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デビュー戦を初回KOで華々しく飾ってから、3敗1分けと敗けが込むプロボクサーのぼく。そもそも才能もないのになぜボクシングをやっているのかわからない。ついに長年のトレーナーに見捨てられるも、変わり者の新トレーナー、ウメキチとの練習の日々がぼくを変えていく。これ以上自分を見失いたくないから、3日後の試合、1R1分34秒で。青春小説の雄が放つ会心の一撃。芥川賞受賞作。(解説・町田康)
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Posted by ブクログ
町屋さん、芥川賞受賞のボクシング小説 プロボクシングの試合って、独特だ 何ヶ月も準備して、命を文字通り削って試合をして、それまでの準備の全てが、たった数分の試合で試される だからこそ、負けの記憶は全ての否定として残る だからこそ、勝負に上がることはとても怖い その全てを、曖昧化した主人公の一人称...続きを読むで描き切った筆力 気がついたらのめり飲まされるリズムよい筆致 ウメキチや友達との奇妙な関係の魅力 なにより、「ぼく」自身の弱さと強さ これはボクシングなんてやったこともない読者を問答無用でリングにあがらせ、己の生き方を問わせる(こういう比喩をすると友達に怒られる!)暴力的な作品 なんと曖昧で鮮やかなんだろう
自分の心の葛藤を、下手に綺麗にせず葛藤のまま書かれた文が多く、印象に残った。 爽やかなスポーツ小説といったものではないが、登場人物たち全員に対して、わかるよ、頑張ってくれ、報われてくれ、、と思わずにはいられなかった。 170ページ程度だが、描かれている期間も1年程度(?)と短く、密度の濃い話だと感...続きを読むじた。
本作はスポーツ小説ではなく、著者渾身の青春文学だ。 解説を入れて182頁と短めの小説だが良い意味でスラスラと読ませてくれなかった。「発見」が沢山あった。今後の糧にしよう。ボクシング知識皆無の私だが、ボクサーの方々の見えない苦悩が少し垣間見えたように思う。
強さとは優しさとは何か。オードリーの若林さんがボクサーをしたらこんな感じになるだろう。優しさと甘さに片足をツッコミ勝負に勝てない主人公。ウメキチとの出合いで変わっていく。
久々に、引き込まれる作品。一般人にとっては想像もできないボクサーの日常。その感情や、こだわりやこだわりのなさや、執着や無頓着やさまざまなものがリアリティを持って、生きている感じがしたんだと思う。文章もなんだかボクサーのダッキングを思わせる流れ方で、よかった。
小心者の駆け出しボクサーの心情の推移を描く。 ◇ 自分の才能への懐疑や負けることへの恐怖を小手先でごまかそうとしていた小心な「ぼく」だったが、ある日、先輩ボクサーのウメキチが「ぼく」のトレーナーに就任する。 半信半疑でウメキチの組んだメニューをこなしていったところ……。 ...続きを読む2019年芥川賞受賞作品。 * * * * * 小心者のボクサーだったはずの「ぼく」が、ウメキチという先輩ボクサーとの出会いによって変わっていく様子が面白い。 トレーナー・ウメキチのトレーニングメニュー。「ぼく」用に考えられたものではあるのだけれど、がむしゃらに取り組む気になれない「ぼく」は、ただ淡々とこなしていました。 すると、どうしたことか、試合が近付くにつれ、まるで薄皮が1枚ずつ剥がれるように小心な「ぼく」が薄れていき、半ば狂気を孕んだ不遜な姿が現れてくるのです。 映画『ロッキー』とはかけ離れたボクサーの姿でまったく格好よくないのですが、不思議に説得力がありました。 試合の行方が気になります。
自分を見失ってしまっていたボクサーが自らを掴み直す。 何もないように見えるほどカラになっていたようで、その実、閉ざし、なにものかを抱えこみ過ぎていた主人公。 おかしなトレーナーの出現で、自らを取り巻く色々なものを捉え直す。
70〜90分ほどで読み終われる。主人公の葛藤、内面がよく書き出されてて入り込みやすい。 淡々と進んでいくストーリーだが退屈しない。 最後も良かった。
ボクシング経験者としては共感できる部分も多くあった。勝敗どうこうよりもその道程を人間臭く描くのは純文学らしい。 ボクサーとは純粋な生き物だと思う。曖昧な世の中に対比させるとなんとも悲哀を感じる。 生きているのか生かされているのかわからなくなる。そんな感覚を思い出した。
生の拳にグローブをはめて、決闘をするように。 消えてしまいそうな主人公の自我にボクシングのストーリーをはめて、語られている。 ここにある言葉に、破壊的なアッパーカットなんてない。気づけば自らの弱さを投影してしまうほど、柔らかな水面のような言葉がある。
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1R1分34秒(新潮文庫)
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町屋良平
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