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売り出されたいわくつきの古い屋敷。屋敷を買った叔父の命で下検分に出かけた主人公は謎めいた美しい女性と出会う。次々と現れる謎の人物。首なしの死体。時計塔のからくり。……「その怖さと恐ろしさに憑かれたようになってしまって、(中略)部屋に寝転んだまま二日間、食事の時間も惜しんで読みふけった」(江戸川乱歩)という名作「幽霊塔」と、父の死をめぐる意外な顛末が秀逸な中篇「生命保険」を収録。
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Posted by ブクログ
明治探偵冒険小説。 【幽霊塔】 英国貴族の丸部道九郎は、叔父(跡継ぎ養父)の丸部朝夫の命により、倫敦から離れた田舎町の時計塔屋敷を買い取る。 丸部一族は、英国王ランカスター家に繋がる血筋だが、最後の国王顕理(へんりい)六世の代に、当時の丸部主人が何やら大いなる秘密を隠すためにこの時計塔を建てたらし...続きを読むい。 この「幽霊塔」には曰くがある。当時の丸部主人は自ら秘密を隠すために作った迷路から出られず死んだ。その後一族の本流が絶え、この塔は当時の使用人のお紺婆さんが買い取った。だが8年前、そのお紺が殺された。逮捕されたのは、お紺の養女の輪田夏子という女中。夏子は無罪を訴えていたが4年前に刑務所で病死したという。そこで空き家となった幽霊塔を買い取ったのが丸部朝夫。道九郎は一足先に幽霊塔の様子を見に行き怪美女の松谷秀子と知り合う。道九郎は、非常な美女で意志が強く謎ばかりの彼女に惹かれていくのだが、彼女には命掛けの密旨があり…。 最初の頃で「日本で国王??」と思ったんですが、読んでいくと日本人名だけどイギリス人の物語なんだね、と分かります。 原案はアメリカの女流作家A・M・ウィリアムソンの『灰色の女』で、黒岩涙香が翻訳しつつオリジナルを入れて書いたということ。 このあとは幽霊塔の秘密を巡って、怪人物たちがぞろぞろ出てきて怪事件がゴロゴロ起きる冒険活活劇物語になります。 怪美女、松谷秀子の謎。 お紺婆さん殺害真犯人は? 秀子を見張る怪人物たち。 丸部家に伝わる暗号は、時計塔の秘密を解く鍵なのか。 監禁部屋のある蜘蛛屋敷での冒険。 迷路となっている時計塔の内部に隠された秘密。 川からあげられた首なし死体。 謎の医師が請け負う仕事とは? 幽霊塔と屋敷のからくり迷路。 ヒロインの秀子の身の上と秘密が二転三転、まさに「なぜこんな運命を背負ってしまったのか」という複雑さです。 これだけの運命を一人で背負って一人で立ち向かうとはなかなか凄い女性でした。 最後は「大団円」なので(かなり無理矢理感もあるが)ご安心してお楽しみください 笑 【生命保険】 ここに書出す枯田夏子嬢(日本人名だけどイギリス人)は、継母に隔てられ実父から離れて憂世を嘆き暮す者なり。 女教師となりある大家に雇入れられた夏子嬢のもとに一通の手紙あり。手に取り上げし夏子嬢は色を変えたり。それは父の死したる知らせ状なり。 亡父と継母の屋敷に駆けつけたれば、父はすでに棺に納められ別れもならず。しかしてその夜中、夏子嬢は墓場に埋められたはずの亡父の顔を見たり…。 …題名が「生命保険」だし、話を通して継母(父の後妻)の狡さは表れているので、まあそういう話だよね、と見当は付きます。 これも終盤無理矢理感もありながらも一応の大団円。 こちらに収録の二篇とも、この時代ながら一人で逆境を切り開く女性が強いです。
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