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今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも必要とされるSDGsの要・普遍的人権の理念や制度の誕生と発展をたどり,内政干渉を嫌う国家が自らの権力を制約する人権システムの発展を許した国際政治のパラドックスを解く.冷戦体制崩壊後,今日までの国際人権の実効性を吟味し,日本の人権外交・教育の質を世界標準から問う.
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Posted by ブクログ
人権という規範がどのように広まり、国家の主権を乗り越えるまでにいたったかを丁寧に紐解く良書。ポピュリズムが蔓延る現代も、人権という規範が弱まることはないので、悲観的にはならずに、それぞれが人権力を磨き続けることの重要性を説く。
人権について基本的なところから考えてみたいと思っていたところに良いテキストが出版された。 とても勉強になった。 1人権理念や制度はいつ生まれたものなのか? 2なぜ国家は自らの権力を制約する人権システムの発展を許したのか? 3国際人権システムは世界中での人権の実践の向上にどの程度貢献したのか...続きを読む? 4日本は国際人権とどのように関わり合ってきたのか? という4つの問いを考える形で人権と国家の関係について論じている。 「理念の力と国際政治の現実」がサブタイトルだが、やはり理念と現実のせめぎ合いなのだな。 知らなかった事実も多い。まだまだ勉強しなくては。
タイトルには構えてしまいがちだが、非常にわかりやすく、歴史的な経緯、事実を踏まえて、現代社会においてどのような問題があるのか?その問題がどのように取り組まれているのかがわかりやすく解説してある。 改めて、「人権」という少し距離の感じる言葉、概念を自分事として考えることが出来るようになった。
このタイミングでこの書籍が刊行されるか。 21日に発売された岩波新書の新刊。ロシア、中国が…というたらればの記載が随所に見受けられるが、それがこのタイミングで現実になるとは。 まだ途中ではあるが、国際社会の中で、大国が主導を握るために半ば政治利用し、その中で育まれてきた人権という概念を知ることが...続きを読むできるし、とてもよくまとまっているので、今読むべき一冊だと思います。 今日テレビの解説の中でソ連解体後、共に民主化を目指したロシアとウクライナ。その行き着いた先が専制政治と、ある種のポピュリズムとなっている可能性を踏まえ今後の民主主義が試されているという指摘には、歴史の皮肉さを踏まえ共に深く考えさせられるものがあった。
最近の興味の一つ人権について、新書でざっと把握しようと思って読んでみた。 全体の構成としては、 ・人権という思想が「普遍的な価値」として誕生し、国際政治の重要テーマとなるまでの歴史プロセス ・それが国際的なシステムとして設立する過程と内政不干渉の原理とのジレンマ ・人権が世界的システムとしてどこま...続きを読むで有効に機能したか ・それらを踏まえた日本における人権思想と運動の流れ ということになっている。 これらが新書1冊に入っているので、重要なことも記述はコンパクト。だが、濃縮度が高く、集中を要する本だと思う。 しばしば、人権というのはキレイ事で、現実の政治においては機能しない、偽善的なもの、自国内の人権問題は置いて他国を批判するために戦略的に使われるダブルスタンダードなもの、という批判があるし、私もよくそう思う。 にもかかわらず、これは大切な概念だという思いが同時にある。 本書は、人権は理念で現実との差はあるが、長い目で見ていくと、その理念は少しづつ現実を変えていく力を持っているというスタンスに立っていて、元気が出た。 最終章での日本での人権についての記述は発見が多かった。私たちは、人権は戦後にアメリカから与えられて、自ら勝ち取ったものではないと考えがちだと思う。だが、このディスコースって、本当だろうか?という感覚は常にあった。 改めて、こういうテーマで日本における人権史を整理してみると、明治以降、少しづつではあるが、さまざまな活動を通じて、戦前においても人権が拡大していったし、国際的にも意味のある貢献をしているところもある。まずは、こうした日本における流れを学ぶ必要性を感じた。 また、人権に関連する運動は、社会的弱者、被害者というスタンスで行うと一般的な共感を得ることができないが、「普遍的な理念」として訴えることで、共感が進むというのも示唆に富む指摘だと思った。(一方では、その「普遍性」が軋轢を生むこともあるのだが) そして、国内における議論だけでなく、他国から見られるということが、人権への取り組みを促進するという視点も大事なことに思える。 例えば、第2次世界大戦時に、反全体主義の国は、人権や民主主義という高次の目的を掲げて、国家の総資源の動員を行なったのだが、戦後になると、それが自分に返ってきて、それぞれの国での人権拡大への要望を受け入れざる得なくなる。 また、冷戦時においては、アメリカはソ連の全体主義を批判するのだが、その批判は、自国内での黒人差別への批判として戻ってくる。当時は、民主主義と社会主義の戦いを理念の上でもしたわけなので、国の安全保障の問題として、黒人差別の改善に取り組まざるを得なくなる。アメリカにおける公民権運動の進展はこうした文脈も考える必要があると思う。 全ての人には生まれながらにして誰でも持つ権利があるという思想は、自然なものではなく、普遍的なものでもなく、18世紀くらいに誕生した言語による社会構築である。つまり「自然権」みたいなものはある種のフィクションである。 人権は社会構築であるという認識は、人権に関連して、ペシミスティックになったり、シニカルになったりする理由にもなる。 そう考えるのは簡単だけど、それがない世界に住むことは想像したくないこと。これまで、数世紀かけて人類が学び、育ててきた理念は脆いかもしれないけど、それゆえに大切にして、少しづつでもその成長を願っていたいと思った。
現代の人権理念の特徴として ①普遍性 ②内政干渉の肯定 の2つがある。 人権はそもそも国家主権を制限する対立した概念であるが、第二次世界大戦や冷戦下においてこの人権が、対立陣営を批判するためのイデオロギーとして利用されることで結果的に力を持つようになってきた、というのは逆説的で面白いと思った。 人権...続きを読むは進歩・拡大を続けているものの、ジェノサイドのような短期間で大規模に広がる人権侵害に対しては無力であることが多かった。今後の国際社会において、一市民としてどのような声をあげていけるかを考えながら生活したいと思った。
目次 はじめに 第1章 普遍的人権のルーツ(18世紀から20世紀半ばまで)――普遍性原理の発展史 Q.人権理念や制度はいつ生まれたものなのか? 1 他者への共感と人権運動の広がり 2 二つの世界大戦と普遍的人権の理念 第2章 国家の計算違い(1940年代から1980年代まで)――内政干渉肯定...続きを読むの原理の確立 Q.なぜ国家は自らの権力を制約する人権システムの発展を許したのか? 1 国際政治のパラドックス 2 冷戦下の新しい人権運動 第3章 国際人権の実効性(1990年代以降)――理念と現実の距離 Q.国際人権システムは世界中での人権の実践の向上にどの程度貢献したのか? 1 冷戦崩壊後の期待と現実 2 21世紀の国際人権 3 人権実践の漸進的な向上 第4章 国際人権と日本の歩み――人権運動と人権外交 Q.日本は国際人権とどのように関わり合ってきたのか? 1 日本国内の人権運動の歩み 2 同化から覚醒へ 3 日本の人権外交と試される「人権力」 おわりに あとがき 参考文献
やっと読みきった。淡々とした歴史記述って感じであんまり読みなれない文体でけっこう苦労した。国際関係となるとやっぱりジェノサイド中心だけど、FGMの話も何度かとりあげられてる。90年代あたりの旧ユーゴやルワンダあたりの話は勉強になった。同時代生きてたのによくわからなかったからねえ。
普遍的人権という国家にとって厄介とも言える存在がどうしてここまで発展したのか?また、どのように発展したのか、理解をするための本として良い。国家同士の批判の道具として、また国民への戦争や自国の行為の正当性を高めるために使った結果、想定外の価値を高めてしまった人権。 しかし、それは今後なくてはならない発...続きを読む展であったのも事実。また、限定的な対象者の為の自然権が広まっていた頃に比べて、普遍的人権が広まった今、その実効性はどの程度あるのか、という疑問に対して大きな人権侵害における影響力は低く、小さな人権侵害には効果が高いという結果であった。また、形として高い効果がなくとも、その反対運動のきっかけとなったり、周りにその事実を知らしめることが出来たり等、普遍的人権という存在の大きさを知った。一方で、大国の力は大きく、ある国が批判をしたところで、経済制裁をした所で、武力行使をした所で、そう簡単に変わらない伝統や文化、考え方があることを心に留めて置かなければならない。必要なのは国際的協力の上での、その国に寄り添う形や、妥協をする形での交渉である。 普遍的人権が発展した大きな理由は、それぞれの国家が利益を求めようとした姿勢である。それらが生み出した誤算が普遍的人権である。皮肉にも、それに縛られるようになった国際社会は、今後よりこの人権に縛られるようになるだろう。
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筒井清輝
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