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いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない。危機の本質を捉える緊急出版!
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Posted by ブクログ
★難しさばかりを痛感★整然とした国境線にみえるように、中東は外部勢力による人為的なルールで縛られている。「少数民族」とは自然に生まれる民族ではない。多数派が自らと異なるものと決めて特定の政策を作るから誕生する。そして少数民族が独立すると新たな少数民族を生み出す。民族はどこまでも分裂していくだけに解決...続きを読むは簡単ではない。悲しいことに中東に解決できる勢力はないが、解決策に対する拒否権を持つものは多い。
【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛。池内恵先生の著書。現代の中東問題の根源は遥か昔にイギリスとフランスとロシアによって結ばれた秘密協定にある。中東問題、イスラム問題、イスラム国問題は多くの人にとって理解するのが難しい問題だけれど、本書を通じてこのような問題が発生している歴史的な背景...続きを読むを学べます。
現在もシリアを中心とした中東エリアは戦火と混乱の中にあり、悲惨な状況が終わる気配を見せていない。 この地域の争いの大元の原因は、オスマン帝国の衰退と解体に見いだせるが、そのときのサイクスピコ協定が諸悪の根源であるとの世の評判は的確ではない、と作者は述べている。 その理由をその後の歴史をたどりな...続きを読むがら紹介説明していて、本書の題名だとそこが主眼に思えるが、実はその後の地域の状況や現在の考察が主体になっている。そして、現在の様相はオスマン帝国が崩壊した頃に状況が似てきたのではないかと心配し、大国の影響力など大きな違いもあるが、今後の激変を予想というか懸念している。 本書は、なんで中東はいつも戦争しているのか?と感心ある人向けのいい入門書になっていると思う。
[解決策にして病巣]合意の形成から百年を迎え、日本の一部メディアでも改めて取りあげられることがあったサイクス=ピコ協定。外部から中東地図を描いたとして批判されることが多々あるこの協定の形成経緯やその他の条約に触れながら、現在の中東政治を高所から俯瞰した作品です。著者は、中東研究の第一人者と評しても過...続きを読む言ではなくなってきた池内恵。 「複雑だ」と評される中東政治を、その複雑さをそのままにゴロンと読者に突きつけてきた作品。決して読みやすい読み物ではないですが、中東政治や幅広く国際政治に興味のある方にはぜひオススメ。明快かつ安易な解決策など、現在の中東には存在しないということが痛感できる一冊です。 〜当時の超大国である列強という「医師」に、中東の国家と社会の「病」への処方箋を書く、その資格と能力があったかというと、それは疑わしい。しかしその当時の中東に、より適切に国家と社会を形成できる主体があったかというと、なかったと言わざるを得ない。それは現在でもなお残る問題でもある。〜 一気に通読できる分量も☆5つ
アラビアのロレンスから、「イスラム国」そして英国のEU離脱までが、頭の中でスーッとつながる。快読の一冊。
イスラム国等、中東情勢の混迷は続いている今日ですが、これは何も今始まった出来事ではなく、過去から続く問題が同じような形のまま現れているに過ぎないということを理解すること。それによらなければ、今日の状況を理解することが出来ません。その状況に「サイクス=ピコ協定」がどんな役割をはたしているのか。それを理...続きを読む解するためには、負の側面だけではなく、これが上手く利用され、この地域の混迷を一時凍結したことも知る必要があります。本書では、中東地域に渡る複雑な情勢について、ポイントとなる点を章ごとに詳しくまとめられています。一つ一つを丁寧に整理することにより、何が起こっているのかの見取り図が、かなり明るく見渡せるようになると思います。そして、複雑さは問題になりやすいのですが、安易に簡単な解決を行うことは悪であり、慎重さと対話がいかに重要であるかを考えさせられます。
高校世界史で「帝国主義列強の理不尽の象徴」として学ぶサイクス・ピコ協定。旧オスマン帝国の領土を、そこに住む民族に全く配慮せず英仏(露)で線引きして植民地化。しかし著者はその捉え方は(間違っていないとしても)一面的と考える。 まず以って、サイクス・ピコ協定はそのままの状態ではほとんど発効していない。...続きを読む著者は、むしろそのあとのローザンヌ条約、セーヴル条約への短期間の変遷の意味に着目する。詳細は略するが、要は列強も(自らのエゴは当然ありつつも)何はともあれ「つかの間の平穏」をのぞんだのであり、その時々に優勢だった勢力の主張を追認する形で次から次へと条約を改定していったのだ(次々と支配権を確立した少数民族に配慮したローザンヌ、それを平定して統一国家となったトルコに配慮したセーヴル)。 「・・・この三つの協定・条約には、それぞれに別個の根拠があり、それぞれに異なる難点を抱えている。これらの協定・条約は中東の問題の原因というよりも、むしろ、オスマン帝国の崩壊後に中東の社会が抱えた困難な条件に対して提示された、三つの異なる対処の方法なのである。三つの協定・条約は、中東問題の困難さを、それぞれに示している。これら三つの協定・条約と、それが結ばれた経緯の中に、近代の中東に国家と国際秩序を形成するという、今もなお結論の出ていない問題への、これまでの試みの成功と失敗がいずれも含まれている」(P.46) 今現にシリアで起きている大規模な難民問題を少しでも立体的に理解したいと思う人々にとって、必読の書と思う。
サイクス=ピコ協定を銘打って、池内先生が書かれているので、面白そうと思い手に取りました。 冒頭で池内先生が指摘されているように、サイクス=ピコ協定は大国による密約で悪でしかないもの、と私も思っていました。悪ではないわけではないですが、オスマン帝国崩壊に際して、1つの「解決策」として考えられたものだと...続きを読むいう視点を本書によって得られました。 皮肉なことにアラブの春によって、再び中東が混迷する中、欧米が手をこまねいている間にロシアが進出してくるという、100年前と同じような構図ができている、というのもなるほど、というお話でした。 国民国家を前提とした国境の線引き、というのはかなり破綻した考え方だと最近とても感じていますが、では中東の国々はどのような形になると中東の人々にとって”最善”といえるのか、本書を読むことでますます難しい問題に思えてきました。
「オスマン帝国なんてぶっ潰して、あいつらの領土を山分けしよう ぜ」とイギリスが持ち掛けて、「そりゃいい考えですな、旦那」と フランスが合意したのが1916年のサイクス=ピコ協定である。 その協定の詳細な解説かと思いきや違った。私も現在の中東の 混迷を考える時、この協定を頭に置いているのだが...続きを読む、著者はこの 協定だけが本当に中央混迷の根源なのだろうかと疑問を提示し、 中東の歴史や地政学、複雑に交錯した民族模様や国家間の関係 を解説した書だった。 サイクス=ピコ協定単独ではなく、セーブル条約・ローザンヌ条約 の3つをセットとして考えなければならぬと著者は説く。もうここで 躓きましたよ。私はセブール条約とローザンヌ条約を調べるところ から始めなければならなかったもの。 確かにサイクス=ピコ協定がすべての根源だとするには、この協定 内容がすべて守らていなければならない。でも、それ自体が無理。 だって、子供が考えても「それは無理だろう」っていう約束ばかり しているのだも、イギリスは。 サイクス=ピコ協定の前年、「アラブ人の国を作るのを認めてやる からこっちの味方になってトルコと戦え」とメッカの太守であった フサイン家との約束である、フサイン=マクマホン協定があるで しょう。 そうしてサイクス=ピコ協定の翌年には「ちっ、戦争にお金がかかっ て財政がピーンチ。あ、ちょっとお金貸してよ。貸してくれたらパレス チナに住んていいよ」と、ユダヤ人コミュニティのリーダー的存在で あったロスチャイルド家と約束したバルフォア宣言があるでしょう。 「うわ、どれも守れないわ。しゃあない。新しい条約作って線引きしな おそう」で、セーブル条約とローザンヌ条約が出来たのね。って、こん な理解でいいのか、私は。 イギリスにしてみたら自分たちは痛くも痒くもないから、どんな無理な 約束でもしたんだろうけれどね。でも、やっぱりこの三枚舌外交は 問題が多いと思うんだよね。 百年の呪縛は解けるどころか益々混迷を深くしているように思える。 ただ、本書で著者が書いているように難民が流出していることで 少数民族の問題がある程度解決に向かっているという面もある。 本当はあってはいけないことだけれど。 結局は力でしか状況は変えられないのかな。アメリカとロシアの仲介 でシリア内戦の、2度目の停戦合意が取り付けられたのはつい先日。 それなのに、反政府勢力の地域にロシア軍が空爆だよ。 大国の思惑に翻弄されるのは、いつも一般の市民なんだよね。どれ だけ血が流れて、涙が流れたら和平が訪れるのかな。 読んでいて余計に出口が見えなくなってしまったので、私はやっぱり イギリスの三枚舌のせいにしたくなったよ。
ちょうど知りたいと思っていた部分を、思っていたよりずっと深く教えてもらえた。 今の混迷の原因がサイクスピコ協定という単純な話ではなくて、もっと昔からの経緯の中の過程のひとつという話。
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【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛(新潮選書)
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池内恵
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