読んで疑問に思ったこと。
樋口氏は、
「誰がどのモスクへ行っても一体感を共有できる。
国や民族の違いをこえて同一行動がとれる。」
という内容を書いているが、

実際、スンナ派とシーア派では、祈り方に若干の違いがあったり、この2つの派の間ではそれぞれ違うモスクに行くのではないか？
同一行動がとれないこともあるのではないか？

[ブクログ · ★★★☆☆]

イスラム教徒になった、日本人がどのようにイスラームを捉え、日本人としてのアイデンティを持っているのか知る一助になった。ちょっとイスラーム擁護と、日本を軍国主義だとか、国家神道批判とかちょっと強めな印象。

イスラームと日本人の美徳はとても類似している。しかし、一方で現代の資本主義、競争社会、物質主義社会や忙しさで、日本人は人間的温かさや相互扶助の大事さを忘れかけている。それを思い出させる導入として、イスラームを使うのもいい手段になりえる。