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時代をリードした詩人・経営者の指導力とは 世俗をにくむ詩人であり、バランスシートを読む経営者――相反する二つの顔をもつ堤清二は、100社を超えるセゾングループ企業に君臨する総帥として、何を考え、どう行動してきたのか。時代をリードした「文化産業」の盛衰を克明にレポートして、その実像に迫る力作ノンフィクション。『漂流する経営』を改題。
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Posted by ブクログ
西武グループは、もともと不動産事業を中心に手がける企業集団であり 多角経営は、あくまでその支援を目的に展開されたものだったという 鉄道が通り、百貨店が立ち、観光施設が整備されれば 土地の人気と価格はおのずと上がってゆくわけだ すると結果的にそれらは ひとつの街をデザインしてゆく仕事となった 創業者で...続きを読むある堤康次郎の興味は、とりあえずその儲けにしかなかったが 息子である清二は クリエイティブな情熱を街づくりに注ぎ込んでいった 堤清二…西武から独立を果たした流通グループ・セゾンの総帥にして 「辻井喬」の筆名を用い、多くの著作を残す詩人でもあった 堤清二の情熱は、父の剛腕主義に対する反発 ひいては資本主義社会へのヒューマンな反発に、源泉を持っていた たしかに、すべての社員が仕事を通じて何らかの満足を見出せなければ 経営者のやっていることは単に搾取であり 人間の冒涜だろう そういう考え方の元をただせば 家庭の暴君で、外に何人も女を囲っていた父親へのシンプルな憎悪だった ところが、そのように父と自分を相対化した結果 堤清二は、開明的であろうとするあまり、独善に走りがちな人物だった そして結局、自分もワンマンに落ちていった 堤清二の発想と人脈が 日本の若者文化に今なお残る絶大な影響をもたらしたのは事実だ 全国に出店したパルコはただのファッション総合店にあらず イベントやコンサートを精力的に行い、文化の発信源になっていった さらに伝説のタウン情報誌「ビックリハウス」の創刊 また西武百貨店の宣伝には、コピーライター糸井重里を起用した それらが、日本におけるポストモダン文化の… 誰がどんなオシャレをしてもおかしくない自由を打ち立てたのである ところが堤清二はある時期以降 パルコ文化を「サブカルチャー」と呼んで見下すようになった そしてメインカルチャーを上演するための新しい劇場を建てたことが グループ内の軋轢を生むにいたった 自身は経営者と文化人の、二つの顔を使い分けているつもりでいたが 個人的なプライドが邪魔をして、経営と趣味が混ざっていった ダブルスタンダードの始まりである 好意的に見れば堤清二は 土地を使ってマルチメディアをやろうとしたわけだ 今ならスマホひとつですむことを、箱物でやろうとしたのだ 先見性はなくもなかった しかしその、莫大な費用のわりに収益のあがらないビジネスモデルは グループの借金をみるみる膨らませた それになにより罪だったのは まるでスマホを扱うようにお手軽な考えで人々と向き合ったことだ なんのお膳立てもなくプロジェクトリーダーに据えられたあげく 自殺した部下もいた そして、そうやってせっかく作ったハコもまた 堤の理想が一般客のニーズに合致しない上、ソフトの供給もおぼつかず 思うような利益をあげられなかった いいたかないけどその有様は 芸術家から政治家に転身して世界をろくでもないことにした 例のアレを思わせないこともない 楽しむのが自由なら、それを抑圧するのも自由 自意識をめぐるどっちつかずの議論は、ニューアカブームを経て 手垢まみれのまま、今もこねくり回されている
1980年代に若者文化の象徴とされた西武・パルコ文化。 そのオーナーであった堤清二が、どのように西武百貨店を拡大し、さらにグループ企業を作り上げてきたかを記する。そしてその問題点を語るところで本書は終わっている。 バブル崩壊により、堤清二路線がどのような運命に陥ったかは、本書出版後の出来事である。 ...続きを読む堤清二の「思想」が正しかったのか、著者の危惧が正しかったのか。
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