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夭逝、自死、その他さまざまな死のかたちは、作家の「人生」というもう一つの作品を完結させる重要なファクターとなる。漱石、荷風、谷崎、三島由紀夫ら明治・大正・昭和の文人四十九人に寄せられた追悼を通して、彼らの生身の姿を照射し、近代文学史の新しい一面を拓く。
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Posted by ブクログ
単行本が上梓されたのが1999年、すでに一度2002年に新潮文庫が出ていますが、再文庫化ということで、ともかくあの名作『追悼の達人』が帰ってきました。 病気や死がテーマの宮澤賢治や安部公房などの文学作品を、『病いの人間学』(1999年)で鮮やかに私たちの目の前で私たちの日常的に役立つように説いてく...続きを読むれたのが立川昭二でした。 あるいは追悼=死者を思って悲しみにひたるということなら、吉本隆明が『追悼私記』(1993年)という、美空ひばりや手塚治虫からミシェル・フーコーや昭和天皇への自分が書いた追悼文を集めた本を出していますが、それなら負けじと、わが鶴見俊輔も『悼詞』(2008年)というバートランド・ラッセルや高橋和己から司馬遼太郎や赤塚不二夫まで、総勢125名への半世紀にわたった全追悼文を集めた本を書いています。 この文脈でいうと、立川昭二は別として、両巨頭には申し訳ありませんが、二冊の本がどう逆立ちしても、タモリが赤塚不二夫の葬儀のときに、まるであたかも原稿をよんでいるような振りをして、まったくのノー原稿でながながと弔辞を述べたパフォーマンスにとうてい太刀打ちできません。 実は嵐山光三郎とは、その著書を読む前からのつきあいでした。といっても、実際に知っていたわけではなく、私が小学生の頃から雑誌『太陽』や『別冊太陽』を読んでいて、その編集長が彼だったこと、毎回とても興味ある特集を企画するこの人はいったいどういう人なのだろうという編集者に関心を持った最初だったこと、そこで知った本名が祐乗坊英昭(ゆうじょうぼう ひであき)という僧侶のような名前だったことなど、興味尽きない人なのでした。 本書は、追悼といっても故人を忍んで称えるばかりではない追悼もある、というところに眼をつけて書かれた本だと思います。 とかく追悼というと欠点や悪行は伏せておいて、美辞麗句を重ねたよそ行きの言葉で語られがちで、誰もひどい飲んだくれとか、とんでもない嘘つきだったとか、助平で淫乱で尻軽で不逞の輩だった、などとは、いくら今にも喉元から出そうでも、口が裂けても言わないのが人情みたいなところがあるからです。 まあ、自分のときを想像してかもしれませんが、つまり、いまあんなにひどいこの人に言わないから、私のときにもみんな言わないでねみたいな感じ。 それはともかく、現代において確固たる地位を確立している、文豪と呼ばれるまでになった作家なのに、批判される夏目漱石や罵倒される永井荷風、軽視される谷崎潤一郎という事実が面白くないわけがありまん。 きっと当人たちは言われて面白くなかったはずですが、ともかく嵐山光三郎が調べに調べつくして集めた追悼文の数々によって、その赤裸々な追悼文、死者に鞭打つこの所業、かつてのあの時代の文豪たちがいかに周りにねたまれていたかがわかるのか、それとも、はたまた、彼らがずる賢く、虎視眈眈と有名になるために他人を蹴落としてまで振舞ったのかの真相は、実際に読んでお確かめあれ!
今まで知らなかった明治~昭和の文人・文豪の素顔を紹介してくれる著者の文人・文豪シリーズ?はどれも楽しませてくれますが、本作も亡くなった文人に寄せられた追悼文を手掛かりに本人の素顔、そして追悼する側の感情まで明らかにした怪作であり、労作です。長生きしてしまった人には追悼してくれる人が少ないとはなんとい...続きを読むう皮肉でしょうか。
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