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昭和4年に生まれ幼い時から戦争の時代を生きてきた著者。第二次世界大戦後も死刑囚と接する拘置所の医務技官として、また作家として、常に人間の生と死に向き合ってきた。子どもの頃は怖ろしい存在であった死が、医務技官して接した死刑囚の信仰心によって劇的に変化を遂げたこと。79歳で突然迎えた最愛の妻の死。そして81歳の時に心臓が停止して死の淵をさまよったこと。医師・作家・そして信仰の徒としてのこれまでの人生と、その中で続けてきた死についての思索の軌跡を素直につづる。【目次】はじめに/第一章 少年の心に植えこまれた死/第二章 死へのアプローチ/第三章 迫りくる老いと死/第四章 生を支える死と宗教/おわりに
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Posted by ブクログ
小説家・精神科医・キリスト教徒である著者が生と死について説いている
人の行動原理を心理学だけで説明することはできないという点は同意
著者はその根底には魂があると述べていたけど、私は実存主義寄り(?)なのでそれだけでは弱いと感じた
どんな現象も分子生物学的に説明できるはずだとどこかで思っている節がある
だが実際にそんなことは不可能であることも理解はしていて、それを補う(という言い方は違うかもしれないけど)うえで宗教という存在は必要なのかもしれないと本書を通して感じた
著者はキリスト教徒の立場から宗教の必要性を説いていたが、フラットな感情で書こうと努めている様子が伝わってきたのが良かった
個人的には必ずしも信仰を持つべきだとは思わないけど、幼少期から宗教について考えることに意義はあると思う
宗教について理解することで人間の力の及ぶ範囲に限界があることを知ることができる
私は大人であることの条件の1つとしてメタ認知できるようになることがあると思っていて、それはこのことに寄与するのではないかな
Posted by ブクログ
著者は東大医学部を卒業したあと、東京拘置所で医務技官を務めるなどした精神科医。囚人を観察していると、死刑囚と無期囚で明らかに違いがあるという。死刑囚は、毎日、「明日殺されるかもしれない」という非情に切迫した濃密な時間を生きているのに対して、無期囚は無限にうすい時間を生きている。無期囚は一つの鋳型にはまって安定し、感情を麻痺させ、無感動となり、刑務所の生活に適応するという。そもそも、モノゴトに関する感心が少ないともいう。
これを自分たちの身辺に置き換えていえば、モノゴトに関する感心が少ない人は、現代社会にという刑務所の中で、無期囚として生きているということなのかもしれない。
「人間は生きている限り、何かに興味を持つことによって救われると思う」という。「現代は死を遠ざけたことによって、逆に生をも遠ざけてしまったと言えるでしょう」ということは、とても説得力があるコトバに感じた。
著者の加賀乙彦さんは、こうした経験を通して洗礼を受け、キリスト教徒になる。そして、本書では「頑張る力」より「祈る力」と説く。それが、本書の題名『科学と宗教と死』ということにつながっていく。
人間の体の中には底知れぬ海があり、宇宙がある。いったい、このような美しいものを誰が作ったのか。何か大きな存在、「神秘」ということばでしか言いあらわせないものを感じる、というのは、著者が医学部出身で人体についてよく知っているだけでなく、囚人と接することで、人の心の奥底に潜むものを見つめてきたからこその言葉だろう。
Posted by ブクログ
「ヨーロッパでは科学が発達してくるのはルネサンスの頃ですが、もともと神の秘密を探るのが科学」だったということに驚きました。だからこそ、科学を「突き詰めて研究していくと結局『神』という概念に行き着いてしまうといいます」とのこと。科学には疎いですが、人間の体の精巧さを思うと、そこに創造者の存在を思わずにはいれない。
本の趣旨とは関係ないが、加賀乙彦の大学時代の教授が内村鑑三の息子、内村祐之だっということが嬉しかった。
もう一点。太平洋戦争時、3月10日の東京大空襲を指揮したルメイ将軍に、戦後航空自衛隊への戦術指導などの功績により、日本政府は勲一等旭日大綬章をおくった、ということに呆れた。このことを知っている人はどのくらいいるのだろう。
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