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古い井戸から溢れだす水は≪雁木亭≫前の小路を水路に変え、月光に照らされ小舟が漕ぎ来る。この町に戻れなかった魂は懐かしき町と人を巡り夜明けに浄土へ旅立つ(「帰去来の井戸」)。瀬戸の海と山に囲まれた町でおこる小さな奇跡。著者の故郷・尾道をモデルとし、柔らかな方言や日本の情景に心温まる、ファンタジックな連作短篇集。広島の魅力を描いた本を、地元書店員が中心になって選ぶ賞として立ち上げた広島本大賞、第1回受賞作。
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Posted by ブクログ
全部、あたたかくて優しい物語。 特に最後の、「ピアニシモより小さな祈り」は、「本でこんなに泣いたのっていつぶりだろう」ってくらい泣いた。
潮の道という架空の街を舞台にしたあっさり系ファンタジー。キャラクターも魅力的で続きがよみたい!でないかなぁー こんなところにすんでみたいなぁと思わせる、作者の地元愛が伝わる作品。
「潮ノ道」は尾道がモデルだそうだ。 時をかける少女(実写映画)で見たあの美しい土地ならば、このようなことが起こってもおかしくないと思えてくる。 「ピアニシモより小さな祈り」では、ほしおさなえさんのものだま探偵団シリーズを思い出した。 好きなタイプ。
瀬戸内の風光明媚な町、潮ノ道(あとがきを読まずともモデルは明らかですね)を舞台としたファンタジー作品集。 何気ない日常、でもちょっと不可思議な日常。町のそこここに人ではない"何か"が普通に存在し、ごく自然に溶け込んでいる。中には厄介者も居るけれど、大半のものたちは町にそっと寄り...続きを読む添い、時に人間に手を貸してくれます。 作者が作品世界のみならず、故郷をこよなく愛している事がひしひし伝わってくる、ほっこりあたたかな一品です。
不思議な力に満ちた、瀬戸内海にほど近い山に囲まれた町、潮ノ道。 小さな奇跡に溢れるこの町は、人間でないものも呼び寄せたり、本来力を持たないものにも力を与える。 読んでいるだけで、素敵な町だなと心底惚れこんでしまうような町でした。 引き寄せられるように集まってくる個性的な面々もいいですね。 もちろん...続きを読む、一番の主軸はこの連作短編集すべてに登場する、お寺の住職、了斎でしょうか。気のおけないおじいさんながら、不思議な町にぴったりな人物です。もはや何が普通なのかわからなくなってしまうくらい、気付けばこの町の空気に馴染んできます。 どこか夢のような、美しい情景がまた特徴的です。 見えない海の上を渡る船や、四季折々を映し出す動く絵画、そして短編のタイトルもまたセンスがよくて美しい。 「桜絵師」 「写想家」 「旅の編み人」など… 思わず、読んでみたくなりませんか? 一番好きなのは「ピアニシモより小さな祈り」 きっと自分の心の底に、想いが形になってほしい、誰かにきちんと届いてほしい、という気持ちがあるのでしょうね。 人を、物を大切にして、それに応えてくれる関係が築ける。そのことがどれだけ素晴らしいことか改めて感じさせる1冊でした。 初読みの作家さんですが、読めてよかったです。 静かで美しい物語でした。
ひとつひとつ読みやすくて心が温かくなる連絡短編集。 仕事で疲れた日の夜眠る前、仕事に行くのがちょっと憂鬱な日の朝などに読んでみました。
「潮ノ道」という瀬戸内海に面した町を舞台にした和風ファンタジー。 ほどよくリアルで懐かしいような田舎町の描写と、ちょっと不思議な出来事が自然に溶け合っています。 好きになりました。 「帰去来の井戸」 地元の大学に通う由宇は、伯母の七重の店「雁木亭」という店を時々手伝っている。 店の裏には井戸があり...続きを読む、その水を飲むと必ず町にまた戻れるという言い伝えがあった… 「天の音、地の声」 小学4年の美咲は、持福寺の住職の了斎に頼まれて、劇団「天音」の役者サクヤを迎えに行く。 わずか数人でやっている劇団だが、口コミでけっこう人気がある。彼らのしていることとは…幽霊屋敷と騒がれている古い建物で、美咲は、一端をかいま見ることに。 「扉守」 「セルベル」という雑貨屋に入ってきた少女・雪乃には、何かが取り憑いていた。 セルベルの主人の青年が、実は扉守という役目をしていた。 「桜絵師」 持福寺の了斎のもとを訪れた絵師・行雲が広げていた絵。 高校生の早紀は、描かれた桜が次第に増えていくのを見て、美しい絵の中に入りたいと思う。 「写想家」 人の思いを写す写真家。 違う人生を送る女友達が、ある日抱いた思いは… 「旅の編み人」 ピンク色の翼を持つ何かが、羽ばたいて窓の外へ消えた。 何でも編むという女性のバッグから飛び出したそれは? 「ピアニシモより小さな祈り」 静音は地元で勤めているが、神崎零のピアノコンサートをボランティアで手伝ううちに、ほとんど仕切るようになった。 零には調律師の柊も同行して、コンビで行動している。 静音の家には昔から、鳴らないピアノがあった。 何度張り直しても、音を立てて壊れる… すねているピアノをなだめると言われ、連弾の練習を始める静音だったが…? 瑠璃山、黒曜山、白珠山という三つの山がすぐ海まで迫っていて、細い道が入り組んだ坂をなす町というのが素敵です。 作者は尾道出身なんですね。 2006年から9年にかけて書かれた連作短編集です。
はじめの2、3編と後半はなんだか少し違った雰囲気があるような気もします。 個人的には、前半が好きです。 尾道、ぜひ旅してみたいですね。
第1回広島本大賞受賞作ということで購入。装丁も内容に合わせて幻想的で綺麗。 内容としては尾道をモデルにした「潮ノ道」という昔の面影が残る街を舞台にしたファンタジー。 ファンタジーなんだけど、モデルとなった尾道にも、こんな不思議なことがあっても別に不自然ではないと思わせるような雰囲気があります。きっ...続きを読むとこの街だからこそ成り立つ物語なのでしょう。 読んでいて気になる広島弁もなかったし(たまに変な言い回しや時代的に誰も使っていないような広島弁で書かれた作品もあるけれど…この作品は気にならなかった)、ファンタジーが平気な人なら楽しめると思います。 個人的にすきなのは「天の音、地の声」「桜絵師」。
広島の尾道に似た小さな町の不思議な話。方言があたたかい穏やかなファンタジー。そりゃ物足りないが、和む。
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