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僕が住んでいるのは、無数の広間がある広大な館。そこには古代彫刻のような像がいくつもあり、激しい潮がたびたび押し寄せては引いていく。この世界にいる人間は僕ともうひとり、他は13人の骸骨たちだけだ……。過去の記憶を失い、この美しくも奇妙な館に住む「僕」。だが、ある日見知らぬ老人に出会ったことから、「僕」は自分が何者で、なぜこの世界にいるのかに疑問を抱きはじめる。数々の賞を受賞した『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』の著者が、異世界の根源に挑む傑作幻想譚。
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Posted by ブクログ
特殊な設定のファンタジー。設定に馴染むと面白いと感じられる。状況が分かってから結末までが少々冗長に感じるが、主人公の暮らす美しい広大な館に惹きつけられ、子供の頃の世界の捉え方を思い出すようなノスタルジアに満ちた作品。学者の世界の光と闇を少々大袈裟に詩的に描いた作品でもある。
あらすじが辻褄合わない、作者の容量オーバー、もろもろの事情でそんなつもりはなかったのに、SFやらファンタジーというジャンルにせざるを得ない物語がここ20年ばかり溢れかえっているが、この作品は久々に純粋のファンタジー作品と言えるのではないでしょうか。そういう意味では手に取れた喜びなどはあるのでしょうが...続きを読む、だから面白かったのかと言われますと、どうでしょう。自分の頭の容量が足りませんでした。
最後に現代世界に戻ってくるのが予想外だった。 キッタリーは主人公に会う日以外は現実世界にいたからいつもパリッとしたスーツやら着ていたということか。
ものすごい変わった物語 表紙は、今になってよく見た・・・参考になる? 全くの一人じゃないからいけたかな がんばり屋のいい子です
僕が住んでいるのは絶えず潮が注ぎ込む広大な館。無数の空間が連なって迷宮となっていて、僕は十三人の死者の骨と暮らしている。 という、まさに幻想文学らしい世界観で楽しめた!少しずつ世界の謎が明らかになっていく過程が飽きさせない。今回はサクッと読んだけど内容は分かりやすかった。もちろん謎解きのような気にな...続きを読むる記述もあったので、ゆっくり深堀りしたら更に面白そう。 生きた人間の居ない幻想的な世界では美しさとやさしさを強く感じる一方で孤独に苛まれる。我々が住む現実世界は孤独ではないけど、数多くの他人との人間関係の煩わしさがある。 現実世界に疲れやすい人も、心のなかに自分だけの静かで美しく優しい幻想世界を持つことで前向きに生きられるし、本当に信頼できる人間とその世界を共有することで幸福にもなれる。そんなメッセージを受け取った。 訳者あとがきを読むと、著者自身が引きこもって自分の世界に浸るのが好きな一方で、重い鬱病も経験したそう。自分の幻想世界を作り上げるだけでなく、ごく僅かながら信頼できる人と共有することができれば幸福になれる、というのは筆者自身の経験なのか、そうありたかったという願いなのか。
面白かった!...のは間違いない。けれど、全体的に訳文が子供っぽいように感じた。 物語は、マッドサイエンティストの気まぐれで、異世界の館に囚われてしまった、哀れなジャーナリストの話。すなわち、35歳のおっさんの独白なわけで、もうちょっと成熟した感じを出しても良かったのでは、と率直に思った。 特に、後...続きを読む半に登場するラファエルは印象的で(彼女もけっこうなおばさん)、リアルの世界に疲れてしまって、むしろ自分から、人間のいない静謐な世界に迷い込みたいと願っている。こんな枯れた感情は、全体を貫く訳文の雰囲気からは唐突で、この場面だけちょっと浮いている気がした。 日本のマーケットでは、一般向けのファンタジーじゃ売れないからって、YA向けに再設定されてしまったのだとしたら、とても哀しい。
古代彫刻が雑然と並ぶ巨大な大広間が無数に連なり、上層は雲、下層は定期的に押し寄せる潮に浸された〈館〉を彷徨い歩く「僕」。唯一の話し相手は、週に2度会う初老の男「もうひとり」だけ。二人で〈館〉に隠された神秘的知性の研究を続けてきた「僕」と「もうひとり」だったが、第三の人物が現れたとき、〈館〉は少しずつ...続きを読むその真実の姿を明らかにする。 タイトルは『ピラネージ』、邦訳版カバーはモンス・デジデリオ(塚本邦雄の文庫版『紺青のわかれ』と一緒)だが、読んでいるあいだ私の頭に浮かんできたのはファブリツィオ・クレリチの「ローマの眠り」だった。 第一章で語られる〈館〉の構造はバロックかつ豪奢で、垂直的なイメージは確かにデジデリオっぽい。その後、語り手は天体観察のために何時間もかけて移動するのだが、〈館〉内での冒険らしい冒険はこれっきりになってしまう。中盤以降の〈館〉は、大英博物館やルーヴルの彫刻エリアが波に洗われ、荒れ果てたイメージだ。それにぴったりなのはクレリチか、ユベール・ロベールだろう。 オカルティストが唱えた異世界という真相は面白いが、正直、第一章で見た幾何学的想像力の世界をもう少し続けてほしかった。山尾悠子の「遠近法」のような、精緻な世界観を期待してしまった。 結局マシューは教授に直接会いに行かないので、〈館〉という異世界の来歴などもよくわからない。作中資料を読む限りでは強い意思によって行ける世界とのことだけど、それがなぜ誰にとっても宮殿風の建物に古代彫刻が並ぶ場所として立ち現れてくるのか、なぜ「古代人は自由に行き来できた異世界」が近代風なのか、謎が尽きない。「もうひとり」が〈館〉から見える天体の動きが天動説と地動説どちらに従っているかを確かめようとしていたことからして、こちらの世界で否定されたり忘れ去られたものが行き着く場所なのだろうか。 個人的には期待値の高い作品だっただけに、日記を読み返すだけですべてが明らかになってしまうのは物足りなく感じてしまった。〈館〉の異世界か、あるいはオカルティストの狂信か、どちらかを詳細に、魔術的に描写してほしかった。そこが薄いので、「人生には純粋な想像力の世界が必要だ」という後半のテーマも薄まっている気がする。
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