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大正九年の東京。祭りの夜に、カフェ「入船亭」の女給・照代が殺された。着物を血に染めて店を出てきたのは、同じ店で働く鈴子。鈴子の恋人・古宮は、彼女が殺したのかと考えるが──。はかない男女の哀歓を描き、驚きの結末を迎える表題作ほか五篇。人の心の底知れぬ謎、深く秘められた情念から、予想をはるかに超える真実が立ち上がる。不朽の傑作ミステリー、待望の新装版。(解説・泡坂妻夫)
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Posted by ブクログ
「戻り川心中」で美しい文章とミステリの両立に受けた衝撃再び 繊細な文章、そしてそれによって作られる世界観が美しくて、その美しさに浸りたくて読み返しちゃう 中でも「書きたい人のためのミステリ入門」で読書会として取り上げられていた「花虐の賦」の鮮やかさはさすが
連城ATB1位「花虐の賦」収録 「戻り川心中」と並ぶ最高傑作集。男女の色恋を繊細かつ緻密に描き、複雑に絡み合う美しき反転の数々で読者を魅了する。「花虐の賦」はまさに至極の一作。「戻り川心中」をも凌駕する驚愕の動機と、鴇子の生き様に強く心を突き動かされる。「未完の盛装」も氏らしい超絶技巧が光る。
ミステリ短編集。どれもが男女の歪んだ愛憎物語を描いたもので、じっとりとした情念と恐ろしいとまで思えるような驚愕の真相が待ち構えています。だけどそれと同時に、どの物語もひどく情緒にあふれていて美しく感じられました。じっくりと雰囲気に浸りながら読みたい一冊です。 お気に入りは「能師の妻」。恐るべきバラバ...続きを読むラ殺人と、人間消失の謎。その真相は衝撃的でした。もうあまりにとんでもない物語で絶句するしかなかったのだけれど。どこかしら美しく哀しい「愛」が見えるところもまた印象的なんだよなあ。 「花虐の賦」も好きな一作。逆転の発想というか何というか……こんなの思いつきません。これもまたあまりに愚かしいと言ってしまえばそれまでなのだけれど。美しく哀しい物語、の印象が強いです。
女と男のカタチいろいろ。愛のカタチもいろいろ。騙し、騙されそして深みに嵌って行く。騙している時、幸せになれると信じているんだよね。その盲目的な感情が負であることに気づかずに。どんな冷静な人間でも一度「恋」に、しかも報われない可能性を秘めている「恋」に堕ちてしまうと藻掻こう藻掻こうとして、正しい判断が...続きを読むできなくなってしまう。そういう危うい感情を清廉でありながらも、恐ろしさや悲しさを含んだ筆に載せるのがとても上手い。いつのまにか視点が男になり女になり、あたかも当事者のような臨場感で読み終えている。愁嘆とともに。
先日の読書会で紹介して貰った、はじめての直木賞作家連城三紀彦さん。ミステリー短編集。時代は明治、大正、昭和、舞台は能、新劇、カフェ、クラブ。ちょっとダークな男と女の情に引き込まれました。
二人の人物の関係性に焦点を当てた作品集で、いずれも騙し絵のように、見た目とは裏腹の真相が判明する。 「能師の妻」 能楽師藤生信雅の死の直前に正妻となった篠と、前妻の子である貢との心理的・肉体的葛藤を描いた物語。技量は秀でているが心が伴わぬ貢がどのようにして「井筒」を見事に舞うことができたのか、貢の...続きを読む遺体の一部だけがなぜ離れた場所に埋められていたのか、といったミステリー要素を持っている。 「野辺の露」 妾を作った夫暁一郎に裏切られた妻杉乃と、杉乃に同情した義弟順吉との道ならぬ恋の顛末を描いた物語。 二人の間にできた不貞の子暁介が暁一郎にいじめられていることを知って順吉が悩み苦しむ、そういう話だと思っていると足をすくわれる。 杉乃の順吉に対する想いを、「あなたの懐に潜んだ一匹の鈴虫の遠い鳴き声」に例えた表現が印象的。 「宵待草夜情」 元画家の古宮と、カフェの女給鈴子の束の間のふれあいを描いた物語。 カフェで鈴子と反目していた照代が殺され、現場の状況から古宮は鈴子が犯人ではと疑いを持つが、鈴子にぜひ見にいってほしいと言われた待宵草の群落を見て、鈴子の秘密、鈴子が何に苦しんでいたのかに気づく。 蛍の蛍光、喀血の血といったアイテムが真相にうまく活かされている、 古宮が友人の白川に対してしたことと、それを再現した鈴子のしたことが印象的。 「花虐の賦」 劇団の主催者で劇作家の絹川幹蔵と女優川路鴇子の二人の、人形師と人形のような関係を描いた物語。 絹川が、自作「貞女小菊」のヒロインとして思い描いていた女性とそっくりな鴇子に出逢う場面が印象的。 二人の関係をもとにした劇「傀儡有情」の祝賀会の夜に自害した絹川、その四十九日に後を追って自害した鴇子、そう思っていると足をすくわれる。 「傀儡有情」で絹川役を演じる片桐の視点でこの作品は語られるが、絹川が自害した理由が謎であり、鴇子が四十九日の日を間違えていたことなどから、見掛けとは裏腹の真相に片桐は気づく。 「未完の盛装」 クラブのママ葉子と、そのヒモのような存在の吉野を中心とした物語で、かなり複雑な構図を持った事件であり、最後まで読むと二段構えの反転構造を持っていることがわかる。 15年前の元夫毒殺をネタにした強請り、警察に届いた時効まであと3日あるとの元刑事からの密告、元夫の死亡日を巡る混乱、死亡日を知っている医師の殺人事件発生等、目まぐるしく話は展開する。 赤松はあることから勘違いに気づき、事件の背後にある真相を推理し、それを確認しようとある人物に接触すると、さらに意外な真相が告白される。犯人が隠そうとしたもの、医師を殺した理由等、すべてが反転する。 15年もの間、犯人が持ち続けていた心情が悲しい。
久しぶりに読んだ連城作品。大変よかったです。 文章はクラシックな感じがしますが、わかりやすくてストーリーに深みもあって、さすがといったかんじです。
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