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日常の深底に澱む不透明で苛酷な世界。人生の悲哀を呑みこんだ苦いユーモアと豊かな情感とに支えられる阿部昭の小説空間。「自転車」「猫」「窓」「散歩」「手紙」「童話」「道」ほかの短篇で繋ぐ『無縁の生活』、「人生の一日」「水のほとりで」「天使がみたもの」などを収める芸術選奨新人賞受賞『人生の一日』。2つの作品集から20篇を収録。
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Posted by ブクログ
どこかなんか怖い本だった。 お化けが出るわけでもないし、恐怖体験があるわけでもない。 足元にある仄暗さが、一瞬真っ暗闇になるような。一瞬すぎてわからないんだけど、確実に囚われた、何かに、って思う怖さ。油断するとやられる。 「それが大人になればわかる」 日常の、目の前の現実を冷静に、一歩下がって眺...続きを読むめる時、その冷たさこそが本当なのだと思う。 世の中には、きらきらしたものやほかほかしたもの、そういうもので溢れているけれど。 輝かしいもの優しいものに囲まれていたい人は、この本は読めないんだろうなぁ…とぼんやり思ったのでした。
のっけからなんとなく飛ばしてる「自転車」が面白い! ゴミ溜めにかけこむ家族! 「やめなさい!やめろ!」必死のお父さん(阿部さん)! 学生時代の雨にまつわる切ないようなおかしいような話や、それちょっとヤバイ、とつっこみたくなるエピソード満載。 静かながらも心が動かされるエッセイ集です
『短編小説礼賛』が良かったので、本人の書く短編小説はどうなのかと読んでみた。 「猫」はシャム猫を飼って、蚤がいるだの、しょっちゅう腹を下す(胃腸が弱かったのだろう)だの文句を言い、「出来損ない」と呼び、挙句の果てにもがき苦しませた末死なせてしまう。小説としてみれば、味わいがなくはないのだが、この猫の...続きを読む扱いに心底腹が立つ。昭和の猫の扱いかたなんて、こんなもんだとは分かっているが。「散歩」でも、恩師の家の女中に劣情を抱く様子が描かれるが、インテリが、頭も容姿も悪い女を「こいつならやらせるだろう」と見くびるのが不快。まあ、振られるから、ちょっと間抜けなおかしみもなくはないのだけど。息子を描いた「言葉」「童話」「天邪鬼」などはなかなかいい。しかし「手紙」や「閣下」「災難」など読むと、やはりこの人の冷たさに心が寒くなる。ここまでが『無縁の生活』。後半の『人生の一日』は前半の私小説的な作品とは違う作風。 しかし、厭な気持に何回もなったにもかかわらず、いい小説だったな、という気がするのだ。 もうちょっと阿部昭、読んでみようと思う。
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無縁の生活・人生の一日
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