ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

小説・文芸
1,144円 (税込)

5pt

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イギリス情報部の極秘事項がソ連に漏洩した。スキャンダルを恐れた上層部は、秘密裏に二重スパイの特定を進める。古株の部員カッスルはかろうじて嫌疑を免れた。だが、彼が仲良くしていた同僚のデイヴィスは派手な生活に目を付けられ、疑惑の中心に。上層部はデイヴィスを漏洩の事実ともども闇に葬り去ろうと暗躍するが……。自ら諜報機関の一員だったグリーンが、追う者と追われる者の心理を鋭くえぐる!

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 海外文学
  • 出版社
    :
    早川書房
  • 掲載誌・レーベル
    :
    ハヤカワepi文庫
  • タイトル
    :
    ヒューマン・ファクター〔新訳版〕
  • タイトルID
    :
    186404
  • ページ数
    :
    496ページ
  • 電子版発売日
    :
    2012年09月28日
  • コンテンツ形式
    :
    .book
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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ヒューマン・ファクター〔新訳版〕 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    これは翻訳の妙でもあるのだろうけど、文章の隅々まで英国っぽさが溢れる小説。人物の性格造形から気候や街の雰囲気、ウイスキーや料理、菓子等の小道具に至るまで、芯が一本ビシッと通っていて、知らずしらずのうちに世界に引き込まれた。

    0
    2021年07月16日

    Posted by ブクログ

    「ヒューマン・ファクター」。人間的要因、とでも訳しますか。
    これは、大人の男性には堪らない小説でした。
    手に汗握る、スパイ小説。紛れもないスパイ小説なんですが、そういう状況に置かれた男性の心理描写。葛藤。
    銃の撃ち合いやら車の追っかけっこなんか、ゼロです。
    後半は物凄い緊迫感。やめられないとまらない、でした。

    1978年にイギリスで書かれた小説です。
    書いたのは、グレアム・グリーンさんという人です。
    グリーンさんは1904年生まれのイギリス人さん。1991年に亡くなっています。86歳くらいまで生きたんですね。
    で、1930年代、つまり30歳前後にはもう、小説家として成功していたみたいですね。
    そして、20代で共産党に入党。
    この辺で、誤解してはいけないなあ、と思うのは。
    1950年代くらい以降、スターリンさんが、隠しようもないくらい、相当な虐殺や警察国家をつくるまでは、
    共産主義、というのは、世界中のインテリさん、理想主義者、ロマンある知識人的な若者たち、にとって、ある種の期待を込められる希望だった、ということですね。
    で、第2次世界大戦が1945年に終了して、数年内に東西冷戦が始まるまでは、共産主義というのは、そんなに蛇蝎のように否定されるものではなかったはずです。

    一方で、子供の頃からスパイ小説好きだったグリーンさんは、第2次世界大戦前から、MI6に入って、諜報活動、スパイをやります。
    マジで、007の世界な訳です。
    で、終戦直前くらいに辞職してます。
    この辺、僕も不勉強ですが、若い人気作家が、同時にスパイでもあった訳ですね。

    その後は、人気小説家として、不動の地位、死ぬまで続きました。
    とは言え、一部の「スパイ小説ファン」「ミステリー愛好家」「イギリス文学ファン」以外には、そんなに知られてないですね。
    名作映画「第三の男」の原作者でもありますが、これはグリーンさん本人が、「映画は素晴らしいけど原作はそうでもない」と発言しているそうです。

    今回、読んでみたのは、大した理由でもなくて。
    「娯楽小説読みたい気分だなあ。ミステリーっていうか、犯罪モノとか」
    という気分と、
    「丸谷才一さんが、褒めてたなあ。グリーンさん」
    そして、
    「読んだことのない作家を、外れるかも知れないけど、読んでみないとなあ」
    という感じで。

    で、外国文学は、翻訳が命。
    これはほんと。
    ぱぱっと調べて。
    代表作らしく評判が良い。そして割と最近に新しい翻訳が出ている。電子書籍にもなってる。ってことで、「ヒューマン・ファクター」。

    ###########

    主人公は、どうやら50代らしい男性の、カッスルさんです。
    イギリスの情報部で働いています。
    現場と飛び回るわけじゃなくて、ロンドンのデスクワークです。
    アフリカなどの情報の受けや、その整理をやってます。
    割に地味な仕事、地味な風貌、地味なブ男な感じ。
    年下の部下デイヴィスと、実質ふたりの部署っぽい。
    郊外に、妻と子と住んでいます。これがなんと、黒人妻、黒人の子。
    カッスルさんは、諜報部員として南アフリカにいたんですね。
    そのときに、スパイとして使った黒人女性に恋をして。
    南アフリカですから。アパルトヘイトですね。白人が黒人と愛し合うなんて、えらいことなわけです。
    色々あって、なんとか彼女を逃がして、自分も脱出。その辺りは全て、上司組織にも隠さず報告済みな訳です。問題なし。

    さてこの、カッスルさんの部署の情報が、どうやらソ連側に漏れている、ということになります。
    誰かが、スパイなんじゃないか?
    って・・・みんな仕事がスパイですから、つまり、「二重スパイ」がいる・・・隠れている・・・。
    さあ、それは。カッスルなのか。部下デイヴィスなのか。
    罠。監視。不審。不信。不安。嘘。猜疑心。恐怖。

    物語は、疑い迷う、上司たちの視点の章と、
    疑われている一人である、カッスルの視点の章で描かれて。

    #######ここからは、ネタバレです#######
    上司たちは、部下デイヴィスが犯人、と状況証拠で判断、デイヴィスを暗殺しちゃう。
    だけど、二重スパイは、カッスルだった。
    カッスルは、妻をアフリカから脱出するときに世話になった友人がいた。
    その人に本当に世話になった。
    その男性は、共産主義者だった。
    その人への友情義理から、ソ連側に情報を流していた。思想としては、全く共産主義じゃないけど。
    そして、カッスルは恐れる。いつバレる。もうだめか。バレてるのか。バレてないのか。
    デイヴィスが死んだ。もうこれ以上、情報を漏らしたら、自分が犯人だとバレる。引退しよう。

    そんなときに、MI6の仕事で入った情報。
    それは、そのまま許すと、アフリカの黒人たちに大変不利になる、米英の陰謀だった。
    苦悩したが、それを、ソ連側に流すんですね。
    もう、カッスルさんは、祖国も思想も大義名分も、その欺瞞性に倦んでいます。
    ただ、黒人の妻と自分との、愛の共同体だけが、彼にとっての祖国なんですね。
    それには、アフリカを、黒人を、見殺しにはできないんですね。

    その情報を出した後で。
    周辺の「連絡網」に異常が起こります。
    もうダメか。妻子は、母の実家に、喧嘩したことにして去らせる。
    さり気ない尋問に、職場の人が来る。ダメか。殺されるか。東側の救出は、あるのか。
    結果、ぎりぎりタッチの差で、東側に救出、脱出、亡命。
    モスクワで何とか無事暮らす。
    だが、妻と子とは別れたまま。それが辛い。それが辛い。妻子もいずれモスクワに呼ぶ、と東側は約束してくれたのに・・・。

    ###############

    と、言うお話です。

    なので、ほとんどは、サラリーマン的な暮らしをしているカッスルさんの日常。
    そして、サラリーマン的な暮らしをしながらも、二重スパイが誰なのか、考える、上司たち。
    という、地味な状況。
    全体の1/3くらいを過ぎて、多分そうだろうな、と思っていたけど、「カッスルが二重スパイ」と分かる。

    ●もう、そこからの、心理サスペンスが一級品。

    ●それから、敵味方を問わず。
    諜報に生きて暮らす人々の、神経の疲れ具合。孤独感。不信感。寂寥感。この描写がまた、絶品で。
    これは、ある意味、何の仕事をしていても、愛無き暮らしに忙殺されていれば、同じように当てはめれる心理。

    ●そして、そんなにクドくなく、語られ、展開される、世界観。
    共産主義が正義でもない。
    でも資本主義陣営が正義でもない。
    黒人、という立場を通した時に見える風景。
    仁義なき戦いの中で、主人公と妻が、守らなければならない、人としての最後の砦というか。
    ヤクザ映画風に言うと、それでも捨てられない義理というか。
    そして。
    そんな主人公の周りで行われる、なんだかもう、手段と目的が数回転くらいこんがらがったような、
    諜報戦。ゲーム。

    いやあ、このジリジリした心理描写、圧巻です。脱帽です。
    神なき孤独な街を往く男の背中、という意味では、男性のハードボイルド・ミステリー娯楽作なんですが。
    とてもそれでは収まりきらない。
    小説ならではの心理描写、サスペンス。
    確かに、原作を手がけた映画「邪魔者は殺せ」「第三の男」に通じるテンション、焦燥感。

    女性向きではないでしょうが、えらく、面白かったです。
    丸谷才一さんの「快楽としてのミステリー」で確か知ったんですけどね。さすが丸谷氏。

    ちなみに。
    「半分、実話小説じゃないか」、という噂があるらしいですね。
    キム・フィルビー、という名前でネット検索するとわかるんですが。
    雑に言うとグリーンさんがMI6時代に、仕えていた上司さん。
    この人が、MI6でかなーり偉くなったんですけど、実は共産主義者で、ソ連の二重スパイだった。
    1950年代の英米のスパイ戦略は、モスクワに漏れまくっていたそうです。
    で、ばれて、1960年代かな?にソ連に亡命したんですね。
    その後は、モスクワでKGBで働いていた。
    1988年か、そのへん、冷戦終結直前に逝去。

    この人と、グリーンさん。
    ゴルバチョフの雪解け時代にですね。
    グリーンさんは何度かモスクワに行って。
    再会してるんですね。
    相当、仲が良かったみたいです。

    面白いですね。

    グレアム・グリーンさん、大人の味わいのある作家さんですね。
    渋いです。
    ジョルジュ・シムノンさんの、イギリス版っていう感じですね。
    次々続けて読みたいわけではないですが、うん、四〇代から読み始めるくらいで、正しい作家さんだと思いました。
    お子様にはね、渋すぎて。面白くないだろうなっ・・・と(笑)。

    そんな、歳を取ることの旨み、を、味わえるのも、読書の快楽ですね。

    0
    2014年03月30日

    Posted by ブクログ

    007の痛快なスーパーマンの諜報部員ではない。地道な情報担当の諜報部員の日々が息苦しく描かれている。主人公は妻のために祖国を裏切った二重スパイ。疑惑・陰謀・奸策に囲まれてる。家族とともに生き抜くために、自分を隠しながら全てを疑い、真実を判断しなければならない。小さな過ちは破滅につながる。心の支えは妻と息子、しかし家族に真実を話すことも許されない。孤独と愛、信頼と裏切り、人生でのどうしようもない不条理が濃縮されているよう。その中で懸命に生きる主人公たちが切ない。緊迫感に溢れたストーリー。

    0
    2013年05月07日

    Posted by ブクログ

    スパイ小説の傑作と呼ばれているだけある。一気に読み終わった。たくさん出てくるウイスキーの銘柄が気になる。

    0
    2019年01月16日

    Posted by ブクログ

    グリーンによるなんとも物悲しい大人のスパイ小説
    ル・カレほど小難しくない
    いかにもイギリスらしい小粋な小説だが、上記二人に比べればイアン・フレミングなど子供の活劇に過ぎない

    0
    2026年04月14日

    Posted by ブクログ

    「ヒューマン・ファクター…人間や組織・機械・設備等で構成されるシステムが、安全かつ経済的に動作・運用できるために考慮しなければならない人間側の要因のこと」(Wikipedia)

    舞台は第二次大戦後冷戦時代のイギリス諜報部。
    アフリカ情報担当である諜報部員カッスルは、すでに定年を過ぎても仕事を続けているが、その理由は自分でも解らず、常に「引退」を考えていた。
    そこへ、所属する部署に内部調査が入る。
    誰かによる情報漏洩の疑いを明らかにするため……。

    イギリス諜報部というと「スパイ大作戦」「007」など派手なイメージがあるが、まったくそんな描写はなく、淡々と日常を描きながら疑心暗鬼が高まっていく様子が中心。
    それは、主人公カッスルの好物である、J&Bスコッチの喉を通る甘く芳醇な香り、それで
    いてキリキリと内臓を締め付ける刺激にも似ている……。

    「我々はみんな“箱”の中にいる」
    「あなたは言う、私は自由ではないと。
    しかし私は思いどおりに手を上げて、おろしている。」
    終盤に差し掛かった時にカッスルが引退を告げる。

    物語は、ここからいよいよクライマックスへ向かっていく。

    そして、わたしはこの結末が大好きだ。
    どう好きなのかは、未読の人のために言わないでおく。

    0
    2023年01月19日

    Posted by ブクログ

    スパイ小説ですが、007みたいな感じではなく文学作品という感じ。ヒューマンファクターのタイトル通り、登場人物のもつ異なる性格や背景がストーリーを動かしていきます。

    好きなフレーズ
    “我が国の人たち(my people)なんて話をしないで。わたしにもう同胞はいない。あなたが我が民(my people)なの”

    0
    2020年11月08日

    Posted by ブクログ

    スパイは、いつ何時なってしまうかわからない。愛する家族の為なら、一歩踏み出してしまうのだろう。でも、悲惨の中でも、そこはかと出てくるユーモア。さすが、グリーン。読者を飽きさせずに、一気に読み進ませてしまう。

    0
    2020年04月25日

    Posted by ブクログ

    静かな話なんだけど、最後まで一気に読み進めた。
    007みたいな華やかさはないけれど、はらはらしました。

    0
    2020年03月10日

    Posted by ブクログ

    スパイ小説だが複雑な複線があるわけでないシンプルなプロットだ(最後のカッスルの役割が明かされるところは少しひねった感じだが)。しかし強く引き込まれた。いかにもイギリス人と言うシニカルな視点。愛と怖れをコインの裏表として描いている。

    最後のほうになってセイラの視点で描かれる転換は何か他の本で同じような手法を読んだ気が。そこに限らず後に続くスパイ小説には大きな影響を与えているのだろう。ただひとつうらみがあるとすれば、うますぎてスルスル流れてしまうような感じだろうか。

    0
    2018年11月05日

ヒューマン・ファクター〔新訳版〕 の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 海外文学
  • 出版社
    :
    早川書房
  • 掲載誌・レーベル
    :
    ハヤカワepi文庫
  • タイトル
    :
    ヒューマン・ファクター〔新訳版〕
  • タイトルID
    :
    186404
  • ページ数
    :
    496ページ
  • 電子版発売日
    :
    2012年09月28日
  • コンテンツ形式
    :
    .book
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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