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平城京への遷都で幕を開けた奈良時代。律令体制の充実期で、台頭する藤原氏はその立役者だった。唐の文物が輸入され、国際色豊かな天平文化も花開く。他方で長屋王の変、藤原広嗣の乱、恵美押勝の内乱など政変が相次ぎ、熾烈な権力闘争が繰り広げられた。飢饉や疫病にも襲われる。仏教を重んじ、遷都を繰り返した聖武天皇、その娘で道鏡の重用など混乱も招いた孝謙(称徳)天皇の治世を軸に、政治と社会が激動した時代を描く。
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Posted by ブクログ
「奈良時代」という「用語」は一応知られているかもしれない。が、「如何いう感じのモノ」というようなことは意外に知られていないかもしれない。その「奈良時代」を詳しく語らうというような一冊である。 「奈良時代」と言っても、もすかすると「710年 平城京遷都」という一言しか出て来ないという場合も在るであろう...続きを読むか?本書を読めば、「そうではない!」と、様々な要素が在って興味深いことに気付かされる。 「奈良時代」とは平城京を築いて都として政治を行い、様々な事柄も在る時代で、桓武天皇の代になって遷都を行うまでの70年間余りを指すことになると思う。本書では、その平城京を建設して行く少し前辺りから起こり、その70年間余りの経過を説いている。 70年間余りの経過は、所謂「律令国家」という仕組みが興って、それが少し行き詰って変容して行くという側面が在り、様々な勢力に政治の実権が遷っていた側面が在り、皇位継承を巡って諸勢力が互いに争った側面が在り、華々しい仏教文化が展開した側面が在り、不作の年が少し続く状態や疫病の流行という側面が在り、酷く劇的である。 「奈良時代」に関しては、“女帝”が多かった時代という特徴が在る。その事情としては、「若くして崩御した天皇の幼かった皇子に皇位を繋いで行く“中継ぎ”」ということでもあったようだ。そういう経過であったが、やがてそうやって皇位を受継いだ流れが途切れてしまい、別な流れの皇族が皇位を得て、遷都で時代の様相はまた変わって行くのである。 興味深い文物が豊富な奈良であるが、「修学旅行で大仏を観た」に終始してしまう場合も少なくないかもしれない。本書に触れると、色々と「この出来事に関連が在る場所…」と訪問してみる関心も高まると思う。そして伝わっている奈良時代からの文物に関して、それが産れた時代の様子が本書で詳しく判る。広く御奨めしたい。
藤原四家が一枚岩ではなく乖離していたということに大変興味を覚えた。また、南家の武智麻呂が主体であったというのも驚きであった。 称徳死後から桓武即位までも大変興味深く拝読した
長年にわたり奈良時代の政権構造や貴族官人の研究をされている木本好信氏による奈良時代の通史。詳細な人物評に特色がある。聖武天皇や孝謙(称徳)天皇に対する評価は厳しい。
20230308-0317 奈良時代(710〜794)は、天平文化が花開いた華やかな時代であると同時に、皇位継承をめぐる政争に明け暮れた「熱い時代」であった。私はこの時代は学生時代からとても好きなので、これまでも色々な研究者の著作を読んできたと思う(もちろん漫画も!)。大抵の場合、特定の人物や一族に...続きを読む肩入れもしくは思い入れが溢れ出てきている著作が多いのだが、本書は奈良時代の権力を握った政権(天皇とは限らない)の評価をかなり冷静に分析していると思う。恵美押勝(藤原仲麻呂)のことも、やや理想的にすぎると評しているが実績についてはきちんと評価していると思った。天武天皇(と持統天皇)の血統にこだわるなら、そもそも孝謙女帝をさっさと皇族に嫁がせて(むしろ婿入り?)子供(できれば皇子)を産ませ、その後配偶者を排除するか、皇族ならそちらを中継ぎ的に皇位につけて適当なところで継承させればよかったのではないのであろうか。それは現代人の感覚なのであろうか?
奈良時代の概説書として適切な1冊。 奈良時代と言えば、皇位継承を巡り、あるいは藤原氏を中心とした権力闘争の時代ということで、本書も政治史に関する叙述が中心ではあるが、ある事件であればその背景事情等にも著者の見解を含む説明が示されており、断片的な知識に止まらず全体的な流れについて理解が進む。加えて...続きを読む、経済、宗教、文化、外交等にも一定の紹介がされており、一般読者にとって分かりやすい内容だと思う。 主な出来事は、次のとおり。 藤原不比等の死(720年) →長屋王による皇親政治 →長屋王の変(729年)~直接の理由は、聖武天皇より血統の良い膳夫王(長屋王と吉備内親王の子)らを排除する藤原武智麻呂らの謀略とするのが著者の説 →武智麻呂政権の確立 ~著者は、房前は長屋王に近く、他の兄弟とは乖離があったとする。 →疫病の流行と藤原4兄弟の死(737年) →橘諸兄政権の成立 →藤原広嗣の九州左遷(738年)→広嗣の乱(740年) →孝謙天皇の即位(749年) ~実質的には光明・仲麻呂政治体制 →橘諸兄引退、聖武大上天皇死去(756年) →橘奈良麻呂の変(757年) →淳仁天皇即位(758年)→仲麻呂(恵美押勝)政権の確立 →光明皇太后の死(760年) →孝謙と淳仁の対立 →仲麻呂の「内乱」(764年)~孝謙が仕掛けたものであり、著者は仲麻呂の乱ではなく、内乱と評価すべきとする →淳仁廃位と称徳天皇の重祚 →道鏡による仏教政治 →称徳天皇の死(770年) →光仁天皇(白壁王)の即位 ~藤原永手(北家)、百川(式家)による擁立 皇位継承についての責任を回避したとして、著者の聖武天皇に対する評価が厳しいのが印象的。
710年の平城京遷都から794年の平安京遷都までの84年間、もしくは784年の長岡京遷都までの74年間の奈良時代、政争の時代だったことがよくわかった。 天武天皇系で繋いだ時代が称徳天皇で途絶え、天智天皇系に移行してしまう。 奈良時代のことを深く知ることができる一冊。
<目次> 序章 律令国家への道~天武天皇の後継者たち 第1章 律令国家建設と平城京 第2章 皇親政治と藤原氏 第3章 藤原四家の分立 第4章 相次ぐ遷都と大仏造立 第5章 専権貴族の登場 第6章 異形の仏教政治 第7章 新王朝と藤原式家 終章 皇位継承をめぐる政争の時代 <内...続きを読む容> そんなに奇をてらっていないオーソドックスな政治史。しいて言えば、藤原四家が必ずしも仲良くなかったことを知ったくらいか。細かい部分もあるが、奈良時代史を抑えるのにちょうどいいかもしれない。ただ、大仏造立については、詳細がない。
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奈良時代 律令国家の黄金期と熾烈な権力闘争
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木本好信
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