「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

1,023円 (税込)

5pt

神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇……。
右派も左派も誤解している「戦前日本」の本当の姿とは?

神話に支えられた「大日本帝国」の真実。
「国威発揚」の物語を検証するーー!


「筆者はここで、同じく昨年、凶弾に斃れた安倍元首相が唱えた「日本を取り戻す」「美しい国」というスローガンを思い出さずにはおれない。それはときに戦前回帰的だといわれた。
だが、本当にそうだっただろうか。靖国神社に参拝しながら、東京五輪、大阪万博を招聘し、「三丁目の夕日」を理想として語るーー。そこで取り戻すべきだとされた「美しい国」とは、戦前そのものではなく、都合のよさそうな部分を適当に寄せ集めた、戦前・戦 後の奇妙なキメラではなかったか。
今日よく言われる戦前もこれとよく似ている。その実態は、しばしば左派が政権を批判 するために日本の暗黒部分をことさらにかき集めて煮詰めたものだった。
つまり「美しい国」と「戦前」は、ともに実際の戦前とはかけ離れた虚像であり、現在の右派・左派にとって使い勝手のいい願望の産物だったのである。(中略)
このような状態を脱するためには、だれかれ問わず、戦前をまずしっかり知らなければならない。」 (「はじめに」より)


【本書の構成】

第1章 古代日本を取り戻す 明治維新と神武天皇リバイバル
第2章 特別な国であるべし 憲法と道徳は天照大神より
第3章 三韓征伐を再現せよ 神裔たちの日清・日露戦争
第4章 天皇は万国の大君である 天地開闢から世界征服へ
第5章 米英を撃ちてし止まむ 八紘一宇と大東亜戦争
第6章 教養としての戦前 新しい国民的物語のために


【本書の主な内容】

・「新しい戦前」と「美しい国」の共通点
・「神武創業」に新政府がこだわった意図
・「建国記念の日」が生まれた背景
・君が代はなぜ普及したのか?
・明治維新は「中世キャンセル史観」
・神武天皇に似ている「あの人物」
・フェティシズムとしての教育勅語
・女子天皇・女系天皇を排した井上毅
・忘れられる神功皇后と理想の女性像
・神社参拝は軍国主義的なのか?
・「東京」の名付け親・佐藤信淵
・天地開闢とイザナミ・イザナギ神話
・「弱小国家コンプレックス」が生んだ妄想
・戦意高揚に貢献した北原白秋と山田耕筰
・実証なき物語は妄想、物語なき実証は空虚 ……ほか

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「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    日本書紀や古事記に出てくる日本神話が、戦前の拡大路線、対外戦争の中でいかにプロパガンダとして利用されてきたかを分かりやすく辿る一冊。神武天皇の八紘一宇に始まり、イザナギやアマテラスの時代まで遡り、神話の発祥地としての宮崎県と鹿児島県の争いや、軍人に人気を持った竹内巨麿の「竹内文献」など、知らなかった

    0
    2023年10月27日

    Posted by ブクログ

    明治維新から77年で敗戦。敗戦から77年が昨年2022年。我々はいまだ明治政府に縛られている。いやそれどころか、亡霊のようにつきまとい、肥大化してさえいる。
    欧米列強と闘うためには西洋化が必須。
    江戸幕府にとってかわった薩長明治政府は天皇を担ぐ。
    しかし天皇は和服、では西洋化のシンボルにならない。

    0
    2023年08月31日

    Posted by ブクログ

    明治〜昭和初期にかけての、日本書紀や古事記を元にした引用が、読み辛いなと流していた。
    戦前〜戦中にかけて、分かりやすく勇ましく、読みやすくなって怖くなった。
    良い本だった。

    0
    2023年08月12日

    Posted by ブクログ

    いままで古事記と皇室の関係が「そんなわけなくね?」と不思議だったので、なるほどだった。

    「ネタがベタになるリスク」
    無批判に物語を受け入れる人って多いし、世間の空気がそっちの方向に行ったら逆らえなくなってしまう。あるある。

    私は100%否定になりがちなので、「あえて曖昧なままにしておく」は今後意

    0
    2023年07月28日

    Posted by ブクログ

    題名に強く惹かれ、入手して紐解き始めると、なかなかに愉しかった。出逢えて善かったと思える一冊だ。
    研究成果や論考を、幅広い読者に向けて判り易く説くという、「新書」らしい感じの一冊だ。題名から受ける、少し厳めしい感じでもない。6つの章が在るが、各章での話題は何れも面白い。
    第2次大戦の前後で「戦前」、

    0
    2023年06月07日

    Posted by ブクログ

    大日本帝国を宗教国家として見た時の、奇妙な天皇崇拝はどうやって形作られたのか?
    明治からの政府が作った上からの宗教と、草の根的な下からの宗教が結びつく流れが面白かった。
    木村鷹太郎、通称キムタカのオカルトとしか言いようのない日本書紀はそもそも世界の話をしていたという解釈は、抱腹絶倒するほどに面白いと

    0
    2024年03月30日

    Posted by ブクログ

    日本神話をほとんど知らなかったので読むのに苦労しましたが、いかに神話が都合よく解釈され、利用されてきたかよく分かります。
    東西問わず様々な宗教に共通することですね。

    0
    2024年03月10日

    Posted by ブクログ

    「戦前」を日本神話との関係で読み解く本。

    なるほどのところが多かった。

    もちろん、戦後の日本が、天皇を政治的に利用したとか、その際に日本神話を活用したというのを批判することは簡単ではないにしろ、可能である。

    が、著者は、そうした後付けの批判だけでなく、物語の重要性を認識した上で、それとどう使い

    0
    2023年09月23日

    Posted by ブクログ

    なんとなく知っていた内容ではあったが、それぞれの思想の成立過程など“戦前”が構築され現在に繋がる様子を知るには良書。

    0
    2023年09月01日

    Posted by ブクログ

    本書では明治維新から大東亜戦争まで、日本の神話がどのように利用されてきたかが解説され、それに関連するエピソードも紹介されている。そうすることで日本神話の入門書となり、また近現代史書にもなっている。さらに昨今の神話プームではびこる神武天皇実在論に対しても誤った考えであることを示唆する。

    国体の精華と

    0
    2023年08月16日

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