無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※こちらの作品はブックライブ for Android、ブックライブ PLUS for Android、ブラウザビューアではダウンロードおよびオフラインでの閲覧ができません。
Posted by ブクログ
【900冊目記念レビュー】誘拐されたヴァイオリンの天才少女を探せ! ハードボイルドの名作シリーズ、第102回直木賞受賞作
■あらすじ
私立探偵沢崎のもとに依頼の電話が入る。依頼人の自宅に行くと、いきなり誘拐犯の扱いを受けてしまう。事情を聞くと、依頼人の娘であるヴァイオリンの天才少女が誘拐されてしまったというのだ。
警察から犯人扱いをされる沢崎だったが、続けて犯人から身代金の運搬を指示されてしまう。図らずも誘拐事件に巻き込まれてしまった沢崎は…
■きっと読みたくなるレビュー
900冊目のキリ番記念に読んだのは、骨太な私立探偵小説、ハードボイルドの名作。第102回直木賞受賞作です。
始まっていきなり面白い。依頼人から呼び出されたと思ったら、あっという間に事件に巻き込まれる。ドタバタ劇から主要人物の背景説明が一気になされ、探偵フェーズに入っていく。もう物語なら抜け出せず、最後まで一気読みですよ。
なんつっても主人公である沢崎がカッコいいすね~ 令和の時代だと絶滅してそうな男くさい男、相手が警察だろうが暴力団だろうが決して負けず、自身の考えを貫いてゆく。そんな彼もかつて仲間との間でとある出来事があり、心の傷を抱えている。
もはや精神力だけで私立探偵を続けているようにも見えてきますね。依頼人のため、真相を導くため、無骨でクールにひとつひとつ丁寧に捜査を進めていくのです。他の登場人物たちも人間臭くっていいすね。特に刑事やヤクザたち、いかにもプライドの塊って感じで最高に好きです。
またストーリーも秀逸ですよね。ひたすら人探しになりがちな私立探偵小説ですが、いろんなイベントが差し込まれて読み手を飽きさせない。
中盤、身代金を追って、とある老婆を尾行する一幕があるんですが、どうなることやとドキドキハラハラの緊迫感に潰されそうになる。さらにこの局面では、驚きの真相が待ち受けており、読者はすっと足をすくわれるのです。こういった工夫された展開が素晴らしいんすよ、もう安心して楽しめますよね。
物語が終盤になると、いよいよ真相が浮き彫りになってくるんですが… 果たして大金の使い道は何だったのか? この誘拐事件は何だったのか? 本作におけるコアとなる謎については、なかなかの強烈な事実が提示されます。人それぞれ様々な想いや背景があるのはわかるけど、犠牲者は声をあげることができないことを忘れてはいけません。
ハードボイルドとしても、ミステリーとしても楽しめる名作でしたね~。読み終わったあと、じっくりと余韻に浸ってしまう作品でした。原尞先生の沢崎シリーズ、まだまだ読み残してるので、ゆったりまったり読みたいなーと思いました。
■ぜっさん推しポイント
本作の強みは「古めかしさ」ですね。何でもクラシックの良さってのがあって、眺めていると味わい深く吸い込まれてしまうような、あの感覚です。
沢崎の目線で物語が語られてゆくのですが、ひとつひとつの行動が良く言えばシブイ、悪く言えば古臭い。ビル窓ごしにブラインドを開け、夕焼けが広がる街並みを眺めて思いをはせるなんざ、今どきキザすぎて誰もやりません。でもそれを沢崎がやると、とてつもなくカッコイイんすよ。往年の石原裕次郎を思い出しちゃいました。
Posted by ブクログ
この2週間、ハードボイルド小説を立て続けに3冊読みました。
本家チャンドラー「ロング・グッドバイ」、それに日本のチャンドラーと言われている
原尞の「私が殺した少女」と「愚か者死すべし」です。
3冊とも文章が簡潔で大変読みやすかった。
個人的には「私が殺した少女」が一番面白かった。
その中の一件を紹介しましょう。
『私はパッケージを破ってタバコを一本抜き取ると、
フィルターをちぎり取って火をつけた。
二人は、それを不思議な儀式でも見物するかのよう目つきで見ていた。』
これら小説はこのタバコを吸ったときのように、すうーと一気に文章が入ってくる。
フィルターやパイプをつけて吸った時のように屈折して喉に入ってこない。
ハードボイルドとは堅く茹でた卵のこと、でも続けざまに3冊も読むと
私の頭の中は、「スクランブル・エッグ」になりそうです。
彼は作品のほとんどを一人称で書いている。
これは素晴らしい事だと思います。
Posted by ブクログ
西新宿の私立探偵・沢崎が主人公。実はシリーズもので、本作の1年前に出た『そして夜が甦る』が1作目。作中にも、前作をうかがわせる記述がところどころにあるのだが、ストーリー的には前作を読んでいないとわからないことはないと思われる。
探偵・沢崎のもとに依頼の電話が入る。行方不明の家族を探す依頼だったが、「依頼人」宅に行ってみると、すでに警察がいて、沢崎は誘拐犯の一味と疑われる。わけがわからないまま、彼は少女誘拐事件に巻き込まれ、「犯人」の指示で身代金受け渡し役を引き受ける羽目になる。あちらこちらと振り回されて、挙句に殴られ、身代金を奪われる。
少女はバイオリンの名手で、将来を期待されていた。その家庭にはなかなか複雑な事情があった。警察からの犯人の一味ではないかとの疑いが晴れぬまま、沢崎は少女の叔父の依頼で、さらに事件の背景に迫っていくことになる。
果たして少女は無事なのか。男のような女のような声の「誘拐犯」は誰なのか。
最後に沢崎が突き止める「真相」とは。
ストーリーはかなり練られたもののように感じるが、それよりも文体が特徴的である。冒頭近くの
まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話ではじまった。
というのがすでになかなかすごい。幾分、シニカルでしかし自虐が過ぎるわけではない文体が、作品全体の空気をどこかさらりとしたものにしている。個人的にはところどころ凝りすぎで若干鼻につくのだが、ベタつかない点は美点である。
沢崎は、引用文に違わず、誘拐犯と疑われたりぶん殴られたりと散々な目に遭うし、犠牲者の描写もそれは凄惨なのだが、全体として硬質で都会的。
最終的に沢崎がたどり着く「真犯人」には、私としては少々違和感があるが、見事なタイトル回収、ということになるのだろう。
巻末のあとがき代わりの「ある男の身許調査」によれば、著者の経歴はなかなか異色なようである。さまざま蓄積された「教養」が文体の背後にあることがうかがえる。バーテンダーが『白痴』というタイトルの本を読んでいるのが見え、沢崎がチップを渡しつつ「『悪霊』も読みたまえ」というと、バーテンが礼を言いつつ「失礼ですがこれは坂口安吾ですので・・・」と返すエピソードが個人的お気に入りである。
沢崎が乗るブルーバード。身代金受け渡しのために使用されるあちらこちらの公衆電話。両切のタバコ。バーや喫茶店。重病の暴力団幹部とその用心棒。
さまざまな「小道具」が作品の雰囲気づくりに一役買っているのだが、実はかなり「時代」に依存しているものであったりする。本作発表は平成元年だが、多分に昭和の香りがする。西新宿という、都会だけれどハイソではない舞台でそれらが映える。
本書の著者はもう亡くなっているので、新作は望めないが、果たして令和の時代のハードボイルドというのはどういうものになるのだろう。公衆電話で探偵が右往左往させられることもないし、タバコをぷかぷか吸ったりできないし、泥酔して暴力沙汰もまずいし、反社勢力を登場させるのも、LGBTQを揶揄するのも慎重を要するだろう。おんぼろのブルーバードを爆走させて無断駐車もできないだろうなぁ・・・。
それでも探偵はクールに都会的でいられるものなのか。それはそれでちょっと読んでみたいような気もする。
Posted by ブクログ
久しぶりにじっくりとサスペンスを堪能しました。
ハードボイルドミステリーでしょうか。
感傷や恐怖の感情に流されない探偵・沢崎が誘拐殺人事件の犯人を追います。
将来を嘱望されたヴァイオリンの天才少女が誘拐される。要求された身代金は6千万円。
沢崎は、その身代金の受け渡しに 巻き込まれてしまう。
身代金受け渡しに失敗した彼は、彼女の生存に責任を感じながらも、冷静に犯人を絞り込む。多くの関係者が絡み、ストーリーが緻密で繊細。
結末には、違和感が残りますが、関わった人達の心情を描きながら核心に近づく魅力的な作品でした。
作家原尞氏も直木賞受賞の本作も 全くノーマークでした。本とコさんご紹介、的確で素敵なレビューありがとうございました。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※こちらの作品はブックライブ for Android、ブックライブ PLUS for Android、ブラウザビューアではダウンロードおよびオフラインでの閲覧ができません。