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“乱歩の前に乱歩なく、乱歩のあとに乱歩なし”と称される巨星が、こよなく愛した純粋本格に果敢なアプローチを試みた佳品「一枚の切符」を始め、「黒手組」「日記帳」「盗難」「夢遊病者の死」など執筆活動最初期の試行錯誤を通して生み出した色とりどりの短編十編を収録。
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Posted by ブクログ
☑一枚の切符 ☑恐ろしき錯誤 ☑双生児 ☑黒手組 ☑日記帳 ☑算盤が恋を語る話 ☑幽霊 ☑盗難 ☑指環 ☑夢遊病者の死 ☑自註自解 ☑解説 山前譲
『一枚の切符』 富田博士の妻の死。汽車による轢死と思われたが黒田刑事の捜査ににより他殺の可能性が浮かび上がる。逮捕される富田博士。左右田が拾った一枚の切符から博士の無実を証明するが・・・。 『恐ろしき錯誤』 対立する北川氏と野本氏。北川氏の妻・妙子の焼死事件。彼女が助かったにもかかわらず再び火の中...続きを読むに駆け込んでしまった秘密。彼女の耳元に囁いた謎の男の言葉の罠。妙子の持つペンダントにかくされた秘密。誰の写真? 『双生児』 遺産を相続した双子の兄を殺害した弟。兄になりすまし元恋人である兄嫁も騙し続ける。遺産を使い尽くし金に困った男。兄の日記で見つけた指紋を使った殺人を実行するが・・・。 『黒手組』 明智小五郎シリーズ 「黒手組」と名乗る犯行グループに誘拐された冨美子。身代金を支払ったにも関わらず解放されない登美子。受け渡しを担当した牧田の秘密。父親に禁じられた恋の謎。牧田の持つ手紙にかくされた暗号。 『日記帳』 死んだ弟の日記帳を読む兄。日記帳に書かれたある女性との恋の物語。日記帳に隠された暗号。 『算盤が恋を語る話』 自分の助手であるS子に恋するT。しかし女性に対して奥手で伝えるすべを持たない。算盤に秘めた暗号。S子からの返信。 『幽霊』 明智小五郎シリーズ 自分を敵として狙う辻堂の死。安心した平田の前にあらわれる辻堂の幽霊。怪しい写真。辻堂の戸籍にかくされた秘密。 『盗難』 ある宗教団体に勤めている時分に盗難された金。警官に化け金を盗んだ盗賊。犯人をつけた男。贋金をつかまされたと告白する盗賊。 『指輪』 電車の中で出会った男。拾った指輪の話。 『夢遊病者の死』 会社を辞め停職に付かない彦太郎。伯爵邸に住み込み働く父親との対立彦太郎の夢遊病。ある朝庭で殺害された父親。自分の犯行と思った彦太郎の自殺。 2010年12月15日再読
長編作品は柔らかな文体でスピード感を持って読ませるの対して、この本の初期の短編作品は硬質な文体で、より静的な、純度の高い印象を受ける。それでいて底をながれるものは同じ。興味深い。
二千銅貨と同時期に執筆された1枚の切符から始まる巨匠の短編集。 映画化もされた双生児が印象深い。あと明智が出てくると安心しますね。
初期短編集。 例によって乱歩の自註自解が自虐的で、いじらしいというか何というか。 表題作はソロバン目線で進行する話――というワケではなくて(笑) ソロバンを使って 簡単な暗号でメッセージを伝えようとする内気な男の物語。 「日記帳」も暗号ネタで、こちらも悠長で不器用な青年の報われぬ恋。 大正時代のイン...続きを読むテリ諸氏って、概ねこんな感じだったのかしらん。 それとも乱歩が特異なタイプだったのか……。 何にせよ、現代に比べれば 恋愛話などオープンに出来ない時世だったのだろうけど、 意外に今時の若者も、玉砕して恥を掻きたくないとか、 気持ちを受け入れてもらえなかったら、その後、気まずくなってしまうとか、 悶々としがちな人も少なくないらしいと聞いて、 好きなら好きってサッサと言っちゃえよ! と思う自分はデリカシーに欠けるのか、などと、ちょっと反省してみる次第。
勘違い、早とちり 『日記帳』はほっこりした 『算盤が恋を語る話』うーーん純粋!ちょっとわくわくしてしまったけどまさかの
初期の短編集。 様々なシチュエーションの奇妙な短編が多く収められている。 飄々とした口調で妙な物語を語られるのが心地よい。 アイデア一発勝負で、見事な勝利を手に入れている、よく出来た短編が多い。
初期の乱歩はこの頃の探偵小説作家には珍しいくらいミステリ的な面白さに満ちていると個人的に考えているのでこれはやたら面白い。短編であることの有利さをどこまでも利用してサプライズを仕掛けていると思う。本格としてもかなり出来がいい。「一枚の切符」「盗難」「夢遊病者の死」が好き。
算盤…この令和にこの話を理解する人間とその暗号解読を兼ね備えた、男女がいるのかな?類似作品として、手紙というのがあったなぁ。 こっちの方が、どちらかというと変態感は強い。
乱歩初期短編集。普通の推理物・暗号物ばかり。乱歩は文学として面白いけどトリックはいまいちだよなあ、という評判に漏れず、特におおという仕掛けもない。推理物なんて普段読まない私でもある程度オチが読めてしまうレベル。本人も自覚していたようで、自註自解ではそんなようなぼやきが多くそれはそれで面白かった(笑)...続きを読む しっかし明智はイケメンだな、台詞見ただけでおっこいつはインテリ系イケメンだとパッとわかる。恐ろしい。明智に限らず、登場人物の風貌描写は殆ど無くとも自然と頭の中に「こいつはこういう顔だ」と浮かび上がらせる、巧みな人物描写。ゆえに単調なトリックの連続でもついページをめくる手を止められなかったのかもしれない。
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