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貧困層の子どもたちが集まるいわゆる「底辺託児所」保育士時代の珠玉のエッセイ。ゴシック文学的言葉を唱え人形を壊すレオ。「人生は一片のクソ」とつぶやくルーク。一言でわたしの心を蹴破ったアリス。貧窮、移民差別、DV。社会の歪みの中で、破天荒で忘れがたい子どもたち。パンクスピリット溢れる初期作品。『アナキズム・イン・ザ・UK』の後半部に大幅増補。映画・アルバム評、書評収録。
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Posted by ブクログ
底辺保育所でのエピソードが中心。 歴史があり、紳士的で、勝手にちょっと憧れも抱いていた英国であるが、実は凄まじい階級社会であることを思い知った。 もう同じようなキラキラした目でイギリスを旅行することなんて、できないだろうな…。
知らなかった一面とより鋭い切れ味。 自分にあまり馴染みがないってのもあるけど、第2章の海外を中心とした映画・本・音楽の評は、今までの作品では深く知ることはできなかった、著者のそれらの分野に対する造詣の深さというか、作品の深掘りの仕方や他の事象へとの結びつけ方が見事だった。むしろ本来はこっちが本当の...続きを読む姿なのかもしれないけど。 順番逆になったけど、第1章の「底辺託児所」編は、昔の文章ってこともあるけど、さらに遠慮のない文章というか、何も着せなず抜き身のまま綴っている感じがして面白かった。それは著者の日常世界に、オブラートに包めないハードさが至る所にあるからだろうけど。 そしてその紛れもない現実から鋭い洞察力で得る見識は読み応えがある。『BROKEN BRITAINーその先にあるもの』『ガキどもに告ぐ。こいのぼりを破壊せよ』『さらば、底辺託児所』は特に好きだった。 そして、あとがきに書かれているように、この頃の文章に嫉妬を覚えているというところに著者の熱量をとても感じた。 ”「餅は餅屋に」とよく言われます。 が、ティーンの頃にパンクのDIYスピリットにやられてしまったわたしにとっては、餅屋が焼かない餅こそすべてだったはずなのです。” 続編の『オンガクハ、セイジデアル』も早く読まなければ。
「”ぼくイエ”はデビュー作ではない!」で始まる「まえがき」、「物書きは天職ではない!」で始まる「あとがき」。意地か自嘲か、冷静に自己分析しているだけなのか。著者が過去の自身の著作を評価する。・・二作目の著作を母体にした新刊文庫。出世作”ぼくイエ”の時代よりずっと古い。懐かしかったろう。見えるがままに...続きを読む書き綴る底辺託児所。感じるがまま批評する鑑賞物。まさか後にここまで評価されるとは。目線の高さは同じ。気が付けば読者も地べたに立っている。「自分の過去に嫉妬する。それが玉を書くための条件」…あとがきが終わる。
他の作品でもお馴染みの登場人物もいるし,描かれるブライトンの街の様子も,年代こそ違うものの,もはや顔馴染みのような感覚で読んだ. 比較的リアルタイムで読んだあとの初期の作品というのは,コレはコレでタイムスリップした様な,体験したことのない思い出を辿る様な不思議かつ楽しい体験だった. 音楽や映画のレヴ...続きを読むューも含めて,パンクに軸足しっかりでイメージしやすくて,早速Apple Musicでライブラリに加えてしまった. 現在よりだいぶ尖った表現はあるものの,やっぱり何度も何度も何度でも感心させられるのは「フラットで透明な視点」で受け止めると言う姿勢.個人の価値観や評価はさておき,まずは受け止める,そして,その先を見る…何度もハッとさせられ,何度も感動し,反省し…そんなことがしたくて,この著者の本を手に取るのが,僕の読書の動機のような気がしてきた.
『ブレイディ節が炸裂した社会派エッセイ』 ブレイディみかこさんの2冊目の著書「アナキズム・イン・ザ・UK」(2013年刊行)をベースに、未公開コラムなどを加えて文庫化したもの。予想以上にボリュームが増えたとのことで、続書「オンガクハ、セイジデアル」との二冊構成になっています。 内容は著者が保育士...続きを読む時代に経験した英国の底辺を描いた、なかなかヘビーな社会派エッセイ。2000年~2013年頃の英国の政治・教育・文化のリアルを知ることができます。 格差社会や人種差別が強烈に描かれているため、英国に華やかな印象を抱いている方はショックを受けるかもしれません。ただ、キーワードはやはり「多様性」。私たちが普段目にすることのできない異国文化を知ることは非常に勉強になります。 ベストセラーになった「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」のイメージで手に取ると、物語性はないので少し読みにくく感じるかもしれませんが、ブレイディ節が炸裂したエッセイはやはり読み応えがあります。
今やすっかり有名になった著者の最初期の文章を文庫化したもの。「底辺からのイギリス便り」といった趣の文章が多い。 著者が言うところの“底辺託児所“における子供たちやその親との付き合いを通して、「子どもの前には無限の希望と可能性が広がっている。なんて一般論は大ウソである。……大半は有限の希望と閉ざさ...続きを読むれた可能性の中で成長し、親と同じ階級の大人になっていくのだ、という殺伐とした現実がここにいると嫌というほどわかる。」と著者は実感する。 ワーキングクラスの更に下層のアンダークラスーその中には何代にもわたって生活保護で暮らしているような家族もいるーの子どもたち。彼ら彼女らと繰り広げられるドタバタは、著者のパンクな文章の妙もあり、決して悲壮に感じるものではないのだが、その突きつける現実は極めて重い。階級が厳然としてあるイギリス社会。なおかつ実際には下層階級を切り捨てる効果を生んだ政策によるところが大きかったことを、著者はサラリと書く。 後半第二章は、映画、本、アルバム等のレヴューで、残念ながら全く知らない作品ばかりで、中には是非見てみたい映画などもあったが、そんな訳で、☆は3つにさせていただいた。
イングランドの一面を知る。 生活者目線のリアリティ。 例えば映画「シーズンチケット」がよりリアルに感じられるかも。
前半のエッセイがとにかく良かった。 英国ブライトンの空気感まで伝わってきそうなディテール。人々がどんな風に生活しているのか頭に描いて楽しんだ。 特に「底辺託児所」と著者が呼んでいる無料託児所で働く日々は、自由すぎて暴力的な個性を持った幼児たちにどんどん愛着が湧いていった。良くも悪くも日本でこんな光景...続きを読むは見ないか、例が少ないのではないかな。 著者は子ども嫌いだったとのことだが、一人の人間対人間として接しているように見える。まだ危なっかしい幼児ばかりではあるが、あくまで一人の人間として尊重する姿勢が正しいと思う。著者に預けられた子どもたちが、どんな風に成長していったのか。その後もきっと強く生きているだろうと信じたい。 英国社会の階級において、排除されている意識のある者たちが旗を掲げて他者を排除しようとする話も興味深かった。 エネルギーを随所に感じるエッセイだった。
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