スマートな悪 技術と暴力について

スマートな悪 技術と暴力について

1,463円 (税込)

7pt

4.0

いま、あなたの周りには、いったいいくつのスマートデバイスが存在するだろうか。もしかしたら、あなたのポケットにはスマートフォンが入っているかも知れない。あるいはあなたの腕にはスマートウォッチが巻かれているかも知れない。スマートスピーカーで音楽を聴き、スマートペンでメモを取っているかもしれない。スマートグラスをかけているあなたの家を、スマートロックが守っているかも知れない。そんなあなたはスマートシティに住んでいるかも知れない。
私たちの日常には多くのスマートなものが浸食している。私たちの生活はだんだんと、しかし確実に、全体としてスマート化し始めている。しかし、それはそうであるべきなのだろうか。そのように考えているとき、問われているのは倫理である。本書は、こうしたスマートさの倫理的な含意を考察するものである。
(中略)
もちろん、社会がスマート化することによって私たちの生活が便利になるのは事実だろう。それによって、これまで放置されてきた社会課題が解決され、人々の豊かな暮らしが実現されるのなら、それは歓迎されるべきことだ。まずこの点を強調しておこう。しかし、このようにスマートさに内在的な倫理的価値を認めることは、いささか性急であるようにも思える。なぜならそのとき、スマートさがもたらしうるネガティブな側面が覆い隠されてしまうからである。
……スマートさがそれ自体で望ましいものであるとは限らないのではないか。むしろ、スマートさによってもたらされる不都合な事態、回避されるべき事態、一言で表現するなら、「悪」もまた存在しうるのではないか。そうした悪を覆い隠し、社会全体をスマート化することは、実際にはとても危険なことなのではないか。超スマート社会は本当に人間にとって望ましい世界なのか。その世界は、本当に、人間に対して牙を剥かないのだろうか。
そうした、スマートさが抱えうるネガティブな側面について、つまり「スマートな悪」について分析することが、本書のテーマだ。
(中略)
……本書は一つの「技術の哲学」として議論されることになる。技術の哲学は二〇世紀の半ばから論じられるようになった現代思想の一つの潮流である。本書は、マルティン・ハイデガー、ハンナ・アーレント、ギュンター・アンダース、イヴァン・イリイチなどの思想を手がかりにしながらも、これまで主題的に論じられてこなかった「スマートさ」という概念にこれらを応用することで、日本における技術の哲学の議論に新しい論点を導入したいと考えている。(「はじめに」より)

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スマートな悪 技術と暴力について のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    良心を今自分が生きるシステム(社会)へ自動最適化してしまうこと(それも「無意識」に)。そして、その問題がとても可視化しづらいこと。そのことを忘れないで、自分という人間が背負う責任から逃れないで生きるために、どうすればいいのか。

    現時点での私の答えは、こうだ。

    今の地点(システム)に自分が存在して

    0
    2024年04月19日

    Posted by ブクログ

    スマートであることに関して、メリットばかりが語られているが、最適化の中で削り落とされるものは多い。

    一般的には、ノイズとして例えられているが、実世界は、容量を削減するためのノイズ除去のように、機械的であってはならない部分が多い。

    全ての仕組みを網羅的に知る必要はない。
    しかしながら、今この手で操

    0
    2022年12月28日

    Posted by ブクログ

    スマートなデバイス、サービスが生み出すスマートなシステム、スマートな社会。スマートさがもたらす悪の可能性を探求する本。

    そこで登場するのが、アイヒマンというわけで、アーレントの議論を軸にしながら展開していく哲学的な技術・社会論、という感じかな?

    一つひとつのスマートなサービスは、便利で、使い始め

    0
    2023年02月18日

    Posted by ブクログ

    耳触りのよい言葉こそ気をつけよう、疑おう。

    スマートはその典型。
    スマートな技術、社会は人を賢くするのか、考えさせなくするのか、そのスタンスで結論は変わってくる気がする。

    0
    2022年06月19日

    Posted by ブクログ

    「スマート」という言葉は非常に聞こえの良い言葉であるが、本書では主にネガティブな側面に注目している。テクノロジーの発達により生活は最適化され「スマートな社会」へ進歩すると考えられているが、一方で最適化が悪への加担を引き起こしうるということを認識しなければならない。最適化には暴力性を孕んでいることを本

    0
    2022年05月15日

    Posted by ブクログ

    スマートな悪

    voicy 荒木博行のbook cafeでマスターが熱弁していたので読みました。

    私もかつてはsociety5.0の中にいて、スマートな未来を作ろうとしていましたが、それが本当に善なのかはあまり疑わなかったですね。
    インフラコストを下げるのは疑うことのない善だった。

    スマートにな

    0
    2022年08月16日

    Posted by ブクログ

    効率のために整備され最適化されたスマートさにより思考停止し責任の主体としての振る舞いを放棄した人間たち。
    結果的に暴力に加担しうる私たちに必要なのは、所属するシステム以外の存在可能性を認め、それらと繋がること(異なる閉鎖性への開放性)だと言うこと。

    別のシステム/文脈にも転用可能な「ガジェットとし

    0
    2022年05月03日

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